人に教えたくない店 [352]

自腹でマズい店にも行くことで
本当においしい店がわかる

来栖けいさん

 
 
来栖けい = 談
Kei Kurusu
くるす・けい●
1979年、埼玉県生まれ。食をこよなく愛し、6000軒以上にのぼる圧倒的な食べ歩き経験、人並み外れた舌と胃袋をもつ。現在「美食の王様」という肩書で、雑誌やテレビなどで幅広く活躍中。著書や食サイトなどでガイドする店は、お客として味わってから1カ月ほど後においしさを振り返り、紹介するか否かを判断する独自のスタイルをとる。絶対に間食しない、家での食事は野菜中心にご飯を1kg、毎日5リットルの浄水を飲むことで体調を管理。便通は朝1回。排出量は自分でもたまげるほどという。著書に『美食の王様 究極の167店 珠玉の180皿』などがある。
馬場敬子 = 撮影斉藤由利子 = 構成
 
 

 好きなことだからこそ、人に負けるのが大嫌い。誰よりも多くおいしさを知っていたい。だから、料理もパンもスイーツも、すべてに対して貪欲です。しかも広く浅いのも嫌。情報は広く深く! 大人として一般常識はかなり欠如していますが、食においては、誰にも負けない自信があります。

 店には必ず自分の食事として、自分のお金で食べに行きます。情報は信じない。自分で味わわないと納得できません。実際、出かけた店の半分はハズレですが、この存在があるから真のおいしさがわかるのです。

 一人で食べ歩くようになったのは、10年くらい前から。寿司が好きで、寿司といえば銀座だと。ところが、新参の若者が一人でカウンターに座っているものだから上から見られて、不快な視線が注がれるんです。寿司は味と同じくらい、店や大将との相性が大切だと学びました。

 ここ「入船」を訪ねたのは大学1年のとき。マグロはもちろんネタがすばらしいうえに、あの嫌な態度も一切なくて、ひたすら感激しました。大将がとる距離感や間合いが絶妙です。もっと知りたくて、大学4年間で100回も訪ねてしまいました。

 必ず食べるのは丼で、握りもかなり食べます。そのとき気になるものはすべて食べる。満腹中枢が壊れているみたいで、胃袋は底なしです。よくフランス料理店などを一人で訪ねるのも、食べたい料理をすべて一度に味わいたいから。どうも誤解されていますが、レストランは数人で行ったほうが絶対に楽しいものだし、僕だって友人と出かけますよ。

 それと、本能的にいろいろな店に行きたいので、特定の店とは親しくしない主義です。だから、僕が通う店は本当に旨い店。入船が魚のトップなら、肉は「ドン・ナチュール」です。肉の厳選や熟成に加え、塩味の入れ具合や炉窯で焼く職人技で引き出す旨味がすばらしい。肉に賭ける情熱が味わいに出ています。

 料理は塩加減で旨さが決まるし、料理人の器量や技量もわかります。輪郭が際だっている味。これが僕が探し求めるおいしさの基準です。

入船 寿司
入船
ときには赤字覚悟で
日本一の本マグロを仕入れる
地域密着店

●日本一の本マグロを仕入れることで知られる地域密着の寿司店。ときには赤字を覚悟で仕入れているという本マグロを目当てにやってくる遠来客も多い。お好みで食べる場合も、他店ではあまり味わえない皮ぎしはぜひ味わいたい。
●東京都世田谷区奥沢3-31-7
TEL.03-3720-1212
営業時間/11:00〜22:00、ランチタイムは〜15:00 無休 カード可 ※予約可、個室あり(要・サービス料5%)


  1. マグロづくし寿司の丼1万500円。一本釣り、活け締めの本マグロを楽しめる。葉わさびの醤油漬けを混ぜ込んだ寿司飯の上に大トロ、中トロ、赤身、づけ、しもふり、皮ぎしが並ぶ。しもふりは大トロと中トロの間の身。皮ぎしは皮に残る身をこそげたもので、中落ちより脂がのっている。にぎりは1万5750円。
  2. おまかせ寿司1万500円。ネタはすべて天然近海もの。にぎり11かんに巻きもの1本、玉子とボリュームも多い。
  3. 大トロのあぶり3点盛り4725円。煮切り、藻塩、葉わさび漬けを堪能できる。この日のマグロは北海道・戸井産。

炭焼きステーキ
ドン・ナチュール
三歳処女の黒毛和牛を
備長炭で焼き上げて
肉の旨みを引き出す
職人技が冴える

●新橋にあるステーキの名店「あらがわ」から独立した大塚シェフと森地克行さんが2005年に開いた。お勧めはコース2万1000円。好みに細かく対応してくれるため、オーダーメード気分で楽しめる。グラスワインは1500円〜。
●東京都中央区銀座1-7-6 河合ビルB1
TEL.03-3563-4129
営業時間/17:00〜21:00(LO) 日曜・祝日定休 カード可 ※要予約、サービス料10%、カウンター席あり


ドン・ナチュール
  1. 肉は厚く切り出して串に刺し、塩、胡椒をふって炉窯で焼く。塩はオリジナルでブレンドしている。
  2. 厳選ヒレステーキ3万円〜(2人分350g)。肉は2人分の大きな塊を備長炭で焼き、半分に切って盛りつける。肉の表面が高温で瞬間的に焼かれるため、肉汁がたっぷり閉じ込められている。
  3. コースで味わえる魚料理より、アマダイのポワレ赤ワインソース。大塚義司シェフは実は魚料理も得意。
  4. 厳選サーロインステーキ3万円〜(2人分400g)。肉質と飼育者を重視する肉は、黒毛和牛の3歳処女牛のみ。小豆色の濃い脂がきめ細かく入り、品のいいきれいな味が特徴。サーロイン、ヒレとも推奨肉は各2万5000円〜。
 
 
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