特集/全予測「働き方、生き方、稼ぎ方」

PART1.仕事篇 - 2

何気ない一言が大失言だった場合どうすべきか

 
 
間に人を立てるなど、
ワンクッション置いて謝るのも有効
 
 
リスク・ヘッジ代表取締役
田中辰巳
Tatsumi Tanaka
1953年、愛知県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。アイシン精機、リクルートなどを経て、97年に危機管理のコンサルタントとして独立。著書は『そんな謝罪では会社が危ない』『企業 こころの危機管理』(共著)など。
小川 剛=構成
 
 

 何気ない一言が失言につながるパターンは、不可抗力による失言、認識不足による失言、配慮不足による失言の三つに大別できる。

 不可抗力による失言は私も過去に一度経験がある。企業の総務部の課長時代、抗議に来られた同和団体の方たちに応対したとき、「今日はどうもご足労いただきまして」と言うつもりが、緊張のあまり、「今日も、どうわ……」と言ってしまったのだ。緊張して言い間違えたり、言葉を取り違えたりすることは誰にでもある。

 そうした不可抗力による失言は人間的な可愛さを前面に立ててフォローするしかない。私の場合、「申し訳ございません。本日は大変厳しいご指摘をいただく覚悟をして参りましたので、緊張して『は』と『も』の順番を間違えてしまいました」と正直に頭を下げた。相手はプッと笑って「そんなに緊張するな」。不可抗力とわかれば許してもらえるものだ。

 認識不足による失言の典型は、柳沢伯夫前厚生労働大臣の「女性は子どもを産む機械」発言だろう。批判を浴びて、それが女性に対する差別発言であることは当人も認識したようだ。ところが、「子どもは二人以上持ちたいという健全な……」という発言については、子どもを二人以上持ちたくても持てない人たちを傷つける発言であることが理解できなかったらしい。

 厚生労働行政のトップという立場の認識不足だし、差別発言そのものの認識が足りない。柳沢氏は発言の本意を言い訳していたが、言った本人の気持ちは関係ない。差別発言は言われた側の心にどう突き刺さったかが問われるのである。

 差別発言にセクハラ発言、パワハラ発言……認識不足による失言が取り返しのつかない事態を招くケースは職場でも少なくない。うつ病の人を励ましてはいけないことや、うつ病の人と元気のない人を区別するポイントなどは、上司として認識しておくべき時代だろう。


「そんなつもりは……」は
言い訳にしか聞こえない


 認識不足による失言の場合、傷ついた相手の心に届く謝罪の言葉を誠心誠意に述べるのが一番の解決策。「そんなつもりはなかった」は言い訳にしか聞こえない。

 三つ目のパターンは配慮不足による失言である。「認識不足」は主に不勉強が原因だが、「配慮不足」というのは要は神経が行き届かないわけで、多くは個人の資質や経験不足に由来する。ビジネスシーンでも一番頻出しやすい失言パターンだ。

 たとえば配慮が足りない一言で取引先を怒らせたような場合は、自分より上位の責任者、つまり上司に帯同してもらって“解毒”するのが一番よい。上司から「私どもの配慮が行き届かず、大変申し訳ありませんでした。コイツは本当に気が利かなくて……」とガス抜きしてもらう。そのうえで当人が「これから勉強してゆきます」と頭を下げる。

 職場や家庭でもちょっとした配慮不足が失言につながることは多い。直属の上司の前で派閥の違う上司を持ち上げてしまったり、言葉足らずな物言いで夫や妻を怒らせてしまったり。そういうときのリカバリーでも、間に人を立ててワンクッション置く手は有効だ。

 危機管理と同じで、失言もパターンによって原則的な対処法がある。まずは失言の内容を整理し、適した処方をすることが大切だ。たとえば認識不足や配慮不足による失言は、人間的な可愛さで切り抜けられるものではない。

 タイミングも重要。傷ついた人の気持ちというのは、「癒される」「腑に落ちる」「許す」「忘れる」という順で移ろってゆく。その配慮が足りないと、失言の上塗りになる場合があるので注意したい。

 
 
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