人に教えたくない店 [371]

メニューの創造性やもてなしの心は
舞台のアイデアづくりに通じます

今村ねずみさん

 
 
今村ねずみ = 談
Nezumi Imamura
いまむら・ねずみ●
1958年、北海道生まれ。高校卒業後に上京、劇団「夢の遊眠社」を経て、86年「ザ・コンボイ・ショウ」を立ち上げる。全作品の作・構成・演出を手掛け、自らも出演。芝居だけにとどまらず、歌、ダンス、タップ、楽器演奏などで観衆を魅了、「最もチケットが取りにくい公演」として知られる。俳優としても評価が高く、2006年に初演した草笛光子との二人芝居、『6週間のダンスレッスン』の再演が話題となっている(8月16日〜9月2日、博品館劇場。名古屋、大阪、福岡ほか、ツアー公演あり)。
須藤靖貴 = 構成・文馬場敬子(馬来西亜マレー)、川島英嗣(炭味家) = 撮影
 
 

 のっけから恐縮ですけど、食べることの優先順位が低いようなのです(笑)。美味しいものは大好きです。でも、稽古や公演に気がいっているときには、どうしても食事はカヤの外に置かれてしまう。海外に行っても、街並みを歩き回ることに忙しくて、食事は二の次になることが多いです。

 公演日の朝食はホテルのバイキングなどでしっかりと摂りますから、昼にお腹が空かずに抜くことも多いですね。夕食は公演や稽古のあと、深夜に及ぶことになるので、大食するとお腹にもたれます。それが嫌で、昼に出たお弁当を少し摘んで終わり、なんてこともありますね。アイシングなどで体をケアして、早く休むようにしています。

 芝居の関係者は、夜に仲間と大酒を飲んで気炎を吐く、というイメージがありそうですが、そういった意味では付き合いが悪い(笑)。仕事の緊張を酒や食事で紛らわすことはないです。大勢での食卓も、いろいろと気を使ってしまうので、最近はあまり囲みません。たとえばみなで焼き肉屋に繰り出すと、違うものを食べたがってる人もいるんじゃないかって思ってしまうんです。

 オフタイムのときは、食事の優先順位が上がります。こういう店で心ゆくまで美味しい料理を食べたくなりますね。

 どちらの店もメニューが独創的で、しかも多彩。その創造性が舞台のアイデアづくりに似ているように思えて頭が下がります。メニューの豊富さが喜ばれる面もあるのでしょう。グループで来ても誰もが楽しめる。そういう店は、ディスプレーにも遊び心やもてなしの心が溢れています。料理の美味しさにプラスして、面白い雰囲気を味わえるんですね。

 激しい公演をずっとやってきて、熱い応援もたくさんいただいて、幸せだと思っています。でも全力で走り続けていると、違うことをやりたいなと、ふっと思うこともあります。やはり世界は広い。自分のフィールド以外のところに出掛けていくと、想像力を超えたフレッシュな刺激を感じます。再演となる二人芝居『6週間のダンスレッスン』も、自分の世界が広げられる素晴らしいものです。草笛光子さんと共演できることが嬉しくて仕方ないのです。

 まったく別の世界にチャレンジするのなら、たとえばこういうお店をやるとか(笑)。料理はできません。接客です。それなら結構イケるんじゃないかと。海外に行くと、面白いウエーターのおじさんを見かけるでしょう。堂々とした仕草で愛敬もあって。コーヒー一杯の客を楽しくもてなしてくれるサービス精神。お客さんの気持ちを和ませ、楽しませ、満足してもらう。また来店してくれたら最高です。エンターテインメントは、なんでも一緒なんですね。

馬来西亜マレー マレーシア料理
馬来西亜(マレーシア)マレー
奥深い味わいの
滋養強壮薬膳が
疲れた体を癒す

●静かな住宅街にある瀟洒な店。オーナーの稲葉正夫さんは金属造形作家。マレーシアでバクテーの奥深さに魅せられ研究を重ね、8年前に自宅で食事を出すようになった。奥様、捷子さんも工芸作家。店の内装は稲葉さん手づくりだ。
●東京都世田谷区祖師谷4-21-1
TEL.03-3484-0858
営業時間/11:30〜21:00(水木金は15:00〜17:30休憩) 月火曜休 カード不可 サービス料なし。ディナーはなるべく予約を。


  1. 看板の「バクテー・バビ」(790円)。中国系マレー人がつくり出した滋養強壮薬膳。化学調味料を使わず、14種のスパイスでじっくり煮込んだ豚ロース肉の柔らかさ! 「バビ」は豚肉の意で「ウダン」(エビ)のバクテーもある。和風にアレンジされたスープは滋味深く、体が温まってくる。ご飯(仙見米)にかけるとさらに旨みが引き立つ。
  2. 「シャーラム・ラクサ」(880円)はニヨッキのトマトソース煮込み。たっぷりの中国山椒がよく合う。
  3. 奥は素揚げした人参、南瓜などを煮込んだ「イスパハーニカレー」(950円)、「プタイカレー」(手前790円)はマレーシア直送のプタイ豆のカレー。空豆とは似て非なる豆で、しゃきっとした食感と少々の苦みが独特。カレーの美味しさも評判だ。

多国籍料理
炭味家 たんみや


メニューは“無秩序”でも
一皿ごとの味には隙なし

●藤川満オーナーは画商でもあり、店内の様々な絵や装飾が客を楽しませる。藤川恭浩チーフを中心にスタッフが料理を創作。オーダーがあれば作るので、メニューは増え続ける一方で、黒板のオススメは常時50種以上ある。
●大阪府大阪市北区大淀中2-6-29
TEL.06-6452-0315
営業時間/17:30〜25:00(24:00LO) 盆・正月休 サービス料なし。創作料理にマッチするワイン、日本酒、焼酎の揃えも充実。週末は込みあうのでなるべく予約を。


炭味家
  1. 「スパイシーステーキ」(3990円)。レアに焼いた国産黒毛和牛のヒレ肉を20種のスパイス入り濃厚ソースで。
  2. ほとんどの来店客が注文するという名物、「剣先イカのおろしマヨネーズ」(1890円)。炭火で焼いて氷水で締めたイカで大根おろしを包み、特製マヨネーズソースで和える。イカの食感、大根おろしのさっぱり風味、濃厚なソースが見事に調和。しょう油にも合う。
  3. 「ウニあんかけ」(2940円)。ウニ、カニ、玉子の彩りが鮮やか。宴の入り口にスープ代わりの注文が多い。
  4. 「バインセオ」(ベトナム風お好み焼き 1個420円、注文は2個から)。エビ、牛ロース肉、各種野菜とアボカド&ナッツのソースを、ココナツミルクの皮で包んだ。様々な歯応えが楽しめる逸品。
 
 
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