人に教えたくない店 [345]
食のシーンでは人間性が如実に表れるもの
箸も持てないようなヤツにバットは絶対振れない
豊田泰光さん
普茶料理は最後にたどり着くべき料理だったのに、「梵」と出合ったのは40代。家内に連れてこられたのですが、精進なのに鰻の蒲焼きや海老の天ぷらが出てくるではないですか。僕だけ特別に出してくれるんだな、と食べてみれば鰻は豆腐、海老は人参(笑)。当時は物足りなさを覚えましたが、今はしっくりきています。
梵では、少しずついろいろな料理を味わえるのがいい。例えば刺し身なら、鯛が二切れに小魚がちょっとあるような盛り合わせが僕の好み。だから一種類を食べ続ける河豚は好きじゃない。長嶋(茂雄氏)を河豚に誘ったとき、大皿が出てきた途端、僕の前にある刺し身からザーッと取っていくんです(笑)。豪快と言ってしまえばそれまでですが、もっと味わってほしいとは思いましたね。
食事のシーンには、人間性が如実に表れるものです。とくに大事なのが箸で、箸使いからは品性も見えてきます。もちろん、大成するか否かも。箸も持てないようなヤツにバットは絶対に振れません(笑)。
しかし、今の人は箸の持ち方が悲惨すぎるな。料理人も若い世代が活躍していますが、彼らは僕が知らないものを食べて育っているから、旨味に微妙な違いが生じてきているような気がします。だから「アントニオ」なんです。初めてシチリアに出かけてレストランに入り、「どこかで食べた味だな」と思ったら「アントニオ」の味だったということがありました。店の味を親子三代きっちり守り続けているから、いつ訪ねても幸せで満たしてくれます。
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●普茶料理
梵 ぼん
精進料理なのに
鰻の蒲焼きや
海老の天ぷらが……
最初は僕だけ特別
なのかと思った●1959年開業。二代目主人の古川竜三さんは京都・万福寺で修行を積んだ。普茶料理は7350円、8400円、1万500円(奉仕料別)。
●東京都台東区竜泉1-2-11
TEL.03-3872-0375
営業時間/12:00〜13:30(LO)、17:30〜19:00(LO)、土曜は12:00〜19:00(LO)、日曜・祝日は12:00〜18:00(LO) 火曜定休 カード可 ※要予約
普茶料理とは、黄檗宗に伝わる中国風の精進料理。永平寺流が食すなわち修行なのに対し、普茶料理は飲食平等という考えの下、食を楽しむ工夫が特徴。
- 笋羹(しゅんかん)と呼ばれる季節の野菜や乾物の煮付けの盛り合わせ。酢味の寒天で寄せたり、落花生、梅で和えるなど、一品ごとに味つけの工夫もしてある。
- 豊田さんのお気に入りが、手前の雲片(うんぺん)。野菜の切れ端などの炒め煮で、無駄を出さない姿勢から生まれた。奥は“まふ”と呼ばれる胡麻豆腐。
- “ゆじ”は味付きの野菜天ぷら。右の海老のように見えるのが、人参の天ぷら。
●イタリア料理
ANTONIO"S アントニオ
初めてシチリアに
出かけたとき、
すでに知っている味と再会。
なんとアントニオの味の
原点だったんです●1944年に神戸で創業した後、東京・西麻布へ。85年より現在地に移転。オーナー一族であるシチリア出身のカンチェミ家100年の味を伝える。
●東京都港区南青山7-3-6
TEL.03-3797-0388
営業時間/11:30〜14:00(LO)、17:30〜22:00(LO)、土曜・日曜・祝日のランチは〜15:00(LO)、ディナーは〜21:30(LO) 無休 カード可

- 具のマッシュルームやソーセージが郷愁をそそり、フェンネルが香るミックスピッツァ1365円。時流を取り入れつつも、三十年来のメニューを楽しめるのがアントニオのスタイル。
- エダム、サムソ、パルメザンと3種のチーズとハムのカルツォーネ1890円。
- 豊田さんが必ずオーダーするブルスケッタ788円(写真は2人前)。強めに効かせたバジルなどの香草の力強さを、濃厚なトマトが受け止める。
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