人に教えたくない店 [341]

経済とは人間の活動そのもの。ゆえにエコノミストたるもの、
人間のあらゆる現象に興味をもつべきである。食事もその一環です

伊藤洋一さん

 
 
伊藤洋一 = 文
Yoichi Ito
いとう・よういち●
1950年、長野県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、時事通信社に入社。外国経済部に配属され、ニューヨーク特派員などを歴任する。85年、住友信託銀行に入行。現在は住信基礎研究所主席研究員。また、経済ジャーナリストとして評論やエッセイを手がけるほか、テレビ朝日「やじうまプラス」やテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」、ラジオNIKKEI「Round Up World Now!」やTBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」などでキャスターやコメンテーターとしても活躍。著書は『日本力 アジアを引っぱる経済・欧米が憧れる文化』など。
椿 孝(人物)、矢野宗利(店) = 撮影斉藤由利子 = 構成
 
 

 夜は必ずパッケージで考える。おいしく食事し、あと移動して別の店で酒を飲む。食事が静かな店だったら、お酒は賑やかなのがいい。逆も真だ。重要なのは、この二軒の店の間はできる限り歩くことだ。なぜかわからないがそうだ。今日は僕が好きな西麻布界隈で、「流れの一つの典型」を紹介する。

 一軒目は「こだま」。静かだ。カウンターでいただく料理がすばらしい。行きつけの地中海料理店のシェフご推薦だった。行ったら好きになった。一品一品の丁寧な作りと完成度の高さは抜群である。

「行きつけの店のシェフお勧め」というのが大事だ。嗜好が合うということ。だから間違いがない。私はそうやって店のレパートリーを広げてきた。教えもするが、次の店でもまた教わる(笑)。だから、僕の好きな店は「味覚つながり」だといえる。

 二軒目は音が溢れる「BODY & SOUL」。「こだま」から歩くこと20分。これくらいの距離がいい。この店とのつきあいは古い。演奏者との距離感が、ニューヨーク滞在中に通った「ブルーノート」にとても似ていて心地よい。好きな飲み物を傾けながらジャズに身をゆだねれば、体に元気と感覚が戻ってくる。なによりもオーナーの関京子さんをはじめとして、この店のスタッフの温かさがいい。料理もおいしい。

 この二軒を回り終えるとやっと、「夜が一回終わった」という気になる。あと、さらに行くとしたら、静かなデザートワインの店くらいか。そうなれば、もう気分は最高だ。

ジャズクラブ
BODY & SOUL
一日の終わりに向かう時間を
漂うのに、最適な音楽と空間

●演奏者たちからも日本一と称えられる空間もすばらしいジャズクラブ。ソフトからハード、軽快からスローまで幅広いセレクションも魅力。
●東京都港区南青山6-13-9 アニス南青山B1
TEL.03-5466-3348
営業時間/19:00〜24:30(フード22:30LO)、1stステージ20:30〜、2ndステージ22:20〜(23:30終演予定) 日曜不定休 カード可 ※20:00入店までは予約可 ミュージックチャージ1人3500円〜。出演スケジュールは http://www.bodyandsoul.co.jp


BODY&SOUL
フランス料理やイタリア料理で修業したシェフがつくる創作料理。
  1. じっくり1週間をかけてつくるフォン・ド・ボーにマデラ酒の甘い香りがからむ、ビーフシチュー マデラソース1700円。5時間ほど煮込んだ牛ばら肉はとろんとろん。
  2. 夏に向かって脂のノリがよくなるスズキのグリル香草ソース1500円。トマトの酸味がきいたバジルにんにくソースが、パリッと焼かれたスズキの味わいを引き締める。
  3. 7種の魚介類と野菜が集うシーフードサラダ1600円。すりおろした玉ねぎがたっぷりの自家製ドレッシングがまた後を引くおいしさ。これら3品を含むグランドメニューのほか、月替わりの季節メニューもある。ジャズクラブとしては珍しい充実ぶりだ。

こだま 料理屋
こだま
清潔感あふれる礼儀正しさと
インプレッシブな料理。
訪ねるほどに増幅する魅力

●2002年夏にオープン。19歳で京都の懐石料理に入ったご主人は今年42歳。懐石を皮切りに寿司、天ぷら、蕎麦とさまざまな日本料理を手がけて独立した。材料を使いきる調理、調味料を控えた味つけなど、食材派のヘルシーが特徴。
●東京都港区西麻布1-10-6 NISHIAZABU 1106ビル 2F
TEL.03-3408-8865
営業時間/18:00〜21:00(LO) 日曜・祝日定休 カード可 ※完全予約制


料理はおまかせのみで基本は1万5750円。
  1. 伊藤さんがまいったというアワビ蕎麦。ご主人の小玉勉さんのアワビ好きが高じて生まれた看板料理。あおさを混ぜ込んだ自家製蕎麦をアワビの酒蒸し汁と肝の裏ごしでつくったソースで和えたもの。研究を重ねた蒸しアワビのむっちりとした食感など、アワビを堪能できる。料理の一品なので量は少なめ。そのためこの料理にはパンが添えられ、殻に残ったソースを余すことなく味わえる。毎日ある料理ではないので、希望者は予約時に申し出ること。
  2. 春の料理から、イイダコと山菜、花山葵のゼリーがけ。花山葵のやさしい辛味がタコの甘さと好相性。
  3. 締めの定番は、おこげが香る炊きたての鯛めし。骨やアラでとった鯛のだしと鰹昆布だしを合わせて炊くため、旨みが複雑で深く、しみじみ旨い。残ったらお土産にしてもらえる。
 
 

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