特集/「売り方、買わせ方」全テクニック
≪PART1「買う側の深層心理を知る」秘訣13≫より
男女の商品選びの違いを
知るにはどうすべきか

- 高島郁夫
Fumio Takashima
バルス代表取締役社長
1956年、福井県生まれ。91年バルス代表取締役就任。同年、天王洲アイルにFrancfran号店を出店。
いまや、日本の消費全体の約8割は女性が占めている(女性が男性に推薦する分も含む)。現在全国に80店舗、香港に2店舗を構えるFrancfranc(フランフラン)をはじめ、BALS TOKYO、AGITO等のホームファニシング(家具や雑貨ほか家庭用品全般)を展開する当社グループにおいても、顧客の男女比率は2対8。その8割を占める女性の購買心理を知る方法をお教えします。
さて、男性が商品を購買する場合、まずその機能を具体的に検証する傾向があります。要望する機能が商品に備わり、納得できる価格であれば、たいがいは購入する。男性はシンプルです。
これに対し、女性は、スペックからは物を買わない。では、何が重要な判断基準になるのかといえば、「それを使っている自分がきれいか」「この商品をプレゼントする自分はかわいいか」といったセルフイメージなのです。
誤解をおそれずにいえば、女性は、事あるごとに「自分は素敵か、かわいいか」確かめている。その自己確認の道具が服であり、バッグであり、インテリアなのです。アロマキャンドルを例にとるなら、キャンドル自体はそれほど好きなわけではない。しかし「このキャンドルを灯しながらお風呂に入っている私って、何ていい女なの」と、そのシーンの中で輝いている自分を想像し、満足するイメージ、これが得られれば即、購入するのです。
作家の中村うさぎさんと対談したときに聞いたのですが、彼女Francfrancでリネンウオーターを見つけ、「私がほしかったのはこれなんだ!」と飛びついた経験があったそうです。リネンウオーターとは、アイロンをかける際に、リネンに香りをつける水なんですが、「これを使ってアイロンかけてる私を想像しただけで、もうゾクゾクしちゃう。男だってそんな私を見たら、絶対に惚れ直すに違いない」。
この発言を検証していくと、「これを手に入れることによって、こんなセンスの良い、素敵な自分が演出される。その姿は男性にも愛されるに違いない」という購買に至る心理プロセスが如実に浮かび上がってくるのです。
カゴを差し出す本当の意味は
「お客様の求めるものは、お客様に聞け」。売り手側がよく口にする言葉ですが、これはウソです。お客様に聞いたところで本当の答えは出てきません。最近のお客様、特に女性が求めているものは具体的な「物」ではなく漠然とした「イメージ」だからです。たとえば「りんごが食べたい」といわれたとしても、実は“りんご”ではなく、アップルジュースやアップルパイが食べたいのかもしれない。「ほしかったのはこれ!」といわしめる「着地点」は、売り手側こそが用意すべきなんです。
女性の消費傾向を知るためには、男女のやりとりも参考になります。
「誕生日に何がほしい?」と女性に尋ね、「バッグかな」という答えが返ってきたとします。さらに「どのブランド?」「エルメスのバーキン」というやりとりの後にバーキンを贈られた場合、サプライズはゼロです。
ところが「バッグ」というワードだけで、エルメスのバーキンをプレゼントする男性にこそ女性は弱い。そこにサプライズがあるからです。
女性心理を掴むため私が実践していることは、頻繁に売り場へ出向き、お客様が手に取るもの、発する言葉を入念にチェックすることです。
「わー見て! これかわいい!」という言葉には、「これをかわいいと思う私ってかわいい?」という意味がある。お客様が物を手に取って、立ち止まっている瞬間、販売員にはさりげなくカゴを差し出すように指導しています。これは売り手側が「ええ、その商品はとてもあなたに似合ってますよ」と保証する意味もあります。おもしろいものでひとつカゴに物を入れてくれたら、あとは2個、3個とお買い上げいただける傾向があります。これが女性心理です。
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