ハーバード式 仕事の道具箱 [133]
成果をあげるチームは内側だけに目を向けてはいない
外交を武器にする
「Xチーム」のつくり方
不可欠だが、それだけでは不十分だ。
新しい課題、複雑な問題に取り組むには、
柔軟性、創造性に加えて、外交力も必要である。
経営幹部向けの講座でチームについて教授するとき、われわれは「成功するチームをつくる要素は何だと思いますか」と、参加者に質問するところから始める。彼らの答えは見事なまでに一致している。明確な役割と目標、対立を解決する能力、信頼、チームスピリット、理にかなった決定、的を絞った課題、そして説明責任である。これらは正しいが、ほかにも大事なことがある。
チームには、内側を見ることに加えて、外に目を向けることも必要だ。高い成果をあげるチームは、組織の垣根を越えて必要な情報を入手し、自分たちがどのような文脈の中で仕事をしているのかを理解している。また、チームの活動を取り巻く駆け引きや権力闘争にうまく対処し、自分たちの案に対する支持を勝ち取り、チームの成功にとって重要ないくつもの他のグループと活動を調整する。つまり、外交活動を活発に行っているのである。このようなチームを、われわれは「Xチーム」と名づけている。
われわれの近著『X-Teams: How to Build Teams That Lead, Innovate and Succeed』の要点をまとめた本稿では、Xチームはどのような活動を行うか、Xチームを築くにはどうすればよいか、チームの成功の準備を整えるには何をすべきかを説明する。
【Xチームの外交活動】
Xチームは、次の外交活動を行う。
(1)調査活動(スカウト活動)
チームに期待されていることや情報の入手先、市場の動向などを把握するために、会社内外の状況を調査する。
(2)友好親善活動(大使活動)
組織の上層部に働きかけてトップマネジメントから信用と支援を勝ち取るとともに、味方と敵を常に把握しておく。
(3)調整活動
組織内の他のグループと交渉して、彼らの協力と期限遵守の約束を取り付け、必要な場合は仕事の遂行を手助けしてもらう。
ベルコという架空の法人向け通信機器販売会社の例を使って、これら3種類の活動がチームの任務達成にどのように寄与するかを見ていこう。
まずは調査。ベルコは市場全般に向けた販売から、特定の顧客ニーズを満たすために数点の製品をセットにして販売するやり方に切り替えることにした。この変更の一環として特定の市場セグメントを担当するいくつかのチームが結成された。その中の「ビッグバンク・チーム」は、銀行業界を担当することとなった。
チームのメンバーは、当初は上層部から明確な指示がくるのを待つことにしようと考えた。しかし、チームリーダーが、社内の他のグループに出向いて、彼らがビッグバンク・チームとどのように協力したいと思っているかを聞き出すほうが、時間もかからず成果も大きいのではないかと提案した。
メンバーは少人数のグループに分かれて調査活動を開始した。技術支援、設置、営業などの部門の同僚に、「顧客への売り込みに際して助けが必要なときは、誰に連絡をとればよいか」「この種の顧客について協力するためには、われわれはどのような準備をすればよいか」等々の質問をしたのである。メンバーは、競争相手や顧客や市場専門家に対しても調査を行った。
未開の地でのスカウト隊の任務は、前進しても安全かどうかを確認するために周囲の地勢を細かく調べ、情報を集めることだ。Xチームの調査活動も、それと同じ役割を担う。チームは、コンサルタントを雇うといった野心的でカネのかかる方法から、ネットで調べたり、大学時代の先生に話を聞くといった安あがりの方法まで、さまざまな方法を用いる。アンケート調査や記録データ、コンサルタントやアナリストのリポートを用いることもある。
次に、友好親善活動について。大口見込み顧客への初めての売り込みに向けて準備を進めていたとき、ビッグバンク・チームは営業担当副社長に、一緒に顧客のところに行ってほしいと頼んだ。チームは副社長に対してこれまで行ってきた仕事の成果を余すところなく披露し、新しい組織編成の中で効果的に仕事を遂行する能力を実証した。副社長は、チームの成功を上司に報告した。この顧客への販売が完了すると、副社長は続いて他の顧客に対する売り込みにも進んで同行した。
友好親善活動の内容は、プロジェクトやチームを経営上層部に売り込むことや、資源を獲得するために働きかけることなどだ。つまり、チームを会社の上層部に結びつけて、影響力のある人びとからの支持を獲得するのである。
最後に、調整活動について。銀行に通信システムを販売するためには、複雑な作業が必要だ。顧客のニーズを理解し、解決策を生み出し、入札し、落札後は提案を実行し、さらにはシステムの設置を監督しなければならない。これらすべての段階で成功するということは、社内外の多くの個人やグループの協力が不可欠だ。
そうした協力を得るためには、他のグループと交渉し、相手からの助力と引き換えにサービスを提供し、フィードバックをもらうことが必要である。
調整活動は、調査活動と同じく全社の人とつながることをその一部とするが、調査活動よりずっと的を絞った活動であり、その目標は情報を得ることではなく、調整し、連携をとり、協力する気を起こさせることだ。
【Xチームを築くには】
チームをつくる際には、目標を達成するために必要なスキルと能力とパーソナリティを備えた意欲ある個人を探すべきだとされる。この考えはもっともだが、Xチームを築くためには、候補者をもう一つの面から評価する必要がある。彼らの社会的ネットワークの広さである。チームにはノウハウとノウフー(人脈)の両方が必要なのだ。
たとえば、チームが任務を遂行するために、重要な専門知識を持った組織内の専門家にアクセスする必要がでてくるかもしれない。また、経営上層部と強力なつながりを持つ必要もあるだろう。さらに、大学など、社外の研究者にも接触することが求められるかもしれない。
適切なチーム・メンバーを選ぶためには、次の作業が必要だ。
●必要な専門知識、経験、人柄を持つ意欲ある候補者のリストをつくる
●この先交流を持つ必要がある最も重要な人びとのリストをつくる
●候補者がこれらの重要人物とどのようなつながりを持っているかを図示する
●必要な資質と、重要人物との強力なつながりという二つの基準で見て、最善の候補者を選ぶ
【成功の準備を整える】
チームの成功の準備を整えるには、次の作業が必要だ。
●メンバーに自己紹介で経歴、職務経験、仕事のやり方などを語らせる
●メンバーに、チームで仕事をした際の最善の経験と最悪の経験、およびこのチームで何を生み出したいか、また何をしたくないかを語らせる
●メンバーの知識の分野、ネットワーク、やりたいこと、過去に行った仕事などを発表させ、チーム内の専門知識・技能を図に表す
●仕事の割り振りを行い、調査活動、友好親善活動、調整活動のスケジュールを作成する
どんなチームでも最初が肝心である。スタート時には全員が緊張感を持っている。メンバーはこの最初の時期に、互いをよく知り、信頼を築き、どのように仕事を進めていくかという計画を立てる必要がある。また、活動の準備も行う必要がある。
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