ハーバード式
仕事の道具箱 [136]

「優等生」を注意するときは細心の注意を払わなくてはならない

デキる部下を「逆ギレ」させずに叱る秘訣

 
 
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優秀な人間ほど、批判を受け入れられない
傾向がある。失敗経験が少ないため、
失敗した自分を受け入れることが苦手なのだ。
自己防衛に走りがちな彼らの心を
開くにはどうしたらよいのか。
 
 
アン・フィールド = 文ディプロマット = 翻訳
 
 

 防衛産業メーカーの新任CEOが自社の指揮管理の文化をつくり替えたいと思い、まず社員に10人の事業部長のパフォーマンスに関するアンケート調査に記入させ、それからそれぞれの部長と調査結果について話し合った。

 話し合いはスムーズに進んでいたが、それは猛スピードで出世してきた38歳の若き事業部長の番がくるまでのことだった。「コミュニケーション・スキル」と「部下を敬意を持って扱う」という項目で低い点数がついていると告げたところ、事業部長は激しく抵抗した。彼は自分をスーパースターだと思っていた。彼は他の事業部が低迷していたときでさえ、一貫して目標を上回る数字をあげていたのである。

「成功を重ねてきたがゆえに、この幹部は自分が言われたことを信じられなかったのだ」と、この会社のコンサルタントを務めたバブソン大学経営学教授、ジョセフ・ワイントローブは語る。

 後日、この幹部の行動が改善されるどころか、彼が部下を脅したり、侮辱したりしているという報告がCEOのところに上がってきた。CEOは、彼に問題を早急に理解させることが必要だと悟った。スターパフォーマーを失いたくはなかったが、そのスターの虐待的なマネジメント・スタイルと貧弱なコミュニケーション・スキルが他の社員のパフォーマンスを損なうことも避けたかった。それに加えてCEOは、自分自身がリーダーとして成功するためには、すべての部下が建設的批判を受け入れ、それに対応できることが必須要件であることを理解していた。

 彼は、非を認めない事業部長とさらに数回にわたって話し合いを持ち、彼に対する自分の信頼を伝えることに時間を費やすとともに、本人にもっと発言する機会を与えた。しかし、その部長がようやく自分のやり方を変える姿勢を示したのは、そうしなければ解雇に至る可能性もあるという非情な厳しい事実をCEOが突きつけたときだった。時間とともに、この幹部は徐々に部下を敬意を持って扱うようになり、彼らの提案に耳を傾けるようになった。

 組織の最上層にいる人々が建設的批判を受け入れることを苦手とする理由は、彼らがキャリアの中で批判を受けた経験がほとんどないからだ。モニター・グループ名誉取締役でハーバード経営大学院ジェームズ・ブライアン・コナント記念講座の名誉教授、クリス・アージリスが、1991年の「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌の記事「Teaching Smart People How to Learn(頭のいい人に学び方を教える)」で述べているように、「彼らはほとんど失敗したことがないため、失敗から学ぶ方法を学んでいないのだ」。

 トップ・パフォーマーを突き動かしている大きな野心と自己に課した高い目標は、失敗することへの大きな不安や、その高い目標を満たせないことを恥と感じる傾向とセットになっていると、アージリスは説明する。彼らは失敗の経験があまりないため、失敗から生まれる恐怖や恥の感情に対する耐性も、そうした感情に対処するスキルもない。

 そのため、批判を受けたときは、組織で最もパフォーマンスの高い社員が最も自己防衛的になる可能性が高い。「彼らは批判をシャットアウトして、自分自身以外のあらゆる人に責任を転嫁する。要するに、彼らの学習能力は、それが最も必要なときに停止してしまうのだ」と、アージリスは述べている。

 優秀なマネジャーが建設的批判に抵抗するもう一つの理由は、彼らが「ベテランである」ことにある。

「その仕事を長くやっていればいるほど、また年齢が高ければ高いほど、行動パターンが確立されていて、変化を受け入れたり、自身が変化したりすることが難しくなる」と、ハーバード経営大学院カーナーズ・ラブ記念講座の名誉教授、マイケル・ビアは言う。後輩や若い人間に批判される場合は抵抗はさらに激しくなることがある。

 成功者に率直なフィードバックを受け入れさせ、対応させることは、難しいが、不可能ではない。優秀なマネジャーの自己防衛を突き崩して耳を傾けさせる秘訣を紹介しよう。

伝える前に十分な準備を

 マネジメント能力開発・コンサルティング会社、ザ・フォーラム・コーポレーションのリーダーシップ・マネジメント能力開発部門のトップ、ルイーズ・アクソンは、クライアントのCEOがこの種の厄介な状況を乗り切る手助けをしたことがある。

 そのCEOは、ある上級マネジャーの問題について本人と話し合う必要があった。彼の傲慢さと派閥主義は、その会社の協働の文化に反していたからだ。しかしこのマネジャーはクライアントとの関係もきわめて良好で、新規の仕事を着実に獲得しており、会社にとっては是非残したい人物だった。

 CEOは自分の主張を明確かつ論理的に示せるよう、一週間半かけてその上級マネジャーのマイナス行動の具体例を探して記録し、それから集めた情報を主要テーマに従って分類した。その後、その上級マネジャーを呼んで、そのマネジャーが最も重視している「組織内で信用を保つこと」を軸に議論を組み立て、各カテゴリーのマイナス行動が彼自身の利益と会社の利益をどのように損なっているかを説明した。

メッセージを繰り返し補強する

 前記のケースでは、CEOはマネジャーに、彼のマイナス行動が彼自身の信用と力をどれほど損なっているかを示す証拠をじっくり検討する時間を一週間与え、それから二度目の話し合いを持った。その後も、そのマネジャーと毎週話し合っただけでなく、彼に即座にフィードバックを与える機会を見つけるために常に目を光らせていた。たとえば、このマネジャーが不愉快な行動を繰り返した会議のすぐ後に、彼を呼んで注意を促した。

相手に合わせた話し方をする

 迅速な決定を好み、詳しい説明をされるとイライラすることがある人には、すぐに要点に入って、自分の主張の信頼性を裏づけるために必要な最小限の情報を提示するに留めよう。しかし、細部を重視する人には、具体的な内容を逐一説明する準備をしておこう。

 相手のコミュニケーション・スタイルがどうあれ、判断を含まない中立的な言葉を使うことで、相手の自己防衛を最小限に抑えよう。

パワー・シグナルを意識する

 予期せぬ不愉快な批判を伝える場所として自分のオフィスを選ぶ場合には、自分の席には座らないほうがよい。そこに座ったら、両者の関係では自分のほうが権力を持っているというシグナルを送ることになるからだ。「権力が対等であるほど、率直な意見交換ができる可能性が高い」と、ビアは言う。小さいテーブルか一対のイスにともに座ることで、より中立的な場を築くことができる。

 もちろん、権力を強く打ち出すことこそが必要な状況もある。

企業文化をよく考える

 思慮深い批判を受け入れ、継続的な学習と改善を促すうえで重要な役割を果たす。

 その組織で「成功するためには何が必要か」を企業文化が明確に伝えていない場合には、「建設的なフィードバックがそれ以上先には進めないことがある」と、ワイントローブは言う。

 企業が継続的な改善を明確に評価し、それを実行していることに対して、トップ層を含む社員に報酬を与えるならば、幹部が自己防衛を捨てて、次のレベルに上がるためには何が必要かという忠告に耳を傾ける気になり、実際に傾けられる可能性が高くなるはずだ。

 
 
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