人に教えたくない店 [375]
お店の“枯淡”にも共感できる女性は
「イケてるな」って思いますね
石田純一さん
「喜久好」の最大の魅力は、本物の江戸前をきちんと守り続けていること。今の日本って革新と進化と向上で発展してきたと思うんです。それは自分の生き方のテーマでもあるし、とても大事なことなんだけど、日本人が忘れていってしまうものを守り続けていくという、この潔さ。そこに僕は枯淡の美を感じるんです。派手さもないし、静かだけど芯にはとても強いエネルギーがある。
たとえばご主人の寿司を握る姿、寿司が出てくるタイミング、一つひとつのネタの仕事ぶり、ネタと寿司飯のバランス、さらにガリやお茶の味まで、もう隅々まで隙がない。それを淡々と普通にやってるんだよね。それでいて、客に緊張させない居心地のいい空気は、もう見事としかいいようがない。店構えも派手さがないから、人を連れてきたとき、相手は「なんだ普通じゃないか」と思いながら入る。ところが、食べて「うっ!」と言葉をなくすのを見るのも楽しい(笑)。
僕はいつも、目の前にあるものを当たり前だと思うんじゃなくて、疑って考えるんです。カメラワークひとつにしても「定石はこうだけど、もっと違う方法があるんじゃないか」と。だから、けれん味のある寿司も好きなんだけど、継承していくべきものと変わり続けなくてはいけないもの、その両軸の大切さに賛同できるようになってきたのは最近ですね。守り続けるというふうな生き方もありかなと。だからそういう意味でも、この店の姿勢に敬服するんですよ。
でも、正直に言って僕ごときが、そんなことを語るのはおこがましいんですよ。だって我々が語れる以上のものをお持ちだから。蘊蓄を語ることなしに、この店のそういう枯淡の魅力に共感してくれる女性ってイケてるな、って思います(笑)。
福岡の「かね萬」は、気さくなうどん屋の二階にあって看板に「生肉と餃子の店です」と書いてある。レバーからハラミまで、いろんな牛の内臓や馬のおちんちんまであって、全部刺し身で出てくるんだけど、どれも新鮮で質が高い。普通のチャーハンも旨い。若いカップルからサラリーマンまでいろんな客がいて、僕も「おい、ちゃんと仕事やってるのか」とか肴にされたりする(笑)。
この二つの店は、絶対にチェーン店になりえない究極のぜいたくな手作りの味だと思うんです。効率化とか均一化とかとは全く逆。一見、全然共通点がないように見えるけど、どちらも自分が信じるところをやり通しているところは同じ。女性と来るときは、あらかじめどういう店なのか多少は説明してあげたほうがいいかなと思うんだけど、蘊蓄なしでポンと来て食べて「すごい!」と言う女はやっぱりいい女だよね(笑)。
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●寿司
喜久好 きくよし
江戸前寿司の伝統を受け継ぐ職人技が光る
●きっちりと下ごしらえをした本物の江戸前寿司が味わえる店。2回精米した米を使った口当たりがなめらかな寿司飯が口の中でハラリととける。主人の清水喜久男氏は、明治時代の伝説の寿司職人、藤本繁蔵氏の愛弟子。
●東京都港区赤坂3-16-2 赤坂栄林会館B1
TEL.03-3585-2478
営業時間/11:40〜13:30、17:00〜21:30(土曜は〜21:00) 日曜、祝日休 カード不可
- 握り。前列右から時計回りに、口のなかでとろけるふっくらと豊潤な味わいの煮穴子。軽くあぶってあるので、表面の香ばしさと中身のジューシーさのコントラストが素晴らしい。ツメは修業先から譲り受けたものをベースにつぎ足して今に継承する深みのある味わい。車海老。肉厚の海老は、ふっくらとした口当たりと身の甘さが際立つ。コハダは程よい酸味でキリッとした味わい。たれに3日漬けた人気のまぐろのヅケ。たれの染み具合、身の締まりは申し分なし。タイラギ貝、コリッとした歯ごたえの赤貝は、鮮度のよさを物語る。
- 細やかなサシが美しく入った中トロ。やや硬めの寿司飯とバランスがいい。
- 艶のある美しいアオリイカは石田さんのお気に入り。噛むほどに甘い極上品。握りは13〜14貫で約1万円。
- ヒラメの刺し身1500円〜。刺し身の内容はその都度変わるが、常時2〜3種類が揃う。
●生肉料理
博多かね萬
黒毛和牛の新鮮な生肉料理が、スポーツ選手にも大人気
●黒毛和牛だけを使った生肉料理の店。肉のクオリティーは抜群。内臓も臭みがなく新鮮。福岡ソフトバンクホークスの選手をはじめ、各プロ野球球団の選手や力士の顧客も多い。芋から厳選したオリジナルの芋焼酎が人気。ボトル3000円。暖簾分けした「かね萬 六本木」も。
●福岡県福岡市中央区渡辺通5-1-18
TEL.092-714-6978
営業時間/18:00〜翌1:00 日曜、祝日休 カード不可

- 醤油と日本酒だけで調味した牛もつ鍋。もつを多種類入れる店が多いが、ここでは小腸と油分を吸収する心臓のみのシンプルな鍋。コラーゲンたっぷりのとろっとした小腸が美味。1650円。
- 熊本産の馬の陰茎をボイルして薄くスライスした、珍味馬チン1200円。ゼラチン質であっさりとした味わい。
- 刺身盛合せ、6000円〜。とろけるようなレバー、サクッとした歯ごたえのセンマイ、タン、馬刺し、濃厚なサガリ(牛の横隔膜)など、内容は変わることもある。ごま塩や、ポン酢、酢みそ、生姜醤油など、部位に応じたたれで食べる。
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