人に教えたくない店 [374]

私を挫折感から救った「異文化」は
音楽や料理の世界を広げる力がある

渡辺真知子さん

 
 
渡辺真知子 = 談
Machiko Watanabe
わたなべ・まちこ●
神奈川県横須賀市出身。1977年に『迷い道』でデビュー。78年には『かもめが翔んだ日』を発表し、その年の日本レコード大賞最優秀新人賞ほか音楽祭12賞受賞。82年第11回東京音楽祭国内大会にて『好きと言って』が作曲賞受賞。2007年、『かもめが翔んだ日』が千葉ロッテマリーンズの応援歌としてロック調のアレンジで新録音。また今年2月には17年ぶりの全曲新録フルアルバム『鴎30〜海からのメッセージ〜』を発売。趣味はスキューバダイビング、ガーデニング。
永浜敬子 = 構成・文浜村多恵(べらぼう)、矢野宗利(盧家麺) = 撮影
 
 

「べらぼう」の料理の魅力は“直球”、これに尽きますね。たとえばイカの塩辛なんて、「えっ! 塩辛って、こういう味してたの?」っていう感動。素朴なメニューばかりなんですけど、まず素材がいい。どれもいつも食べてるものとひと味違う。塩辛なんて器の底に残るワタまでなめちゃっていました。

 以前、ディナーショーで大潟に来たときも、仕事が終わって道路標識に「能代」って文字が見えたら居ても立ってもいられなくなって、皆でバスで来たんです。そのときはきりたんぽ鍋としょっつる鍋、二つも鍋を食べたんだけど、満腹になってもおいしいの。皆「苦しい」とか言いながら、でも「ああ、うまい」って(笑)。大きな鍋なのに底の底まで一滴も残ってないんです。

 鍋には最後に能代うどんを入れるんですけど、これがいい。稲庭うどんはつるっとして上品だけど、能代うどんはざらっとしてて土着的なの。それが濃厚なダシにピッタリ。

 それから驚くのがドイツソーセージ。ご主人一家はヨーロッパに23年間住んでらしたんですね。これはドイツ在住のときに現地で食べたレシピで作ったものなんです。こういうのがあるのもここの底力。海外生活が長いせいか、味にスケール感があるのね。のびやかなの。ミュージシャンがみんなここのご主人のファンになっちゃうのは、そのやわらか頭。いろんな国を回っているから、もう定規なんてものじゃない、分度器だったりコンパスだったり、いろんな尺度でものを見てるんですよ。

 私は20歳そこそこでデビューをして『迷い道』で最初に頂点を見ちゃったでしょ? でも、その後にバンドブームが来てボーカルものが弾かれた状況になってしまった。そのとき、もう自分は要らないの? という挫折感に陥ったんです。

 そんなときアリゾナの親戚を訪ねて、いろんな国の人が英語を学ぶESLに行ったんです。そしたら、みんなそれぞれの物差しが違う。そのときに世界が広がったんです。言葉よりも感覚で。そこで『かもめが翔んだ日』を弾き語りで歌ったら「エクセレント」「ビューティフルボイス」って大絶賛。そのときに改めて自分の足元が見えた。それがわかったうえでラテンやジャズ、いろんなものを自分の音楽の中に取り入れ始めたんです。どうして私はこの店が好きなんだろう? って考えたとき、ここの料理は私の音楽と相通ずるものがとても多いんだと思ったんです。

「盧家麺」もストレート。どのメニューも複雑なことはしてないんだけど、ちゃんと的を射た料理。お店は気に入ったらずっと通うほうなんですが、ここはもう長いつきあいだから、親類みたいな感じで、定期的に「あ、もうそろそろ行かないと」って感じになっちゃうんです。

酒どこ べらぼう 居酒屋
酒どこ  べらぼう

秋田の郷土料理に
地元の旬の素材
地酒も充実


●秋田の郷土料理を中心に、じゅんさいやハタハタなど、地元の旬の素材を使った料理は、いずれも丁寧な味わい。これからの季節はきりたんぽ鍋や、しょっつる鍋など鍋ものが人気。「能代」をはじめとした秋田の地酒も充実。
●秋田県能代市柳町2-39
TEL.0185-54-4066
営業時間/17:00〜翌1:00 月曜休 カード不可


  1. だまこ餅鍋、1人前1000円。だまこ餅は炊いたご飯を軽く突いて丸めたもの。きりたんぽよりふんわりとした口当たりで、鶏ガラでとった濃厚な醤油味のだしがよくしみ込む。地鶏や地の野菜と煮込んだ人気料理。
  2. 塩:麹:蒸し米を3:5:8の割合で漬けたハタハタの三五八漬800円。ほんのりと甘みがあり、ハタハタの身の旨味を凝縮。生とはひと味違う旨さ。
  3. 秋田の名物、ミズ(ウワバミ草)の根元が玉状になっていることから“ミズタマ”と呼ばれる。歯ごたえがあり、噛むととろろのような粘りが出る。清々しい香りのミズタマの味噌和え400円。秋田が日本一の生産量と品質を誇るじゅんさいは、ゼリー状の寒天質がたっぷり。じゅんさいの酢の物400円。
  4. 新鮮なワタで漬けたイカの塩辛400円。1時間ほど軽く干したイカは、水っぽさが消え甘みが強い。

ラーメン
盧家麺 ルージャーメン



黒酢ラーメンなど
ヘルシーな料理で
体の疲れを癒す


●中国産の黒酢をたっぷり使ったラーメンが人気。スープのないホット麺に黒酢や調味料を和える“ノンスープ”麺シリーズや渡辺さんお気に入りの黒酢冷しアボガド麺など、ユニークなメニューも多い。酒や酒の肴も充実している。
●東京都渋谷区幡ヶ谷2-13-1 平沼ビル2F
TEL.03-3370-8005
営業時間/12:00〜14:00(火曜、木曜)、18:00〜翌1:00(金曜・土曜は18:00〜翌3:00) 無休 カード不可


盧家麺 ルージャーメン
  1. 豚肉を包んだワンタンを茹でて氷で冷やした冷ワンタン700円。黒酢入りのたれで食べる。つるっとしたのどごしで締めの一品として人気。
  2. クラゲ頭600円。肉厚のクラゲの頭の部分をしょうゆベースのたれと、ゴマ油、スイートチリソースで和えて食べる。コリッとした歯ごたえがこたえられない。
  3. ジャコ奴800円。水を切った絹ごし豆腐の上にスパイシーなカレー味に炒ったジャコがたっぷり。
  4. 黒酢盧家めん(ルージャーめん)850円。かき玉風味のとろみがついたスープ仕立て。黒酢の酸味が効いたさっぱりとした味わい。細くてコシのある麺がスープとしっかり絡んで旨い。トマト入り(+150円)、カレー味(+100円)のスペシャルも人気。トマト+納豆+カレー味(1200円)もある。
 
 
PRESIDENT 2007年10.15号
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