人に教えたくない店 [347]

“オヤジが睨みを利かせる店”に
チェーン店はやはりかなわない

河原成美さん

 
 
河原成美 = 談
Shigemi Kawahara
かわはら・しげみ●
1952年、福岡県生まれ。やんちゃな学生時代を過ごした後、飲食業界へ。79年に手がけたレストランバーを皮切りに、85年には「博多一風堂」をオープン。94年、新横浜ラーメン博物館の開館と同時に出店し、人気ぶりが一躍話題となる。テレビ東京「全日本ラーメン職人選手権」では前人未踏の3連覇を達成。現在は全国にある直営店のほか、JR名古屋駅構内「名古屋驛麺通り」などのフードコート、中国・上海のラーメン店「享食78」(チーパー)などを手広く展開している。また、7月にはパンの店を初出店。麺にとどまらない“粉食文化”への思いを強くしている。
斉藤由利子 = 構成四宮佑次(「安春計」)、佐藤直也(「たらふくまんま」) = 撮影
 
 

 なんか厳しそうな顔して握っているけれど、「安春計」の主人は中学の同級生なんです。お互いにやんちゃ者同士の地域の有名人(笑)。すごくいいことがあったときや、何かに迷っているときに顔を見に寄ってしまいます(それを聞いたご主人、高崎さんは「シゲちゃんは迷って来るほうが多かろ」とぽつり)。え、そうだっけ……うん、そうかもな。同級生という気安さもありますが、警察のお世話になったり、家の事情に振り回されたり、浮いたり沈んだりと、同じような人生を送ってきた安心感があるから、多くを語らなくていいのがいい。黙々と寿司をつまんで店を出る頃には、すべてがふっきれています。

 うちは全国展開していますが、飲食店は本来、オヤジが一人で睨(にら)みを利かせているような店が一番です。今も定期的に厨房に立ちますが、すると店がピリッと引き締まる。お客の笑顔も増える。なぜなら俺が起業オヤジだから。それがわかっていたから、東京進出では悩みました。そんなときに出合ったのが「有恒」という言葉。ただそこに有り続ける、という意味の仏教用語です。自分なりに「変わり続けることこそが有り続けることだ」と解釈したところ、成功している店のオヤジはみんな有恒の体現者ということに気づきました。

「いつも旨い」。すでに高いレベルにあるおいしさを維持することは、とても難しいことです。ところが、「たらふくまんま」はさらに上をいっていて、出かけるたびに新しい旨さに出合わせてくれる店です。(主人の)菊池は面白いと思ったことにはどんどん突き進むし、中途半端は絶対にしない。2年前に東京に進出したところ、福岡ではお目にかかれないとびきりの食材、19キロの天然キングサーモンとか4.5キロのスッポンなどが手に入るから、あまり帰ってこなくなっちゃった(笑)。会えないとつまらないから、僕も銀座店に寄ることが多くなりました。

 菊池と僕は1歳違い。同郷じゃないけど、やはり同じ時代を生き抜いてきたから、阿吽の安心感がある。やっぱり同世代っていいよね。

安春計 寿司
安春計 あすけ
地元と築地から
最上級品を仕入れ
アワビの大きさは
福岡界隈一

●近隣に水揚げされても、魚種によっては築地から仕入れることで常に最上級品を扱う。常連の半数が県外、しかも関東圏からと、寿司好きには垂涎の店。同業者の訪問も多い。寿司は、おまかせ握りは昼夜とも5000円、夜のおまかせコースは1万2000円が目安(税・サービス料別)。
●福岡県福岡市中央区薬院1-6-28 エトワール薬院102
TEL.092-716-6688
営業時間/12:00〜13:00、18:00〜21:00 日曜・月曜・祝日定休 カード可 ※要予約


  1. 凛とした握りは、前列奥から、コハダ、本マグロのヅケ、カスゴ、後列はオコゼの昆布締め、シャコ、車海老。丁寧に仕事をしたネタ、甘味を一切加えない赤酢のシャリ、築地から仕入れる香りと辛みが最高級の山葵が奏でるバランスはこれぞ職人技。
  2. アワビは大きさにもこだわり、福岡界隈一を自負する。肝と一緒に酒だけで6時間蒸すアワビのむっちり感はたまらない。

めし処
たらふくまんま (銀座店)
料理の味は
素材8割、技術2割
釣りキンキなどの高級魚が
カウンターにゴロゴロ並ぶ

●2年前に東京進出。料理の味は素材8割、技術2割を信念に、釣りキンキなどの高級魚がカウンターにごろごろ並ぶ。単品のほか大将おまかせコースは1万5700円、2万1000円。また、23:00〜は「深夜のランチ」5250円が登場する。
●東京都中央区銀座6-8-7 交詢ビル4F
TEL.03-3289-9011
営業時間/17:00〜翌3:00(LO)、日曜・祝日は〜24:00(LO) 無休 カード可 ※要予約


たらふくまんま
  1. 名物の特製和牛カルビじゃが。メークイン、にんじん、玉ねぎ、前沢牛カルビを、煮切り白ワイン、酒、ビールが隠し味の、いりこと昆布のだしで煮上げる。甘すぎず、でも心をわしづかみにされる郷愁のある味わい。1人前は食材が2個ずつで2200円。
  2. 毎朝の築地通いに夢中の、ご主人の菊池俊徳さん。福岡の魚に築地が加わり、堂々とピンのピン「日本一のめし屋」を目指す。
 
 

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