ハーバード式仕事の道具箱 [127]

あなたのチームの「眠れる創造性」を引き出す
「側面支援」の方法とは

創造性を「開花」させる上司、「枯渇」させる上司

 
 
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おなじチームでも労働環境が変わるだけで
創造性が開花したり枯渇したりすることが
さまざまな調査で明らかになっている。
チームの創造的思考能力を高めるために
リーダーは何をすべきか。
 
 
ジュディス・A・ロス = 文ディプロマット = 翻訳
 
 

 新しいアイデアが生まれ、考案され、価値を付加するイノベーションへと育てられる労働環境を築くために、リーダーには何ができるのか。

 何よりもまず、イノベーションは製品やサービスに限定されたものではないことを肝に銘じよう。戦略論の権威でロンドン大学経営大学院教授のゲーリー・ハメルが、先般の「フォーチュン・イノベーション・フォーラム」の基調講演で指摘したように、新しい製品やサービスの創造は、組織がその業績を高める方法をイノベートするための一手段にすぎない。長年の製造上の問題を解決する新しい方法も、スピードを速め、コストを削減する新しい業務プロセスも、研究開発やマーケティングや人材管理の新しい手法も、すべてが企業の利益に大きな価値を付加できるイノベーションなのだ。

 無数の方法で価値を付加できる類の創造的思考をチームに促すためには、リーダーは次の四つの分野に精力を傾けるべきだと、専門家たちは言う。

(1)明確な目標を設定し、そこに到達する方法はメンバー自身に決めさせる

 人間の創造性は仕事に対する興味と仕事が与えてくれる刺激によって大きく高められる。

 織り地やコーティング地のメーカー、シーマン・コーポレーション(オハイオ州)が2005年初めに突然、赤字に転落したとき、同社のCEOリチャード・シーマンは、経営管理チームを集めて会社を黒字に戻す方法を見つけるよう求めた。シーマン社を赤字に追いやった大きな要因は二つあった。石油化学製品の価格の上昇と売り上げの鈍化である。シーマンは経営管理チームに、会社を黒字転換させるために必要な変革を企画実行する権限を与えた。

 この大胆な一任作戦は成功した。チームは三カ月足らずで会社を黒字に戻したのである。チームは迅速に値上げを実現することと生産能力を削減することに精力を集中することで、これを達成した。シーマンは次のように語る。

「創造的な部分は、わが社の顧客企業に値上げの必要性を伝えたこと、そしてさらに、それらの企業がそれぞれの顧客にこの値上げの必要性を伝えるために役立つ情報を効果的に提供することだった」

 経営管理チームは顧客に率直なメッセージを送ることに決め、営業、マーケティング、顧客サービスの各チームもそれに同意した。「先般来の原油価格の上昇により、わが社の原料費は急上昇し、輸送費と施設費も上昇しました。そのためこれらのコストの一部を顧客に転嫁するしか方法がなくなりました」というメッセージである。顧客と足並みを揃えた一貫性のあるコミュニケーション・プランは奏功し、シーマン社は大幅な値上げを実現できた。

 経営管理チームは、20%の売り上げ増を見込んでごく最近まで増強に努めていた製造業務を迅速に縮小する方法も見つけ出した。多くの労働者をより労働集約的な業務に配置転換して、大量レイオフを回避したのだ。これには、厳しい時期に士気を低下させないという副次的なメリットもあった。

(2)部下の仕事を(離れたところから)しっかり見つめる

 チームの仕事ぶりをしっかり見つめていよう。しかし、監視してはいけない。任せた仕事の進捗状況を頻繁に尋ねる、あらゆる細部を知ろうとする、同じ質問を何度もする??このような細かい管理は、部下の自信と本来の意欲を押しつぶして、彼らの創造性とイノベーション能力を殺すことになる。

 彼らが行っていることに関心を示し、建設的で慎重に言葉を選んだアドバイスを与えよう。

 創造的な仕事に携わる人々のチームを率いるためには、バランスのとれたアプローチが必要だ。パット・ファロンとともに広告会社を設立し、彼と『Juicing the Orange: How to Turn Creativity into a Powerful Business Advantage』(2006)を著しているフレッド・センによれば、「部下はたしかにリーダーが引っ張っていってくれることを望んでいるが、リーダーは部下にミスをさせ、考えさせ、彼ら自身に仕事を提示させて、その仕事を褒めてやらなくてはいけない」。

 部下の仕事を??たとえそれが不完全であっても??褒めることは、リーダーの決定的に重要な仕事である。

(3)チームの仕事を側面から支援する

 チームのメンバーの前向きな感情を増進させ、彼らの創造性を高めるために、できるかぎりの方法で彼らを支援し、彼らの仕事をやりやすくしよう。

 ハーバードビジネススクール教授で創造性の専門家であるテレーザ・アマビーレは、創造的な仕事に携わっている専門職の人々の日誌を基に、リーダーの行動と部下のパフォーマンスの関係を調べたことがある。

 一方をAチーム、もう一方をBチームと呼ぶとすると、Aチームのリーダーは、かなりの時間をかけて、チームの仕事に役立つ外部情報を収集した。さらに、チームのメンバーが他の部署の同僚に情報や資源を要請したとき、それがより得られやすくなるようにという配慮から、チームのプロジェクトを他の部署に宣伝して回った。それに対し、Bチームのリーダーはこうしたことを何もしなかった。

 Aチームのリーダーは、チームに創造的なアイデア生成のために必要な内容と文脈を与え、プロジェクトの複雑な課題に取り組むチームの意欲を高めたのである。その結果、チームがきわめて高レベルの創造的成果を挙げた。

 Bチームのリーダーは必要な情報をチームに流すことも、チームの仕事を外部に宣伝することもせず、チームのパフォーマンスを下降スパイラルに追いやる一因となった。

(4)効果的なアイデア生成プロセスとアイデア評価プロセスを構築する

 アイデアを生み出し、評価することは、イノベーション・プロセスの決定的に重要な要素である。ニューヨーク州立大学バッファロー校の国際創造性研究センター所長で、『Creative Leadership: Skills That Drive Change』(2006)の共著者、ジェラルド・プッチョ教授は、リーダーとそのチームがアイデアを生成、評価するのに役立つ次のような枠組みを提案する。

・アイデアの生成をアイデアの評価と分離しよう

「二つのプロセスが混同されると、お粗末な決定がなされる。会議では往々にしてアイデアの発表と評価が同時に行われる。その結果、優れた案を十分理解しないうちに早まって捨ててしまうことになる」と、プッチョは言う。

・量を目指そう

 アイデア生成の段階では量を目指せと、プッチョは言う。「三つのメニューから選ぶより10の中から選ぶほうが格段に望ましい」。なぜなら、選択メニューにアイデアがたくさん載っていればいるほど、画期的なアイデアを見つけられる公算が高いからだ。

・アイデアを他の文脈と関連づけよう

 他のアイデアや意見に相乗りすることには、新しい解決策を得る可能性が高まる、柔軟な思考を促す、などの利点がある。

 アイデアの評価と選定には、アイデア生成にかけた時間と少なくとも同程度の時間を投じよう。最も好都合な案ではなく最も優れた案を選び、発展させるために、直感と批判的分析をバランスよく組み合わせよう。評価モードに移行してからのステップとして、プッチョは次の二つを勧める。

・肯定的な判定を用いよう

 アイデアを評価するときには、長所と短所の両方を詳しく検討しよう。だが、弱点や欠点を厳しく探してはいけない。欠点はあるものの、それを克服したら理想的なものになるアイデアを見落とすおそれがあるからだ。

・目的と照らし合わせよう

 アイデアを査定するにあたっては、次のような点を検討しよう。

「われわれが顧客のニーズをより効果的に満たすのにどの程度役立つか」

「予算内で実行できるか」

「目標時間内で実行できるか」

 これらを問いかけて答えを出すことは「アイデアを練り上げ、発展を導く方法でもある。すばらしいアイデアをわずかの修正で基準に合うものにできることもある」と、プッチョは言う。

 
 

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