特集/「できる上司」入門!
〜「自分を助ける」人事の要諦10〜

[ch.6] 女性の戦力化

任せたら月間売り上げ1億円達成

 
 
梶山寿子 = 文永井 浩 = 撮影石丸千里 = イラストレーション
 
 

平均勤続年数の
男女差はたったの2年弱

 少子高齢化社会の到来や、団塊の世代が大量退職する「2007年問題」を控え、女性社員のさらなる活用に力を入れる企業が増えてきた。

 男女雇用機会均等法の施行から20年。1999年施行の改正法で「ポジティブ・アクション」(女性の能力が発揮できるよう、企業が自主的に支援策を講じること)が盛り込まれたことや、次世代育成法の施行もあって、企業側の取り組みも本格化してきたようだ。

 だが、いくら制度が整っても、職場の意識改革が追いついていない面は否めない。経営層や男性管理職からは「女性社員の意識も高めてほしい」との声も聞かれる。各企業とも実効性のある対策に頭を痛めているようだ。

 たとえばシャープでは、04年10月、人事本部の中に「ポジティブ・アクション推進プロジェクトチーム」を新設。

 05年6月には「女性社員の戦力化プログラム」をスタートさせ、能力や意欲のある女性社員に活躍の場を与えるための取り組みを始めた。「女性管理職を3年間で3倍に増やす」という目標を掲げているが、単に数を増やすのではなく、「公平な評価を通じ、有能な人材を登用したら、女性管理職が3倍になった」という姿を理想としているという。

 だが、残念ながら社内での認知度はいまひとつ。「アンケートを行うと、こうした活動が始まったことを知らない人が何割かいる。全社員の意識を変えるのには、時間がかかりそうです」と、同プロジェクトチームのチーフ、森仁美さんは話す。

「決して女性に対する優遇策ではない、と口を酸っぱくして言っているのですが、依然として『何で女性ばかり……』と不満をもらす男性もいる。それに、女性社員も制度に甘えてはいけない。ツールとしてうまく活用してほしいですね」

 製造業というと「男性社会」のイメージが強いが、同社では、以前から商品開発等で女性の力を生かしてきたという。昭和40年、電子レンジの普及促進のため、「ハイクックレディ」という女性チームを立ち上げたのがその先駆けだ。

 この伝統が受け継がれ、水蒸気で調理する画期的なオーブン「ヘルシオ」でも、商品企画、技術開発、営業、販促と、一貫して女性が重要な役割を果たした。また、保温機能を備えた新発想の冷蔵庫「愛情ホット庫」の技術開発でも、女性が活躍しているという。

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小集団活動の様子。テーマは「自社ブランド意識の強化」。半期に一度、本社で全国大会が開かれ、取り組みの内容、成果が評価される。

 そんな土壌があるからだろうか、同社では女性の平均勤続年数が長い。男性の18.6年に対し女性が16.8年と、男女間にそれほど大きな差がないのだ(昨年9月現在。ちなみに、国税庁発表の04年分、女性の給与所得者、平均勤続年数は9.3年である)。

 また、1年ほど前に行った社内調査では、64%の女性社員が「定年まで仕事を続けたい」と答えたという。

「今、女性が悩むのは、出産・育児と仕事の両立。『この会社で定年まで仕事を続けたい』という女性が多いのだから、より働きやすい環境をつくってあげたい」と森さんは話す。森さん自身、23歳と18歳の息子の母親。女性管理職の草分け的存在で、働きながら子どもを育ててきた。入社以来、デザイナーとしてCIなどを手がけてきたが、その経験を買われプロジェクトチーム発足と同時に異動を命じられたという。

「長男を産んだときは、育児休暇の制度さえなかった。確かにたいへんな時期もありましたが、それでも仕事を続けてこられたのは、職場と上司の理解があったから。女性の活用は、部署によって温度差がある。育児と仕事の両立に理解のある職場を、もっと増やしてゆきたいですね」(森さん)

制度が整っても課題は山積

 女性が長く勤められる環境だと言っても、先の社内調査では、約74%の女性社員が「職場で女性のほうが不利だと思うことがある」と答えている。課題はまだまだ多いようだ。

 客観的に見ても、男女差は目につく。まず男性に比べ女性社員の数が非常に少ない。男性が2万1000人に対して、女性はその10分の一にすぎないのだ。また、管理職(部長、課長職)の数では、男性が3391人に対し女性はわずか21人(全体の0.6%)に留っている。

 そこで、「女性社員の戦力化プログラム」では、07年度末までに女性管理職を60名に増やすべく、候補者の選定やその育成を行っている。

「キャリア採用で実績のある管理職を引っ張ってくるのではなく、社内で育てているため時間がかかる。目指すべきロールモデルがいないのも問題です。候補者には女性管理職のメンターを付けるよう計画中ですが、そもそも現職の数が少なく、マッチングにも苦慮しています」と、森さんは話す。

 能力育成の機会を与えるため、ローテーションを増やしたり、準管理職にあたる主事の比率を、現状の全女性社員の17%強から、3年間で25%にまで引き上げる運動も展開中だ。

 さらに、社内の小集団活動(R-CATS)のリーダーに女性を登用することも推進している。「R-CATS」(Revolution-Creative Action Teams)とは、品質・サービス改善の「QCサークル」から発展した業務効率化のための全社活動。現在、2800のグループが活動しているという。ここでリーダーとしての経験を積むことが、リーダーシップ研修の機能を兼ねるというわけだ。

 営業職や製品の補修にあたるサービス部門など、女性が少ない職域に重点的に人を配したり、育児退職者の「再雇用保障制度」を導入したりと、制度面での後押しは進んでいる。今後は「男性目線で作られていたAV関連の商品でも、女性の発想を生かした商品開発を」と、周囲の期待は高まっている。

女性の強さに支えられるベンチャー

 制度面から女性をサポートする大企業に対し、伸び盛りのベンチャー企業では、性別を問わず、能力とやる気のある人に仕事を任せるというスタンスで、結果的に女性の活躍の場を広げている。

 ネット通販大手のネットプライスは、社員の平均年齢が30歳弱、社長の佐藤輝英氏も31歳という若い企業だ。04年、設立5年目でマザーズに上場。この急成長を支えているのが社員のパワーである。社員が若いこともあって、出産・育児支援といった制度の充実はこれから。個人の頑張りに頼っているのが現状だ。

「出産を控えた女性マネージャーが、『ゴールデンウィークに合わせて子どもを産んで、連休明けから出社して働きます』って言うんですよ。彼女はスーパーウーマン。こういう人がいたおかげで急成長できたのだと、本当に感謝しています」と、同社の池本克之・取締役副社長は話す。40歳で副社長なら他社では若いはずだが、同社にあっては「早くも長老扱い(笑)」だとか。

 池本氏の前歴は、化粧品販売「ドクターシーラボ」の社長。有能な女性スタッフのモチベーションを上げることで業績を拡大し、ジャスダック上場を果たした。

 ネットプライスでも、その手腕を発揮。裏方のアルバイトにも目を配り、能力があると判断すれば、正社員に登用してきた。270人いるスタッフのうち約半分がアルバイトだが、3カ月にひとりぐらいの割合で正社員になる人が出るという。バイトで入り、マネージャー職に昇進した女性もいるそうだ。

 社員の男女比は半々くらい。だが、顧客との接点では女性のコミュニケーション能力が生きる。「特にeメールでの対応は、女性のほうが優れている。文章の裏にある、お客様の隠れた意図を汲む力がありますね」と池本氏は言う。

 女性の活用を意識しているわけではないが、年齢や性別にかかわらず仕事のチャンスが広がる職場環境に、働き甲斐を感じる女性社員は少なくないようだ。

二軸評価がモチベーションを高める

 社員のモチベーションを高めるには、本人の意向を尊重するのがいちばんと、アルバイトも含めた全スタッフに、3カ月に1回、役員が個人面談をするのも興味深い。そこで、業務改善のアイデアを吸い上げるとともに、キャリアアップの要望を聞くのである。

「その他、社内ミーティングに突然割り込んで話を聞いたり、社内をウロウロして片っ端から声をかけることもある。それに下からの提案は常時受け付けます。社長に直接メールを出してもいいし、役員が集まる会議に企画を持ち込むことも歓迎する。アルバイトの方が提案しても、まったく問題はありません」(池本氏)

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 風通しの良い社風や、結果だけでなく“やる気を評価する”文化が、同社の特徴といえるだろう。

「人材は『やる気』と『成果』の二軸で見ているんです。やる気はあるが成果が出ない人は、決して見捨てず徹底的に指導する。やる気がなくて成果が出ない人は論外ですが、やる気がなくて成果が出ている人も問題ですね」と池本氏は言う。

 やる気を評価され、派遣社員から短期間で正社員に登用された石田弥生さん(商品ディビジョン、マーチャンダイザー)は、「『この商品いいねぇ』とか、日常的に周囲が声掛けしてくれる。人間関係はすごくいい」と話す。未経験者に近かった石田さんをマーチャンダイザーという要職に抜擢。商品が売れなかった時期も、会社は彼女を信じて励まし続けた。期待に応え成長した石田さんは、先日、月間売り上げ1億円を達成したという。

 女性社員を生かすといっても方法論はさまざま。たぶん正解はひとつではない。各企業で試行錯誤がこれからも続く。

 
 
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