ハーバード式 仕事の道具箱 [132]

反対意見のなかには、取引先や消費者の意見を
「代弁」しているものもある

「抵抗勢力」の言い分は
案外正しい

 
 
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変革に反対する人には2種類ある。
「反対のために反対」している人と、
「もっともな理由に基づく反対」をしている人と。
後者の抵抗勢力は、変革を成功させるための
「思わぬ知恵袋」となる可能性がある。
 
 
ポール・ミッチェルマン = 文ディプロマット = 翻訳
 
 

 何にでも反対する人、常に悪い結果を予想する人、どんな場合にも自分の考えに固執し、頑として譲らない人。どの集団にも必ずそういう人たちがいるものだ。彼らさえいなかったら、変革計画はどんなにスムーズに進むことだろう。

 変革の案がどれほどしっかり練り上げられていようと、管理職のなかから変革に抵抗する人が出るのを避けることはできない。組織の営みには抵抗勢力がつきものなのだから、むしろ彼らを受け入れ、彼らを動かすための計画を練って、逆に彼らを愛するほうが賢明だ。

 抵抗勢力を「愛する」というのは突飛な考えに聞こえるかもしれないが、実は彼らは往々にしてすばらしい価値を持っているのであり、多くの企業がそれを引き出す手間をかけないだけなのだ。

抵抗勢力を抑えるための
三つのポイント

 ほとんどの変革プログラムには、社員の抵抗を克服するための優れた戦略が盛り込まれている。変革は急務であるというムードをつくること、自分も参加しているという感覚や権限を与えられているという感覚を持たせること、明確なメッセージを伝えることなど、である。

 しかし、これらは不可欠の要素ではあるが、個人間、あるいは小グループの中での抵抗に対しては、必ずしも効果的に対処することはできない。すべての社員から一斉に支持を得ることはできないし、そうしようとすべきでもない。

 それよりも、最も効果のあるところに的を絞って、そこに力を集中することが大切だ。まず、次の3点を考えてみよう。

(1)抵抗によって最も甚大な被害を受けるのはどの分野か。

 変革を進める過程で抵抗が大きな打撃を与えるおそれがあるのはどの分野か。まず、これらの分野に力を集中しよう。

(2)抵抗が波及力を持つおそれがあるのはどの分野か。

 どの会社にも、自分の職責をはるかに超えて広範囲に影響を及ぼせる個人がいる。そのような人物が変革を支持していない場合には、彼らは変革をつぶすことができる。

 これを防ぐ方法を一つ挙げると、変革構想の推進に彼らを最初から巻き込むことだ。

(3)抵抗が最も激しくなるおそれがあるのはどの分野か。最も失うものが大きいのは誰か。

 アンケート調査は、さまざまな部署の抵抗のエアポケットを探り出す一助になる。変革に対する姿勢を探る匿名の調査でさえ、重要な傾向を明らかにすることができる。

 最も抵抗が大きい分野を突き止めたら、その抵抗を理解し、それをうまく利用し、乗り越えるために積極的な措置を講じよう。

彼らの主張は
正しいかもしれない

 変革を推進するリーダーが犯すおそれのある最大の誤りの一つが、抵抗には何のメリットもないとはなから決めつけることだ。頭に血が上ったときは、人間はえてしてそう決めつけたくなるものだ。

「抵抗している者が、変革に反対するビジネス上のしっかりした理由を持っているかどうかを見きわめることが大切だ」と、戦略コンサルタントで、エゾップ・アンド・アソシエーツ(イリノイ州)の創業者、フィリス・エゾップは言う。「自社の仕事を隅々まで知っている抵抗者は、現行の変革案をどのように修正すれば成功の公算を高められるかについて貴重な知見を提供することができる」。

 抵抗者の意見は、厳しいクライアントや慎重な消費者からどのような反対が出てくる可能性があるかを知る一助になる。そのために、抵抗を奨励する企業もあると、パフォーマンス&サクセス・コーチング(フィラデルフィア)の創業者で社長のラリーナ・ケースは指摘する。

 抵抗者に公の場で自分の意見を述べさせれば、潜在的な落とし穴を発見できるだけでなく、彼らを強力な支持者に変えることもできると、エゾップは語る。

反対する相手の意見を
変えさせるには

 抵抗者を転向させるカギは、彼らの反対意見を解体し、彼らの見方を変えさせることにあると、企業研修会社、ストラテジー・ラーニング・センター(フロリダ州)の社長で、『The Art of the Advantage: 36 Strategies to Seize the Competitive Edge(優位への道:競争優位をつかむ36の戦略)』(2003年)という著書もあるカイハン・クリッペンドルフは言う。

 クリッペンドルフは自社を変革した経験から次の3つの教訓を引き出している。

(1)強固な信念は変革を妨げる

 クリッペンドルフの会社が変革に乗り出したとき、マネジャーの一人が強く抵抗したが、その理由を問いただしたところ、彼は、会社はうまくいっており、変革とは無関係に資源を増やしさえすればさらに業績を向上させられると確信していた。この強固な信念のために変革の利点が見えなくなっていたのである。

(2)信念はつくられる

 信念がどのように形成されるかを分析してみると、(a)信念は論理と恣意的に選んだ証拠との心もとない組み合わせに支えられていること、および(b)信念は言葉というかたちで生き続けることが明らかになる。抵抗者の信念を支えている論理や証拠や言葉を突き止めよう。

(3)信念は取り替え可能である

 抵抗者の信念の弱点を突き止めたら、変革プログラムのプラスの結果に焦点を当てた言葉や論理や証拠でそれを突き崩そう。抵抗者が障害とみなしているものを、より大きな機会への入り口として描き出すのが、典型的な手法である。

 そしてほかのすべての方法が失敗したときは、それにひるむことなく、抵抗者が概して気にかけている問い──私にとって何の得があるのか──に対応するべきだと、専門家たちは語っている。

 
 
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