特集/全予測「働き方、生き方、稼ぎ方」

PART1.仕事篇 - 6

かつての花形部署の「負の遺産」を
整理するにはどうすべきか

 
 
人の意識を変える
「why」「what」「how」の積み重ね
 
 

クラシエホールディングス
社長執行役員CEO
小森哲郎
Tetsuo Komori
1958年、神奈川県生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科生産工学修了。大手コンサルティング会社を経てユニゾン・メディアパートナーズ取締役。2006年、旧カネボウ(現クラシエHD)社長CEO。


西川修一(本誌編集部)=構成

 
 

一番会いたくない人に
一番最初に会いに行く


 負の遺産にもいろいろタイプがあるが、多くの場合、ある時代には資産だったものが時代に合わずに負債になる。その“生みの親”である人物が特定されている場合は、負債の清算の作業には二つの側面がある。まず、“生みの親”とどう接するか。次に、周囲の人たちをどうやって新しい方向に導いていくかだ。

 負の遺産の“生みの親”は、新任者としては一番会いたくない人である。しかし、「一番会いたくない人に、一番最初に会いに行く」のが一大鉄則。一番厳しいことを言ってくれるからだ。そこでちゃんと仁義を切って「どういう前提でそういう方法を採ったのか」「今はどう状況を認識しておられるか」を聞き、自分が考えている方向性を示す。

 そこでのインプットを踏まえたうえで、周囲の人たちをどう変え、新しい方向にどう導くかを考える。人の意識が変わるのは結果が出たとき。結果が出やすいものから始めるといい。勝負は最初の三カ月で決まる。

 基本はwhy(なぜ)、what(方向性)、how(具体性)。人が変わるときには、この三つが必ず問われる。以後の作業は、すべてこの三つの積み重ねと言ってもいい。相手の状況によってどれを強調するかを選び取ればいい。

 まず、まったく危機感がない人たちの場合、いきなり「こうやろう」と方向性(what)を示しても空振りに終わるから、なぜやり方を変えねばならないのか(why)を説明する。花形だったがゆえに社内からの批判や追及に慣れていない彼らに、世の中とどれだけズレているか、どんなに収益が取れていないか、といった分析やファクト(事実)を示してから初めて新しい方向性・具体論を持ち込む。

 次に、危機感は高いが何を目指していくべきかがわからない人たちの場合、必要なのはまさに目標、ビジョンだ。しかも受け手に能力がそこそこあれば、正しい方向(what)さえ見せればいい。手取り足取りやろうとすると、「子供扱いするな」とかえって反発されてしまう。

 三番目に、whyもwhatも理解しつつもどうやっていいかわからない人たちの場合は、どういうことをやるかを具体論(how)で攻めていく。

 もっとも、方向(what)一つ取っても極めて具体的なものからビジョンのような抽象的なものまである。直球でいくか、オブラートにくるむか、臨機応変にズームイン、ズームアウトして改革のプログラムを設計することが大切だ。

 組織の内情を見極めるためには、ざっと社内・現場を見渡し、いろいろな層の人たちとのやり取りを通じて彼らの目線、考え方、能力を探る。100人の組織なら、5〜10名に話を聞けば何を考えているかだいたいわかるだろう。

 匿名のアンケートでもいい。クラシエでは2年間の工程表を含む改革のビジョンをつくった際、全社員にイントラネットでアンケートを取った。改革の方向性に共鳴するか否か、ビジョンはわかりやすかったか、等々集計してネットにすべてアップした。「小森はけしからん」といった批判もあえてアップし、私のブログでも触れたりした。同じ質問を一カ月後、三カ月、1年後に投げかけることで、社員の理解度の深まりとエネルギーの度合いを定点観測できた。

 これに加えて、自分の思いを理解し、正しい形で全体を一緒に引っ張っていく人が必要だ。そのために、通常は部門横断で改革のリーダーシップチームをつくる。このチームが自分にとっての「能力増幅器」として機能し始めると、改革は一気呵成に進む。

 
 

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