特集/全予測「働き方、生き方、稼ぎ方」

PART1.仕事篇 - 3

気力、体力の限界で職務を
まっとうできないと感じたらどうすべきか

 
 
知恵と経験を総動員して
最後まであきらめないでぶつかる
 
 

東北楽天ゴールデンイーグルス
山崎武司
Takeshi Yamasaki
1968年、愛知県出身。87年、愛工大名電高からドラフト2位で中日ドラゴンズに入団。96年、本塁打王(39本)。トレード先のオリックスでは2年で解雇され、2005年に楽天入り。


小桧山 想=構成

 
 

シーズンが始まる前から
やめることを考えていた

 仕事上で、上司との関係が大事だということは一般の会社と同じだと思います。僕の場合は野球人生の後半になって人間関係でつまずいて、野球をやめなきゃならないところまで追いつめられました。2004年のオフ、オリックスから戦力外通知を受けたときのことです。

 6年間在籍した中日を出るときも、信頼していた人に裏切られたという思いが残りましたが、オリックスでも監督と良好な関係を築くことができなかった。結果を出しているにもかかわらず、試合に使ってくれない。「納得できない」と、自分は言いたいことをはっきりと言う人間ですからね。その結果、出場機会は少なくなって、最後はねぎらいの言葉ひとつもなく、戦力外を通告されました。

 どんな社会でも世代交代は避けられませんが、最後は限界までプレーしてきれいに終わりたかった。でも、機会を与えられないまま終わろうとしていた。このときは、体中から気力が失われました。

 この状況をどう乗り越えたかというと、子どものひと言でした。当時、小学校3年生の長男が、日頃は野球のことなど口にもしない彼が、ぽつりと「野球を続けてくれ」って言ったんです。

 そして、楽天イーグルスの誕生。田尾監督の「ベテランも若手も関係ない。横一線からのスタートだ」という言葉を聞いて奮い立った。これで、悔いを残さずに野球をやめられるとね。不思議でしょ、始まる前からやめることを考えていた。

 いま振り返ると、このときの心の持ちようが僕の強みだと思うんですよ。チャンスを与えられたからには、力の限りを尽くしてやるしかない。その一方では、通用しなかったらきっぱりとやめる覚悟ができている。真ん中の半端な気持ちがなくなった。毎年、シーズンの後半になると「オレはクビかな、来年の契約してくれるかなあ」と悩む選手がいるんです。70人選手がいたら30人はそうでしょう。でもね、そんなこと考えていたらロクな仕事はできない。だいたい、進退問題は本人が心配する以前に会社が決めてますからね。「悩むだけ無駄だ。仕事(野球)に専念して悔いを残すな」と若手にアドバイスできるようになったのも、一連の経験のおかげです。

 楽天での1年目は「ホームラン25本、打率2割6分六厘」。2年目からは野村監督に代わって、3年目の去年は打点王とホームラン王を取れた。野村さんという上司は、役割分担をしっかり決めてくれる人。自分は指名打者の役割をいかにまっとうするか。それだけでした。

 あとは体力が衰えてきた分、いかに集中してバッターボックスに入れるか調整方法を工夫したり、タイミングをとりやすいフォームに改造したり、配球を読んで打つといったことに取り組んで、たとえば配球に関しては捕手出身の野村監督が若手選手にアドバイスするのに聞き耳立てて、応用しました。ここぞというときに球種を絞ってフルスイング、昨年打った43本のホームランのうち10〜15本は「読み」の成果かもしれません。

 結果が残せて何が嬉しいかといえば、野球を続けられる喜びとともに、長男にやればできるってことを身をもって示せたことです。彼はいま、中学受験で悩んでいますが、大切なのは、とことんやること。結果が出なくても達成感は残るし、頑張った奴はまたやるんですよ。彼の闘いはこれからです。

 僕が「中年の星」と言われるのも、要は土俵際で粘ったから。見苦しくてもいいから、知恵と経験を総動員して最後の最後まであきらめないでぶつかれば、納得のいく仕事ができると思います。

 
 
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