職場の心理学 [131]

「いかにも型」「内秘め型」
タイプ別マネジメント

 
 
あなたの部の業績は、部下のやる気によって大きく左右される。
それでは、部下は、何によってやる気を上げるのだろうか。
1万2000人を調査したところ、「やる気のもと」は11に集約されるという。
 
 
JTBモチベーションズ社長
大塚雅樹 = 文
text by Masaki Otsuka
おおつか・まさき●
明治大学法学部卒業後、JTBに入社し新宿支店に勤務したのち、社内公募で本社市場開発室に異動。ワーク・モチベーションの研究を始め1993年にJTBモチベーションズを設立する。
著書に『明日の出社が楽しくなる本』などがある。http://www.jtbm.co.jp
高橋常政 = イラストレーション
illustration by Tsunemasa Takahashiライヴ・アート = 図版作成
 
 

部下のやる気と11のモチベータ

 あなたは、仕事場で日々観察するなかで、やる気満々に見えてもなぜかなかなか成果があげられない部下と、やる気はそれほど感じられないのに想像以上に高い成果をあげる部下とを比べて、不思議だなぁと首をかしげたことはないだろうか。

 私はこれまで15年近くにわたって人のワーク・モチベーション(仕事をする意欲)をテーマにし、何万人の人々にサーベイした結果を集計してみて、大きく二つのタイプに分けて考えたほうがよいと思っている。それは「いかにもやる気満々に見えて、実際にはそれほどでもない人」と、「やる気を内に秘めていて実際には非常に頑張る人」の二つである。この似て非なる2種類の部下をどのように見分けマネジメントしていくかということが、あなたの部の成果につながっていくと思う。

 そこで、二つのタイプを「いかにも型」と「内秘め型」という名称で呼ぶことにする。

「いかにも型」とはどんな人物だろうか。外見はテキパキとしていて、声が大きく、活発で、常に上司とのコミュニケーションを取る。会議ではよく喋り、自分の存在感をアピールしようとする。スケジュール帳はいつも満杯で、人付き合いもいい。上司や同僚との人間関係を重視する社内志向の持ち主で、物事を表層的に捉える傾向がある。成果に対する意識も、結果重視よりはプロセス重視である。彼の「やる気のもと」は社内の人間関係や自分を評価してほしいという期待感からきている。

photo
(画像クリックで拡大)
図表1〜2

 一方の「内秘め型」は、外見は寡黙で上司とのコミュニケーションは必要最低限しか取らない。会議でも目立たないが、発言するときはポイントをしっかりと述べる。上司に問われれば自分の意見を的確に表現することができるが、社内で仲良しグループをつくるよりも、どちらかというと一匹狼。顧客志向で、じっくりと顧客のことを考える深層思考の持ち主である。プロセスよりも結果を重視し、目標達成のために黙々と頑張る。彼の「やる気のもと」となるのは自己表現や環境適応などである(図表1参照)。

 組織で成果をあげる人の割合を示す「2・6・2理論」で見ていくと、中庸である6割へのマネジメントが重要になる。私が見たところ、その6割を抽出すると日本企業では「いかにも型」が7対3〜6対4の割合で多く、この二つのタイプに大別することができる。上司の役割は部下がどちらのタイプであるのかを見極め、ハイパフォーマーである2割の層に近づけていくマネジメントをすることである。

 ところで、この「やる気のもと」を私は「モチベータ」と呼んでいる。人のやる気がどこから湧いてくるのかについて1万2000人のサンプルを取って分析した結果、11個のモチベータがあることがわかった。どのモチベータに牽引されて仕事をしているのかを判断することが大切で、ここでは、次の9個のモチベータを取り上げる。

(1)適職

 今の仕事が好きで自分に合っているかどうかという「仕事に対する適職感」。「自分は今の仕事がやりたくて好きだ」と思えば、生き生きと楽しく仕事を続けられるので、大きな牽引力となる。逆にこの仕事は自分に合っていない、と不満に感じる場合は、やる気を下げることとなる。

(2)プライベート

 家族や親しい友人から自分の仕事が理解され、仕事以外の生活にも時間を費やしているかどうかで判断する。この場合は、家族にもことあるごとに仕事の話をする。これがモチベータになっている場合は、家族や友人から自分の仕事を応援されていること、私生活が充実していることがやる気を支える。

 逆に不満モチベータになっている場合は、家族や友人の理解がないこと、私生活を楽しめていないことがやる気を失わせることとなる。

(3)自己表現

 仕事における自分の考え、発想、個性の表現ができているか否かが大事である。自分の強みや個性を生かして仕事をしていることを本人が実感できている。不満モチベータとなっている場合は、この職場では自分の考えや発想を生かせていないという気持ちがやる気を阻害する。

(4)環境適応

 仕事や状況の変化に自己を適応させ、困難や障害を乗り越える能力が高い。環境変化に対応し、プレッシャーを乗り越えて仕事に打ち込むことができる。

(5)環境整備

 会社の設備、立地、仕事の手順が明確であるといった職場環境がやる気のもととなる場合。あこがれの場所で仕事ができたり、仕事の手順がきっちりと示されていることが、本人にとって大事である。

(6)人間関係

 職場での人間関係の円滑さや協調感、人との交流が牽引モチベータになっている場合は、人間関係がうまくいくことがやる気を支える。

(7)業務遂行

 職場で仕事をやり遂げることを重視し、目標達成することに生きがいを感じている。逆に、業務遂行を最優先できない、目標を達成していないと感じると、生きがいを失ってしまう。

(8)期待・評価

 職場で上司や周囲から寄せられる期待、信頼、評価が非常に大事に思える。周囲に期待され、評価されることがやる気につながっている。「期待されていない」と感じ始めると、途端にやる気をなくしてしまう。

(9)職務管理

 職務内容への理解度、仕事を進めるうえでの主導権を欲する。主導権を握ることでやる気があがる。反対に、「知識や経験がない」「主導権を持つことができない」ときにやる気を失う。

一人ひとりが違う「やる気のもと」を持っている

 このほかにモチベータとなるものには「報酬」や「昇給」が考えられるが、これらは個人の努力ではどうしようもないのでここでは除外してある。また、かつては「企業へのロイヤルティ」がやる気のもととなるケースがあったが、最近は変貌してほとんどなくなった。一人ひとりのなかで9のモチベータがどのようなウエートを持つのかを考えてみると理解が深まってくる。

「いかにも型」と「内秘め型」が9のモチベータにどの程度関心があるかを調査すると、横軸を関心度、縦軸を満足度とする図表2のようなポートフォリオを描くことができる。ここでは、右上が満足領域(関心が高く、しかも満足できている)、右下が潜在的不満領域(関心が高いにもかかわらず不満)、左上が無関心満足領域(満足していてもそれをはっきりと感じ取れない)、左下が無関心領域(関心を持てない)である。

 このなかで右下にモチベータがある場合が問題で、関心度は高いのに満足度が低いと感じていることになる。つまり、それが本人のモチベーションを阻害する要因となっている。

「いかにも型」を見てみると、人間関係や期待・評価のモチベータは関心度、満足度ともに高いが、プライベートや適職では関心があるのに、あまり満足できていないことがわかる。

「内秘め型」は自己表現や環境適応、適職では非常に高い満足度と関心度があるが、環境整備では満足していない。

 このように部下がどんなことに関心を持ち、何に満足し、満足していないかを考え、阻害要因を取り除くマネジメントをしていくと、本人のやる気を膨らますことができる。

モチベーションは組織の中で伝染する

 上司にありがちなのは、関心がないところを掘り下げて部下を刺激してしまうことだ。もともと関心がないことを突いても、部下のモチベーション向上にはつながらない。

 たとえば、「期待・評価」されるよりも「自己表現」できたほうが奮い立つという部下に、「期待しているよ」と告げてもあまり効果は望めない。それよりも、本人の個性を表現することを優先させたほうが、奮起して成果をあげるだろう。

「いかにも型」の部下は人間関係や期待・評価という外発的なモチベータに支えられている。したがって本人の話をしっかりと受け止め、耳を傾けてあげることで部下は安心できるが、ただ話を聞いてやるだけではハイパフォーマンスをあげる社員に変えるのはむずかしい。

 このタイプには、深く考える習慣をつけさせるために「君はこの件に関してどう思うか?」と常に質問を投げかけるマネジメントが効果がある。会議でも「いかにも型」の部下は威勢よく発言し「ここに落とし込もう」と予定調和型で話を進めていくクセがあるが、その習慣をやめさせ、本人の意見を持たせるように仕向けていこう。表層思考が深層思考へと変わり、それが仕事の成果へとつながるようになる。

「内秘め型」の部下は社内の人間関係よりも顧客を重視することによって、ひとりでコツコツと黙って何でもこなしてしまう。このタイプは、「オイ、普段からもっと俺にも話を聞かせてくれよ」と言ったところで、「いかにも型」のように近寄ってくることはない。そこで「内秘くん、その話はおもしろいじゃないか。そういえばAさんがそういう話を聞きたがっていたから、君からAさんにレクチャーしてあげてくれないかな」と仕向けてみてはどうだろうか。

 こうすることで寡黙な内秘くんはAさんを通して人間関係のモチベータを持つこととなり、行動変化が起こる。内秘くんは「他者に仕事上のいい影響を与えることができた」という満足感と自覚を持ち、モチベーションをさらにあげるはずである。

 上司は、自分対部下という1対1の関係で問題を解決しようとしがちだが、チームを巻き込んだ関係性の中で実体験を積ませると、内に秘めたやる気が同僚たちへ伝染していく。

 このように、部下のモチベーション・スタイルに合ったマネジメントを行えば、周囲の人によい影響を与え、成果を出すようになる。そして、常に新しいことにチャレンジするハイパフォーマー部下が育っていく。

 モチベーションと長年向き合ってきた中で確信することは、自分のモチベーションと対峙することがいかに重要か、ということである。モチベーションは知能指数や性格とは異なり、外的、内的な要因で変化するものだ。つねに意識していれば、モチベーションを高められる。

 やる気のない集団で仕事をしているとやる気が吸い取られる。反対に、モチベーションの高い、元気な集団にいると、やる気が湧いてくる。

 部下の性格を変えることはできないが、モチベーションは高めることができ、そしてそれは伝染する。この原理をうまく活用して部下のモチベーションをあげるサポートができれば、自然と優秀な部下が育ち、あなたの部の業績は必ず上昇するはずである。

(構成/中島 恵)

photo
 
 
PRESIDENT 2005年10.3号
PRESIDENT 2005年10.3号
税込価格 650 円
売り切れ
 
PRESIDENT公式twitterアカウント

メールマガジン <プレジデントニュース>

 
 

「プレジデント」編集部員による取材現場でのこぼれ話やビジネスマンに役立つオリジナルコンテンツ、新刊書籍案内などを、週1回のペースでお送りいたします。

メールマガジン申込・登録変更