人に教えたくない店 [367]
素朴な佇まいなのに味は実力派……
そんな「ありそうでなさそうな店」に惹かれる
佐藤竹善さん
青森から上京したものの、しばらくは缶詰や漬物といった仕送り物資だけが頼みという保存食暮らしをしていました。音楽で稼げるようになってからは、全国ツアーなどで各地のおいしいものもそれなりに食べました。でも、若いときは質より量という感じでしたね。今は、家からあまり遠くない町にあるいい感じの店で、おいしい料理を味わいながらゆったり過ごすスタイルが気に入っています。
そんな時間を今後たくさん過ごさせてもらえると確信しているのが「ラ・ポルケッタ」です。イタリア料理は大好きなので、入り口の素朴な雰囲気に誘われるままに入ったところ大正解。前に訪れたローマの町外れにあった、地元の人で賑わっている店に通じるものを感じました。
パスタは昔から大好きなんですが、ラビオリやショートパスタは、手打ちのモチモチしすぎる食感がちょっと苦手だったんです。ところが、具材の組み合わせに惹かれてオーダーしたパスタが、なんとラビオリ! これはやばいと思いましたが、食べてみたら、そのおいしさに目からうろこ。この店限定で、嫌いなメニューが大好きになりました。
この一件がいい例ですが、ラ・ポルケッタの料理はどれも名前から想像するイメージを気持ちよく裏切ってくれます。ありそうで、なさそうな料理。店自体も、素朴な佇まいなんですが入ってみると、なかなか出合えない実力派。この“ありそうで、なさそう”なものに、僕はたまらなく魅力を感じます。音楽なら、ポップスなんだけど、実はすべて本物の素材、ルーツで成り立っている、みたいな感じでしょうか。
あとは大好きな寿司屋が故郷の青森にあります。「天ふじ」は、そのしっかりした仕事ぶりに何度訪ねても舌が踊らされています。青森は魚介類が豊富で新鮮ですが、しっかりと“仕事”が施された鮨屋さんは少ないように思います。実はこの店を知ったのは、ほんの数年前。高校の軽音楽部仲間に医師が何人かいて、彼らが勤める公立病院で開かれるボランティア・コンサートに僕も参加しています。すると、連中がご馳走してくれるのがここの寿司なのです。
青森ネタとして絶対にはずせないのは、握りではありませんが、クリガニです。昔は毛ガニの亜流扱いでしたが、最近はクリガニという別種のカニだとしっかり認知されています。僕自身も亜流イメージを子供の頃から植え付けられていましたけど、やはりなじんだ味なので毛ガニよりうまいなと思います。これは東京では味わえません。ちなみにホタテ貝は特産品ですが、しょっちゅう食べていたからか、今はあんまり食べません。子供時代に一生分を食べてしまったようです(笑)
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●イタリア料理
ラ・ポルケッタ
熱意あふれる料理とサービスが
地元の人々に愛される
蒲田の隠れた名店●ローマのサバティーニでの修業経験を持つシェフの、パンに至るまで手づくりにこだわったイタリア各地の料理。そして、シェフがつくる味に惚れ込み、「その料理を運べることに幸せを感じている」店長。2人の絶妙な連携による、肩肘の張らないサービスも心地よい。
●東京都大田区蒲田5-36-3 ユニファームビル1F
TEL.03-5703-5088
営業時間/11:30〜14:30(LO)、17:00〜22:00(LO) 日曜定休 カード可 ※夜は予約が確実
- 骨付き鶏もも肉にソーセージを詰めたロースト1260円。人気のソーセージを詰めたオリジナル料理を赤ワインソースが引き立てる。
- 誰もがオーダーする旬前菜の盛り合わせ。写真は空豆とボロネーゼのキッシュ、野菜のテリーヌ、海老とじゃがいものサラダ、リコッタチーズとかぼちゃムースの生ハム包み、蟹と菜の花のベネツィア風で、5種1470円。このボリュームで1人分というから驚く。ほかに3種945円、7種2600円。
- ブッタネスカ945円。アンチョビ、ケッパー、オリーブの個性が光るトマトソースが実においしい。
●寿司
天ふじ
ヤリイカ、クリガニなど
青森のネタを
江戸前の技で味わえる●親方の藤井隆さんは、東京で修業した後、奥様の実家のある青森へ。28年前にオープンした。ほとんどが青森産というネタは常時25種。焼きアワビや焼きウニも味わえるおまかせを頼んだ場合、予算の目安は酒代を除いて一人1万5000円。
●青森県青森市長島3-16-16
TEL.017-773-6535
営業時間/12:00〜14:00、17:00〜23:00入店 日曜・祝日定休 カード可 ※要予約。個室は3室あり

- 握りの盛り合わせ4000円。天ふじではマグロにもこだわりあり。近海ものの生本マグロのみを扱う。この日のマグロは大間の対岸、戸井産。
- 活イカのエンペラの寿司。獲れたてをさばいたばかりのヤリイカだけが持つ、ふるふると震えんばかりの透明感。目にも美しいエンペラは、コリコリとした食感とつるりとした喉ごしを味わえる。夏場は真イカになる。
- 地元では「花見の蟹」とも呼ばれているクリガニ。毛蟹よりかなり小さいが、旨味は濃厚。卵の味はやみつきになるおいしさだ。毎年4月中旬〜6月末くらいまで。
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