特集/全予測「働き方、生き方、稼ぎ方」

PART1.仕事篇 - 5

同じチームで成果を数倍にするにはどうすべきか

 
 
皆が一番大事な仕事に専念できるよう、
環境を整えること
 
 

フェニックス・シーガイア・リゾート社長兼CEO
丸山康幸
Yasuyuki Maruyama
1952年、東京都生まれ。一橋大学社会学部、経済学部卒。ノースウェスタン大学経営大学院にてMBA取得。三菱商事、日本GE、長野県商工部などを経て2005年2月より現職。


高阪のぞみ(本誌編集部)=構成

 
 

 これまで私はさまざまな事業に携わってきた。その経験を通じて私が実感しているのは、経営においてリーダーとスタッフの責任は、八対二くらいでリーダーのほうが重いということ。スタッフが自分の仕事に100%の力を発揮できないのは、そのような環境をつくれないリーダーに責任がある。


「意識改革をしよう」では人は動かない


 社長になった約2年半前から、私はここシーガイアの敷地内に住み、現場を歩いて自分の目で現状を確かめた。スタッフに話を聞いて回り、すぐに感じたことがある。それは、真面目で責任感が強いスタッフばかりだということだ。同時に、もっとお客様を中心にした仕事ができるはずだと思った。

 まずは環境を変えることから始めよう、そう思った私は、社長に就任したとき、全スタッフの前でこう言った。

「素人だから助けてください」。リゾート事業においては素人だが、次の三つのことは皆さんに約束する、とつけ加えた。(1)判断は速くする、(2)会社の現状は詳らかにして伝える、(3)試行錯誤は大歓迎、である。

「意識改革をしよう」という抽象的な言葉をかけても、人は動かない。何がよくて何が悪いのか、その判断がしやすいよう「一番大事なこと」を軸に、すべての仕事を単純化することを試みた。

 わが社の場合、一番大事なのはお客様に喜んでいただくこと。お客様は心も体もリラックスしたいと思って、はるばる宮崎まで足を運んでくださる。旅から帰ったとき、家族や友人に「シーガイア、よかったよ」とひとこと言ってくださるかどうか。顧客満足を高めてリピーターになっていただき、さらに口コミを広めていくことが、わが社の活路となると考えた。

 社内の意思決定のスピードを速め、会社の経営状況等は隠すことなく公開し、スタッフにもオンとオフの切り替えを心がけてもらう??スタッフがお客様に時間と労力のすべてを使えるように、という思いから進めた。

 もう一つ意識して行ったのは、私の知人を若いスタッフに紹介すること。これまでの仕事でうまくいった方法のなかには、ここシーガイアで通用するものもあるはずだ。そこで、過去にお世話になった各分野の専門家を現地に招き、スタッフと一緒に働いてもらった。私が前に出るのではなく、スタッフがディスカッションを通して専門家から直接吸収できるようにした。

 私の就任以来、スタッフの仕事量は増えたかもしれない。ホテルでありながら旅館方式でのサービスを心がけ、「一人に複数の役割」を求めた。

 1993年の開業以来、2007年3月期決算で初の営業黒字化を達成した。その前後で何が変わったのかといえば、スタッフ一人ひとりが「自分の職場を改善する」という気持ちになりつつあることだろう。

 一人のリーダーで組織が変わるという例はある。しかし、わが社の場合はリーダーの力だけでなく、潜在能力の高いスタッフが揃っていたことが大きく寄与した。現在1300人いるスタッフの大半が創業時からのメンバーだ。

 スタッフに対して、「気は心」だとよく話している。あと一歩お客様のほうに近づこう、と思って取り組めば、それは必ず相手に伝わる。経営も同じだ。

 チームが一番大事な仕事に専念できるよう、環境を整えること。それが経営者の最も大切な仕事ではないか、と思っている。

 
 
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