特集/「金持ち」家族、「貧乏」家族
〜「上流への道」を約束する5大スキル〜

金銭リテラシー

お金の上手な貯め方は
ダイエットと同じである

 
 
作家
橘 玲 = 談
Akira Tachibana
たちばな・あきら●
1959年生まれ。早稲田大学卒。主な著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『得する生活』など。
本誌編集部 = 構成
 
 

 金持ちにはケチが多いと言われる。しかし正確には、ケチでないと金持ちになれない、ということなのである。

 億万長者の研究を専門にしている人が書いた、『隣の億万長者』という本が米国で出版された。そこにはニューヨークのペントハウスに住んで、高級外車を乗り回すようなイメージとは、全く違うミリオネアたちの実態が描かれている。多くの金持ちは、普通の人の本当にすぐ隣で、慎ましく暮らしているのだ。

無駄なく暮らせば
億万長者は夢ではない

 いわゆるミリオネア、日本円で1億2000万円くらいの資産であれば、ヒルズ族などでなくても貯めることは可能だ。一番手っ取り早いのは夫婦で稼ぐダブルインカムだろう。現に『隣の億万長者』に登場する金持ち夫婦は、公立中学教師であったりする。逆に医者や弁護士など高収入の仕事でも、専業主婦の妻や独立していない子供が脛をかじっていて、高い支出ゆえに貯金がほとんどなく、ひどい場合には借金をしてしまっている世帯も少なくない。一見、派手な生活をしている人々の内情は、収入は多いが支出もほぼ同じだけ出ていくという、ほとんど自転車操業に近いパターンが現実なのだ。

 お金を貯めることはダイエットに似ている。挑戦する人は多いが、成功する人は少ない。欲望との闘いに打ち勝ったものだけが成功できるのだ。モデルや芸能人が痩せていられるのは肥った途端に仕事がこなくなる恐れがあるからだ。

 米国でもお金を貯められる人は東欧系、中国系、ユダヤ系などの移民一世であることが多い。米国で苦労して生きているマイノリティは、金を貯める以外に生き延びる方法がないからだ。逆に人口比で見ると、いわゆるWASPには金持ちがそれほど多くない。やはり逆境にあるものだけが、物欲に勝てるといえるだろう。

 日本や米国のような豊かな国に暮らし、無駄のない合理的な生活を続けていれば、十分な資産を築くことは難しくない。同年代の平均年収の2倍程度の所得があり、収入の10〜15%を貯蓄に回すことができれば誰でもミリオネアになれるのだ。

 保険や金融商品など、世の中で提供されているサービスはもちろんボランティアではない。どんな仕組みでどんなコストがかかっているか、自分にとってのメリット、デメリットが何かをきちんと把握する必要がある。まずは細かな節約テクニックよりもお金の仕組みを理解することが重要であると思う。一般に「儲かる」商売には人の不安につけ込むものが多い。サプリメントや漢方などの健康ビジネスと同じく、将来の不安から頼りがちな生命保険、個人年金などもそうである。過剰に不安を煽られ、必要のないものまで買わされる恐れがあるので、安易に手を出す前に、まずはそのカラクリについて考えてみるべきだろう。

クレジットカードはポイントに注目

 日本の銀行は基本的に口座開設や口座維持にお金がかからず、低額預金者に優しいので、変な商品に気をつければ、どこもそれほど変わらないと思う。本来なら銀行の実力差は金利に表れるものだが、日本ではそういった意味での競争はほぼ皆無と言ってよい。私自身は家から一番近い都銀の口座と、店舗を持たないことでコストを抑え、その分利率を高めに設定したネット銀行の口座を活用している。

 最近増えてきた、パッケージ型預金商品には要注意だ。外貨預金や投資信託の組み合わせで、一見有利な利率だが、いろいろなところで手数料などを取られてしまう。キャンペーンなどで一時的に利息が高くなっているような場合でも、中途解約の制限や、逆に銀行側の都合で解約される特約が付いたものなどがある。単純に銀行側が赤字覚悟の、販促が目的と思われるもの以外は避けたほうがいい。

 クレジットカードは、現金代わりに使うだけなら手数料がかからない。しかもポイントが貯まる。しかし、実際には店がカード会社に手数料を払っているわけで、コストは現金で払う客が実質的に負担していることになる。それなら、クレジットカードは使ったほうがいいだろう。

 まずはポイントの還元率に注目してみよう。一般的には1%程度が平均だが、消費者金融系などで1.5%を実現しているものもある。あくまでも現金の代替決済手段として使うのであれば、特に問題はないだろう。

 私自身は米系航空会社のマイレージサービスとの提携カード1枚で済ませている。よくゴールドカードなどに付いている海外旅行保険につられて加入する人がいるが、カードの付帯保険は死亡保障が大きいだけで、肝心の入院保障や救援者費用などが手薄なケースが多いのであまり役に立たない。だからカードの保険をあてにせず、海外渡航の都度、ネット上で保障内容をカスタマイズした保険を活用すればいいのである。基本的に年会費がゼロのカードで十分だと思うが、還元率や年間利用額を勘案してメリットのほうが上回るもの、例えば年会費がかかってもマイルが早く貯まるものであれば検討する価値がある。自営業者や、会社の経費を自分のカードで立て替えられる人はあっという間にマイルが貯まるし、レストランでカードを使うだけで、キャッシュバックされるサービスなどもある。

家も車も借りるほうが得

 普段私が財布に入れているお金は3万円程度だ。ATMで1回に下ろすのもその範囲内。実際私にはあまり物欲がないので、それで十分事足りる。お金やモノそのものよりも、それが動く仕組みを考えるのが好きなだけなのである。

 だから車は仕事や生活に必要であるならばともかく、東京や大阪など公共交通機関が発達している大都市圏であれば完全に贅沢品だと考えている。人それぞれ趣味、嗜好があるが、特に車が好きでもないなら必要なときにだけ借りればよい。

 家を欲しいと思ったこともない。一般的に日本人はリスクを好まないと言われているが、なぜか不動産だけは別だ。

 そもそも家を買うことはポートフォリオが不動産に固定されることになる。そうなると資産の流動性が失われ、例えば出産で家族が増えたり、子供が独立して家を出たりといったライフスタイルの変化に対応しにくくなる。

 またレバレッジが高くなりがちで、ローン金利、維持費や固定資産税などのコストもかかるうえ、市況の変化や、地震、火災、最悪のケースは耐震偽装などコントロールできないリスクが多すぎる。

 私自身は家族の状況に合わせて、賃貸住宅を住み替えている。家などその気になればいつでも買えるものだ。現に地方のリゾートマンションなど、数十万円まで値下がりしている物件もある。

 私の友人に金持ちの経営者がいる。彼の事業はうまくいっていて、かなりの資産も築いているのだが、彼は近所の二つのスーパーのネギの値段が大きく違う、といった話をするのが大好きなのである。ただケチなだけではなく、その理由まで分析しようとする。彼が金持ちになれたこととその理由を知ろうとする姿勢は無縁ではないと思う。どうしてこの商品がこの価格なのか、世の中がどういう仕組みで動いているのか、興味を持って考える人が結局、お金を手にするのであろう。

 先ほども少し述べたが、私は所有欲が少なく、買い物もあまりしない。保有資産も流動性を重視した構成になっており、いつもバックパッカーのように身軽だ。もちろん性格の問題もある。絶え間なく消費を続けることによって、自らのモチベーションを高く保つタイプの人もいるからだ。ただその場合、たとえ高収入でも破綻するリスクが高いことは認識しておくべきだろう。まあ浪費する人がいるから経済が回っていくわけで、皆が節約し始めると経済は破綻してしまうのだが。

 何百、何千億という資産を持つ、いわゆるセレブになるためには運と才能に相当恵まれていないといけない。だからそういう目標を追いかけるのは辛いだろう。生活レベルの高低は主観的なものなのだから、今の日本に生まれたこと自体がすでに相当な幸運と思えばいい。そうすれば抵抗なく生活レベルを下げられるし、お金も貯まっていくだろう。

 
 
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