労働者不足の時代、いまいる社員をつなぎ留めるにはどうしたらよいか

年代別、ニーズ別
「人材流出防止策」

 
 
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いまの労働者は、
平均年齢が上がっているだけでなく、
価値観も変化している。
すぐに責任を持ちたがる若手、
反権威主義の中堅、
強い忠誠心を持つベテラン。
企業が競争力を保つためには、
それぞれの層のニーズに応える必要がある。
 
 
エリック・J・マクナルティ = 文ディプロマット = 翻訳
 
 

 ベビーブーム世代の最年長の人々が定年に近づくなかで、先見の明のある企業はリーダーシップ開発プログラムや継承プログラムに多額の投資を行っている。つまり、控えメンバーの能力を高めることに重点を置いているのだ。これは一見、賢明なアプローチのように見える。だが、会社を未来へ導いてくれる人材としてあてにしている人々が、必要とするとき会社に残っていなかったらどうなるのか。また、彼らがそもそもリーダーの役割など望まないとしたら、どうなるのか。

 最近の調査によると、このような可能性は、どちらもますます現実味を帯びてきている。

 将来の競争力を維持するためには、企業は労働者の新しい価値観を認識しなければならない。そして、これまでの人材配置の常識を見直し、社員の採用や動機づけやリテンション(人材流出防止)の方法を再考する作業に積極的に取り組まなければならない。

 この大変な作業をどこから始めるべきか。労働者の変化とその年齢層別傾向を広範に調査しているコンコース・グループ(テキサス州)のタマラ・エリクソンとボブ・モリソンのアドバイスを検討することから始めよう。

(1) 35歳未満の労働者

 若手労働者は組織に対する忠誠心が年配労働者よりはるかに低い。また、年配労働者が社員は努力して徐々に責任ある地位に上っていくものと思っているのに対し、若手はすぐに責任を持って参加することを望んでいる。彼らは決定を下すことを恐れないので、職場に強固な社会的つながりを構築できれば、彼らのネットワーク重視の姿勢をうまく利用することができる。

 これら若手労働者が会社をやめないうちにその力を最大限に引き出すためには、彼らを早々と責任ある役割につける必要がある。また、彼らにとっては組織との関係より自分たちのすぐ上の上司との関係のほうが重要なので、企業は人材流出を防ぐことを、あらゆるレベルのマネジャーにとってより中核的な責任にする必要がある。若手が(教育や旅行や他の仕事のために)会社をやめることを計算に入れて、彼らの復職が双方の利益になる場合には彼らが簡単に復職できるようにしておこう。

(2) 35歳から54歳までの労働者

 この中間グループは反権威主義的で、理想主義的な傾向がある。彼らは意欲的で柔軟性があり、創造力豊かで自尊心が強く、人を重視する。その一方で、リーダー層を信用しておらず、忙しい生活をうまくやりくりしていて、能力給制度や参加型経営を要求する。彼らの仕事を本人にとって充足感のあるものにすれば、彼らはあらゆる努力を惜しまない。しかし、やりがいのある仕事だと思えなければ、彼らは意欲をなくし、成果を挙げなくなる。現に、コンコースの調査では、この年齢層の71%にこうした傾向が見られる。

 これら中間層の労働者、つまり現在の中間管理職は、これまでより長くその役割にとどまらざるをえないかもしれない。彼らの前の世代がこれまでより遅く退職し、おまけに下から上がってくる交代要員がこれまでより少なくなるからだ。しかし、足踏み状態のままだと彼らは組織にとって有害になるおそれがある。

 彼らには新しい任務を与えたり、メンタリングを受けさせたり、後輩に知識を伝える役割につかせたり、さらには社内でキャリア転換を図らせたりして、あらためて意欲を持たせる必要がある。組織の都合で彼らを特定のレベルにとどまらせるのだから、それによって彼らが金銭的不利益をこうむらないよう報酬や諸手当も見直す必要がある。横の異動を昇進より「劣るもの」ではなく経験を広げる機会と位置づけ、それを認知させることが肝要だ。

 停滞感を持つおそれのある中間層の労働者が自分のキャリアについて内密に相談できる相手を持つことは重要であり、ますます多くの企業が社内にそのようなコーチング能力を構築しようとしている。

 ニューヨーク市にあるファミリーズ・アンド・ワーク・インスティテュートのエレン・ガリンスキーによれば、この相手は直に会うことができて、ネットワークづくりや問題解決に長けている人物でなければならない。そのような人物は、社員が組織内で自分では考えたこともないような機会を見つけるのを手助けできるだろう。

(3) 55歳以上の労働者

 コンコースの調査によれば、55歳以上の労働者はまったく別の考え方をしている。彼らは権威を信頼し、ルールを尊重し、組織に対して忠誠心を持っている。権限を与えられる前に「自分の義務を果たす」べきだと考えている。金銭的安定に大きな価値を置き、現代のビジネスに広く見られるあいまいさを不快に思っていることもある。彼らはまた、若手や中間層の労働者より概して高い社会的スキルを持っている。そのため年配労働者は、たとえばコールセンターのような顧客との接触が多い仕事にうってつけのことがある。

 エリクソンとモリソンは、初歩レベルの仕事にも高度なスキルが必要な仕事にも年配労働者を採用し、引き留めておくことを真剣に考えるよう勧めている。採用や能力開発のプロセスにえてして存在する暗黙の年齢のバイアスを見つけ出して除去するとともに、年配労働者の専門技能を活用する役割を新たにつくり出そう。定年退職を人材調整の一方法ではなく人材を手元に残すチャンスととらえよう。たとえば、やめた人々がパートタイムのポジションで戻ってくるのを手助けするリソース・リエントリー(再入社)センターを設けている会社もある。

 若手のマネジャーは、年配労働者が蓄積している専門技能や知識をはっきり認める必要がある。これらの労働者は、とりわけ会社や顧客の来歴という点では、偉大な叡智の源になりうる。年配労働者は技術に熟達していないとか、熟達できないなどと決めつけてはならない。現に、多くの年配労働者がかなりの技術通で、新しいスキルの習得にともなう挑戦を楽しんでいる。

 マネジャーは、若手が年配者を指揮している場合の職場の新しい力学にも気を配る必要がある。南カリフォルニア大学マーシャル・スクール・オブ・ビジネス経営学教授、ウォーレン・ベニスは、年配労働者を管理せねばならない若手マネジャーは、その関係に生じうる問題をよりよく理解する一方法として、自分の父親や母親の上司になるのはどんな感じだろうかと自問したり、自分に指揮されるとしたら自分の両親はどのように感じるだろうかと想像したりする必要があると述べている。

出世を望まない社員の
意欲を高めるには

 会社が将来、より重要な役割についてほしいと期待している労働者の多くがその役割を望まないおそれがある。

 ファミリーズ・アンド・ワーク・インスティテュートの調査では、20代初めから30代半ばまでの大卒労働者の43%しか、より重要なポジションへの昇進を望んでいないという結果が出た。また、子どものいる労働者の77%が、自分を「仕事中心」ではなく「家族中心」、もしくは「仕事も家族も中心」とみなしている。この数字はベビーブーム後の世代で高くなっている。

 この傾向に対しては、より大きな柔軟性を提供する企業が最大の利益を得ることになる。企業は、労働者がキャリアを一時中断して後に復職できるような制度「on-ramps and off-ramps(一時休職制度)」を提供すべきだと、ガリンスキーは言う。また、労働者が高速車線から中、低速車線に移行し、生活パターンが変わったらまた高速車線に戻れるようにする必要がある。

 その際、企業は「柔軟性を行使することによる不利益」を見つけ出して除去しなければならない。柔軟性は職場における意欲と幸福感を高める重要な要因とみなされてきた一方で、ファミリーズ・アンド・ワーク・インスティテュートの調査では、労働者の39%が柔軟性のオプションを行使したら給与や昇進の機会の点で不利になると思っているという結果が出た。組織で長時間労働が「勲章」とみなされているとしたら、柔軟性の施策は成功しない、とガリンスキーは言う。労働時間ではなく結果に対して見返りを与えるべきだと、彼女はアドバイスしている。

 
 
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