持株会社体制へ移行した「ポーラ・オルビス グループ」

いつまでも信頼され愛されるブランドへ
オンリーワンを目指し
グループ成長戦略がスタート

 
 
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2007年、ポーラグループは持株会社
体制へと移行した。純粋持株会社で
ある「ポーラ・オルビス ホールディン
グス」のもと、事業会社としてポーラ
化粧品本舗、オルビスなど主要7社
が並列する全23社による新たなグル
ープ体制への転換だ。「新創業宣言」
(02年)以来進められてきた業態改革
の新たな進化軸として、次の飛躍へ
の培養器として、持株会社制度の特
徴をどう活かすのか。新体制が目指
すビジョンと戦略を、グループを率い
る鈴木郷史社長に聞いた。

 
 
株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス代表取締役社長
鈴木郷史 = 談金城匡宗 = 撮影
 
 
自立した各ブランドの成長で グループ価値を最大化
「ポーラ中心主義を排し、各ブランドによる自主自立経営を行う。グループ価値の最大化が新体制の大きな狙いです」――。

 ポーラ・オルビスホールディングスの鈴木郷史社長が、大勢の記者を前に、純粋持株会社体制への移行を発表したのは2007年1月末。それから約三カ月。「明らかに変化の兆しが出てきています」と語る。冷静な口調ながら、時折のぞく笑み。持株会社制度によるグループ新体制は、順調に動き出しているようだ。

 純粋持株会社のポーラ・オルビスホールディングスは、傘下にポーラ化粧品本舗、オルビス、pdc、フューチャーラボ、ポーラ化成工業、ポーラファルマ、ピーオーリアルエステート等の事業子会社が入る形態で、グループ総勢23社、連結売上高約1712億円、従業員約2800名の威容となる。創業78年を迎えるポーラ化粧品が各社のトップマネジメントを刷新し組織を再構築、ポーラ・オルビスグループとして、新たな歴史を刻みはじめたのだ。

 1929年、鈴木社長の祖父である鈴木忍が妻を思って作り出したクリームから、その歴史は始まった。当初から女性を販売員として起用し、日本における女性の社会進出に大きく貢献してきたポーラ。常に時代を先読みする経営風土は今も脈々と息づく。今回の新体制においても創業時よりブランドの品質を支えてきた研究開発・生産部門のポーラ化成工業の社長に、創業一族以外から初の社長として鷺谷廣道氏が就任(ポーラファルマ社長も兼任)。さらにグループ会社に三十代の新社長を誕生させるなど新たな船出へ向けた不退転の覚悟がうかがえる。

「大きな時代変化のなかで、各社には個性ある経営をしてもらう。各社・各ブランドのエネルギーの総和が、グループ成長の原動力になります。これまで”経営管理においては、ポーラがグループの本社”という認識があったが、これでは喫緊の課題であるスピード経営にも、当グループの実態にも合わなくなっていました」

 たとえば化粧品の通販事業を担うオルビス。カタログやホームページでもポーラ化粧品について触れていないため、知る人は少ないが、れっきとしたポーラ化粧品のグループ会社。1987年の事業開始早々から順調に増収増益を記録し、いまや年商約450億円と通販化粧品トップメーカーの一員にまで成長。グループ成長力を牽引している現状もあり、実態に合わせホールディングス社名にオルビスを入れた。

 このほか、セルフ市場向けスキンケア商品を展開するpdc、昨年M&Aでグループ入りした、テレビ通販のフューチャーラボ、さらにコフ、ラゼルなど各ターゲットにマッチした個別の深掘り戦略が求められていた。一方で今後のグループ成長には、ブランド・ポートフォリオ(ブランドの構成図)の空白域(顧客層・価格帯・チャネル)を埋めるための、M&Aやアライアンス戦略が欠かせない。こうした諸々の課題への最適解として、持株会社体制によるグループ再編が進められたのである。
大胆な業態転換で業界初の事業モデルにチャレンジ
純粋持株会社として船出した「ポーラ・オルビスホールディングス」の展望と戦略について、その概要を説明する鈴木社長(2007年1月29日に行われた記者発表)。
もちろん純粋持株会社という最新のマネジメントシステムを導入するに際しては、事前の入念な準備作業があった。新体制移行への特別プロジェクトが始動したのは05年4月。並行してグループ各社を結ぶ経営管理システムの構築や新人事制度の導入など、新体制を想定したさまざまな改革が進められた。なかでも鈴木社長がもっとも意を注いだのが「人を活かす」ための業務改革だった。

 周辺の証言によると「改革については社長自ら提案しリードした。どうしたら社員個々の生きがいを引き出せるか。社内コンサルタントの育成や現場重視のプロセス改革など、人材育成面での強化策がとくに目立った」という。

 鈴木社長は、こう語る。

「社員一人ひとりの自覚と成長がなければ会社存続などありえません。一連の組織活性化策と今回の組織再編で、社員の意識が大きく変わりつつあります。『自分たちの力でブランドを成長させ、強くしていく』との自覚が生まれてきたのです」

 とはいえ、わずか一年半ほどの改善活動で老舗企業が大きく変身する、とはにわかに信じ難いのも事実。しかし、ポーラ化粧品本舗の第四代社長に就任した2000年以降の大胆な業態転換の過程を知るとき、その変身説話は強い説得力をもって迫ってくる。

 鈴木社長の就任当時、状況は極めて厳しいものだった。女性の社会進出による在宅率の低下は、ポーラの得意とする訪問販売事業を直撃する。業績は低迷気味で、社員の間にも「このままでは将来の見込みがない」との危機感が高まっていた。そこで鈴木社長が打った手が、すでに策定されていた中期経営計画を白紙に戻し、自社の強みを活かした戦略に集中すること。そして全社員へ向けたコーポレート・メッセージ、「カウンセリング1st.(ファースト)」の発信だった。

 それは「ポーラの強さの源はカウンセリングにあり」と企業価値を再定義し、トップの陣頭指揮のもと、訪問販売の業態改革に乗り出したのである。

「全国各地にある営業所の中身を丹念に見ていくと、成長を続けている営業所には共通する特徴がありました。オーダーメイド型化粧品アペックス・アイの肌分析システムを活用した高度なカウンセリングを実践し、同時に本格エステ機器を導入して満足度の高いエステサービスを展開していたのです」

 この自分なりの仮説を確かなものにすべく、鈴木社長は販売現場に赴き、膝詰めでミーティングを実施した。その回数は70回を超えた。

「営業所長の彼女たちが望んでいたのは、それまでの事務所然とした営業所よりも、もっときれいで広いスペースをもったポーラらしい店舗。本社の投資とサポートを得て、好立地でカウンセリングとエステティックを行うことでした。それはまた経営にとっても、ポーラのもっている経営資源を有効活用できる、もっともお客様に喜んでいただけるビジネスモデルでした」

 カウンセリングとエステティック、それに化粧品販売を組み合わせた斬新なスタイルは、化粧品業界では初の試み。訪販型から、誘客型の事業モデルへの転換。この新戦略は02年の「新創業宣言」で経営方針として明確化され、その後、誘客型店舗の集大成として本格的なエステティックを融合したプレミアム・ビューティ・ショップ「ポーラ ザ ビューティ」(05年開始)の創出となった。現在では全国に200店、また海外でも米国、中国、韓国、香港などに20店を出店。国際展開を進めるうえでも、もっとも優先順位の高い事業戦略となったのである。
国内展開500店、海外500店 世界のブランドへ
 新業態「ポーラ ザ ビューティ」を生んだのは、日々顧客と接する「現場の知恵」だった。それを経営戦略へと昇華したのが、販売現場の声に真摯に耳を傾ける鈴木社長の「現場主義」だった。この経営哲学はもともと、鈴木社長が大学院修了後に入社した本田技術研究所の「三現主義(現場、現物、現金)」に由来するが、それにさらに磨きをかけたのは、一人ひとりの顧客ニーズに徹底して密着するポーラ化粧品の企業文化であることは間違いない。

 たとえば900万件を超える肌データをもとにしたオーダーメイド型化粧品「アペックス・アイ」は、その象徴的な商品。また顧客の要望やクレームを細かく拾いあげ活用するオルビスの経営姿勢にも、徹底した顧客志向がうかがえる。

「モノづくりから販売まで一貫してできるのが私たちの強み。セルフブランドのpdcを除いては、販売つまりお客様に商品を届けるところまで責任をもって担う体制をとっています。オンリーワンの価値とはそうした仕組みの上に成り立つものだと考えています」

 新体制発足にともない、ポーラ・オルビスグループでは新たなグループ理念として「世界中の人々に笑顔と感動をお届けしたい」とのスローガンを掲げた。さらに「サイエンスに裏付けされたオンリーワンの商品とサービスを提供」し、「世界中の誰からも愛され信頼されるブランドを目指します」と続く。

 この理念にもとづき、グループ成長戦略として鈴木社長が示したのが以下の重点項目。(1)ポーラブランド力の向上、(2)オルビスのさらなる伸張、(3)マルチブランド化への積極投資、(4)グループ組織力の向上、の4つである。

「ポーラブランド力の向上」については、「ポーラ ザ ビューティ」の出店加速が、まず挙げられる。ポーラ本社と販売会社の統合を機に、営業改革をさらに促進し、その基盤の上に、現在の200店を来年までに500店へと拡大する方針だ。海外でも2011年をメドに、現在の20店を500店へと増強させる計画だ。中国で200店、米国で200店、それ以外で100店という目論見である。

「米国ではビバリーヒルズに続き、サンタモニカにも開店します。将来は直営店以外にもフランチャイズチェーンでの展開も考えており、ポーラ独自のビジネスモデルは、海外でもきっと喜ばれるはず。とくに当社の美白化粧品は世界的トレンドであり、注目されています。先頃もモスクワの流通資本から熱烈なお誘いを受け、大手化粧品会社としては初めてロシアに現地法人を設立しました」

 一方「オルビスのさらなる伸張」については、ネット事業の強化、商品力の強化に加え、直営店「オルビス ザ ショップ」の100店舗化による成長戦略を描く。ポーラと同様、海外展開もアジア市場を重点に出店を加速する。現在の韓国、台湾に加え、新興国・地域での強化を検討中だ。

「マルチブランド化への積極投資」では、先頃フランスの高級化粧品「オルラーヌ」(パリ)と提携。共同出資会社オルラーヌジャポンを設立し、オルラーヌブランドの化粧品やサービスの提供を開始した。

 マルチブランド化へ向けては、今後もM&Aやアライアンスを積極化する方針で、「化粧品やファッションなど、グループ商品とシナジー効果が生まれそうな複数のブランドに絞って、現在調査中」と鈴木社長は明かす。

 また今春設立された医薬品会社ポーラファルマも、マルチブランド化で大きな期待がかかる事業の一つ。05年に自社開発した「ルリコン」の売り上げが順調に拡大。ポーラ化成工業の新薬開発部門と科薬の販売部門を合体し、ポーラファルマとして独立させることで一貫体制を確立。皮膚領域に特化した事業により、アンチエイジングや美容皮膚に対応する独自のブランド化を目指している。

新規事業の推進など、成長を支える純粋持株会社・ポーラ・オルビスグループ体系図。
二十代、三十代の若手 経営スペシャリストの人材育成を図る
鈴木郷史(すずき・さとし)
1954年静岡県生まれ。79年早稲田大学大学院理工学研究科修了、本田技術研究所入社。86年ポーラ化粧品本舗入社。89年新規事業開発室長。96年取締役就任。2000年代表取締役社長。06年ポーラ・オルビスホールディングス代表取締役社長就任。
 さてグループ成長戦略の最後の重点課題「グループ組織力の向上」だが、それに触れる前に鈴木社長らしい余聞を一つ紹介しよう。

「判断に迷ったとき、危機に直面したとき、社長を支えるものは何ですか?」と質問をしたときのこと。間髪をいれず返ってきたのが「現場で働いている人たちの顔ですね」という答え。

「皆の顔が思い浮かぶとき、この大切な日々の現場を守らなければという気持ちが強くなります。カウンセリング1st.にしても、社長が言ったから変わるのではないんです。現場が心底納得し、そうしたほうがいいと思うから変わるのであって、会社を支えているのは最前線にいる一人ひとりなのですよ」

「グループ組織力の向上」にしても、結局は一人ひとりの個に行きつく。ホールディングスによる「迅速な意思決定と全体最適判断の強化」は、マネジメントツール的には、確かにそのとおり。だが、ポーラ・オルビスグループが継続して取り組んでいる「人を活かす経営スタイル」があってこそ、組織力向上も、グループ価値の最大化も実現する、と鈴木社長は確信している。

 女性の積極登用、若手経営人材の育成など、グループ全体に適用される人材育成方針は、徐々に浸透してきている。「二十代社員を対象にした勉強会『未来研究会』への応募数も、前回の10倍に増えました」と相好を崩す鈴木社長。三十代以上の管理職に対する本格的な「経営幹部養成講座」と併せ、次代の若手経営者を輩出するメカニズムは、グループの将来像を左右する重要な布石となるだろう。積極的なM&A戦略やブランドの世界展開に目を向けるとき、ダイナミックで個性的な経営スペシャリストの存在は、今後極めて重要な意味をもってくる。

 そして、もう一つ。鈴木社長が意識して行っているのが「情報の共有化」だ。厳重なセキュリティを施したうえでイントラネットを介し、商品、キャンペーン、在庫などの営業支援情報のほか、経営データの公開は、個々の利益管理が可能な体制を作り上げ、経営の価値観や判断基準を共有する一助になっている。

「社長と新入社員の違いは何か。一つは情報量の圧倒的な差です。同じ情報が組織内に均等に流れれば、人間は間違いなく正しい判断をする、と私は信じています。これも主体的な人材を育てるポイントの一つですね」

 イントラネットに設けられた「社長の部屋」には年間4万件を超えるアクセスがある、と聞く。日々の動向や講師となったセミナーの報告、「ときには経営会議の生々しい議論の内容などを書き込むこともある」と鈴木社長は笑う。

 新体制でスタートした2007年は、2010年へ向けての中期経営計画を策定する重要な節目の年でもある。まずは冒頭で触れた「新マネジメントによる自主自立経営」を徹底することが、新体制の輪郭をはっきりとさせ、ひいてはグループの推進力となる。

 それまでは「現場大好き」の鈴木社長も、「気楽に各社の現場に出向くことは控えるつもり」という。グループ戦略の方向性と各社の主体的なブランド運営が効果的に絡みあったとき、現場は、さらに活気を帯びるはず。鈴木社長は、それを楽しみにしている。
お問い合わせ先 株式会社ポーラ・オルビスホールディングス 広報担当 TEL 03-3494-7123
URL http://www.po-holdings.co.jp
 
 
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