特集/全予測「働き方、生き方、稼ぎ方」

PART1.仕事篇 - 1

人望のある人と言われるにはどうふるまうべきか

 
 
批判に晒されたが、
15回の選挙では一度も落選しなかった
 
 

元衆議院議員
野中広務
Hiromu Nonaka
1925年、京都府生まれ。園部町長、京都府議会議員、京都府副知事などを経て、83年衆議院議員に初当選。98年小渕内閣で官房長官を務める。2003年10月政界を引退。
近著は『憎まれ役』(野村克也氏との共著)。


西川修一(本誌編集部)=構成

 
 

平岩さんに言われた
「あなたは不思議な方だ」


 私は政治生活52年、衆議院議員生活20年の中で、政治資金集めのためのパーティー、朝食会を一度も開いたことがありません。やれば見返りを求められるからです。また、ほかの代議士のように都内に事務所や自宅も持っていません。右翼からも左翼からも攻撃され、中傷・批判に晒されたこともあります。15回経験した選挙で一度も落選しなかったのは、それでも私の名を書いてくれる人がいたからです。故・平岩外四さん(元経団連会長)に「あなたは不思議な方だ」と言われましたが、どんな職場でも、努力して真剣に取り組めば見ていてくれる人は必ずいます。人望というのはその結果でしょう。

 先日の小沢さん(一郎・民主党代表)の辞任・復帰騒動は、昔から彼をよく知る人にとっては「ああ、またか」と思っただけ。頼り甲斐があるように見えて、2〜3年にいっぺんああいう病気が出ます。民主党が彼を引きとめたのは、人望ゆえではなく分裂・政権入りの阻止のためだろうし、小沢さんも真相は語りませんが、(野党過半数を解消する)参院議員17人を連れてこれなかったのでしょう。

 昔の日本は汗を流せばその分、報われる社会でしたが、いまは先行き不透明でストレスも多い時代です。しかしそんな中でも、「運」「鈍{どん}」「根{こん}」、つまり運を得ることと、それを焦らず生かすための不断の努力、そして根性が、人間の進み方として一番必要じゃないかと思っています。

 これまでの人生を振り返って思うのは、運命が私を政治の世界に引きずり込んだということです。「地域を変えたい」と思ってできる努力はしたけれども、チャンスや偶然がなければ町会議員から町長になることもなかったし、京都府議会議員、副知事になることもなかったでしょう。

 町や府などの一般事務の人たちを巻き込むことが必要な仕事では、おのおのの職場の官僚にごまかされないよう、そして彼らが緊張感を持ってこちらを見るように仕向けなければなりません。18歳から27歳まで、大阪鉄道管理局に勤務していた頃に、私はそうした眼を養うことができたのだと思います。

 戦後間もない当時、職員は女性がほとんどで、21歳だった私も女性の部下を30人ほど預かっていました。駅の改札口で回収した、大量の乗車券が入った重い箱を運ぶことも、彼女たちの仕事の一つでした。で、彼女たちに「オレはこの仕事を責任持ってやらなあかん。そこですまんけど、全員の生理の予定日を知らせてくれ」。彼女たちは怒りましたよ、「失礼な!」と。「でも必要なんだ」と言って、全員の予定日の表を私の机のガラス板の下に敷いて、わからんように布をかぶせた。一カ月半もしたら、彼女らの体調が顔色だけでわかるようになりました。「こんなところに気を使ってくれたのか」と理解してくれるまでに、それでも半年かかりました。「やらしい男」と言われながら(苦笑)。いまでもOB会で「あんたは変わってた」と言われます。ほかにもいろいろときめ細かく彼女たちの面倒を見ました。

 自分以外の人たちへの愛情も、成功を得るのに必要だと、この頃つくづく考えるようになりました。私は40年間近く、無報酬で障害者施設の理事長を務めています。ある意味で余技ですが、いまとなっては休息の場所であり、愛情と情熱を注いだ私の人生の最後の拠り所になっています。ここの方々がおのおのの地域に後援会をつくってくださったり、逆に私の政治上の後援会がここの施設を支援したりと、私は幸せだなと思います。

 
 
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