バーチャル集団につきものの誤解や対立をいかに克服するか

遠隔地の部下と
心理的距離を縮める法

 
 
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いまや社内のプロジェクトでも
関係者が世界中に散らばっていることは
珍しくない。普段顔を合わせることの
ない者同士を束ねるマネジャーは、
なによりもまず「信頼」を意識するべきだ。
 
 
ジュディス・A・ロス = 文ディプロマット = 翻訳
 
 

 グローバリゼーションとアウトソーシングの影響で、遠隔地から部下を管理するという難しい仕事に直面するマネジャーが増えている。多くのマネジャーが思い知らされているように、部下をバーチャルに管理するというのは、フェース・トゥ・フェースで管理するのとは別物だ。

 バーチャルな集団では、文化的・言語的相違が増幅され、したがって対立も増幅する。電話や電子メールを使ったやりとりでは、ミスや問題を隠したり、誤解をそのまま放置したり、思い込みをしたりといった問題が起きやすい。そうした誤りや混乱は、本格的な惨事に発展しがちだ。

 こうした問題は、バーチャル・オペレーションを構築・管理するにあたり、チームリーダーが「信頼」を意識している限り、避けられる。信頼はあらゆるチーム運営で重要な要素ではあるが、地理的・文化的に分散しているチームを管理するときはとくに重要だ。

 全国産業審議会がオフショアリング(海外の企業へのアウトソーシング)の課題について調べた2005年11月の調査で、国内チームと海外チームの協働を成功させるために必要な要素のうち、信頼は最も重要な要素の一つであることが明らかになった。

 本稿では、数人の学者や実務家にインタビューし、分散したプロジェクトやバーチャル・チームで信頼を高める方法を次の六つにまとめた。

(1)直接顔を合わせる時間をつくる

 スタンフォード経営大学院教授のマーガレット・ニールは、バーチャル・チームと仕事を始めるときには、フェース・トゥ・フェースの立ち上げ会議を行うことを強く勧める。「最初に直接会うことで、人々はチームや仕事といった文脈の中で交流できるだけでなく、昼食をともにするなどして互いの個人的な面も知ることができる」と彼女は言う。

 アクセンチュア人材サービシズは、新たにアウトソーシングされた業務がスタートする前に、主要スタッフのフェース・トゥ・フェースの会議を必ず開き、目標、サービス測定方法、業務開始日、測定基準に関して業務開始前に合意がなされていることを確認している。また、この会議はチームが協働関係を強める場ともなっている。

「この会議のおかげで、チームの国内メンバーと海外メンバーは、互いのコミュニケーション・スタイルになじむことができる。これは信頼とプロ意識に支えられたビジネス関係を築くのにきわめて重要だ」と、同社グローバル・アウトソーシング・ディレクター、ジョージ・バライカは語る。

 対面の会議が不可能なときは、各メンバーの写真と簡単な紹介文を載せたチームの「年報」をつくることをニールは提案する。メンバーの経歴や関心についてちょっとした情報が与えられれば、電話や電子メールでやりとりする際にいくらか共通の基盤を持てることになる。

(2)明確な目標と期待を設定する

「立ち上げ会議で、このチームは何を達成したいのか、またそれを達成したことをどうやって確認するのかについて率直な議論を交わすべきだ」と、ニールは言う。「皆が同じ目標を持っていれば、チームは意見の相違に信頼を損なうことなく対処することができる」。

 細部については意見が対立しているとしても、関係者が同じ最終目標をめざしていれば、議論しても信頼が損なわれることはない。それどころか、自分たちは同じことを達成しようとしているのだというメンバーの共通意識を強めることで、信頼が強化されることさえある。

 バーチャル・チームに対する期待と当初の計画を明確にしたら、マネジャーはチームをその任務にずっと集中させておかなくてはいけない。バライカは、定期的な電話会議で、海外チームの任務に対する心をつなぎとめている。

 ただ、電話会議そのものが信頼を妨げることもある。そのような事態を防ぎ、信頼を高めるようにするためには、可能なかぎりそれぞれのメンバーを別々の部屋に入れてみるのも一案だ。そうすることで、どのメンバーからも同等の集中と関心を引き出すことができる。ニールはこう語る。

「電話会議の一部の参加者は対面、他の参加者はバーチャルということになると、バーチャルなメンバーは影が薄くなる。リアルで会っている連中は自分たちだけでわかる言語で話し始め、バーチャルにつながっている人々はついていけなくなる」

(3)仕事の進捗状況が目に見えるようにする

 信頼を妨げるもうひとつの要因は、遠くにいる同僚がきちんと仕事をしているかどうかをメンバーが確認できないときに浮上してくる。全国産業審議会のアウトソーシング・オフショアリング担当上級顧問、トン・ハイジメンは、彼の協力先のある企業が、アウトソーシング・プロジェクトを管理するための独自の協働ソフトをつくったと語る。このソフトでは、プロジェクトの進行にともない、細かく分けられた段階ごとに、各担当者が完了の印をつけていくようになっている。これは進捗状況を記録するだけのものではなく、メンバー同士が互いにパフォーマンスを高める手助けができるよう、学習したことやベスト・プラクティスを書き込むスペースを設けている。

(4)継続的なフィードバックを与える

 公正で信頼できると見られているマネジャーは、部下にフィードバックを与えている。バーチャルなチームも自分たちの仕事ぶりについて継続的なフィードバックを必要としている。バライカは海外チームにフィードバックを与えるために特別な努力をしている。「『今週はよく頑張った!』とか、『あの問題を解決したとはお見事!』といった電子メールは、信頼や良好な関係を築くのに大いに役立つ。うまくいかないときもフィードバックを送るのを忘れてはならない」と彼は言う。

(5)個々のメンバーの能力を他のメンバーに知らせる

 バーチャル・チームを管理する際には、一人ひとりのメンバーに自分の役割とチームメートの役割を明確に理解させなければならない。また、各人の専門知識を他のメンバーに知らせることも怠ってはならない。

 チームメートの能力を信用することは信頼の重要な構成要素だとニールは言う。「チームメートにその仕事をする能力があることを信じなくてはいけない」。メンバーの強みや経験を把握することは、マネジャーの責任である。

(6)文化に関する理解をはぐくむ

 バーチャル・チームは往々にして言葉の壁やビジネス慣行の違いを乗り越えなければならない。この種の相違が理解されていない場合には、バーチャルな同僚を無視するとか、信用しなくなるといった問題が生じやすい。

 たとえば、単刀直入に仕事の話に入りがちなアメリカ人の電子メールは、他の文化の人々には得てして非礼と受け取られる。ニール自身、こう話す。

「メールの冒頭に挨拶の言葉を入れるようになってから、ヨーロッパや中東の仲間からそれまでよりはるかに好意的に受け取られるようになった」

 誰もが異なるアクセントの英語を話す電話会議は文化的な誤解や失敗の地雷原になりかねない。バライカは、海外チームとの会議で他の参加者が話していることを理解できないときは、ゆっくり話してくれとか、もう一度言ってくれと頼むことにしている。「何度もやっているうちに、他の人々もよくわからなかったことを聞き返すのをためらわなくなるはずだ」と、彼は言う。

 遠隔会議は英語を母国語としない人にとってはとくに難しいことがある。彼らは臆して何も発言せず、グループ全体が彼らの意見やアイデアを聞きそこなうという結果になりかねない。この傾向に対処するため、ヒューレット・パッカードのマネジャー・グループは、会議の冒頭に必ず「ウオームアップ」の時間を設けることにした。各参加者に最近体験した出来事について2〜3分話してもらうことにしたのである。コミュニケーションの通路を補強することに加えて、このエクササイズは互いのスキルや関心についてより深く知る機会にもなった。それこそまさしく、きわめて重要な信頼関係を築くために必要なものなのである。

 
 

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