優先順位、役割分担、進行プランは事前にしっかり詰めておこう

準備には交渉の
二倍の時間を費やすべし

 
 
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交渉において、「人数が多い」ことは
メリットと考えられている。
しかし、それはチームのメンバーが
互いを理解し合い、情報と意見を
共有しているときに限られる
ということを忘れてはいけない。
 
 
エリザベス・A・マニックス = 文ディプロマット = 翻訳
 
 

「数は力なり」という広く行き渡っている考えからすると、チームの人数が多いことは負担ではなく利点のはずだ。だが、この考えは、チームのメンバーが交渉の準備を十分に行わないという、よくある失敗につながることがある。チームメートの口から出た譲歩や情報を取り消せるものなら取り消したいと、交渉中に思った経験はないだろうか。

 チームで交渉する際に重要なのは、チームが機能するときの仕組みを理解することだ。本稿では、徹底的な準備を行うことでチーム交渉が円滑に進むようにする方法を紹介しよう。

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チーム交渉が最善の策である場合

 交渉の席にチームを同行させることにはいくつかの利点がある。第一に、チームは包括的な解決に至るための新しいチャンスを生み出すことができる。研究者のレイ・トンプソン、エリカ・ピーターソン、スーザン・ブロットは、チーム対チーム、チーム対単独のネゴシエーター、単独対単独という交渉の三つの形態を比較した。そして、少なくとも一方がチームの場合には、単独ネゴシエーター同士の場合より互いに好成果を得られることに気づいた。チームのほうが個人よりも、とりわけ論点や関心事や優先事項に関する議論や情報の共有を促進するのである。

 チームはまた、単独のネゴシエーターより強力で優位に立っていると感じている。コーネル大学ジョンソン経営大学院のキャスリーン・オコーナー教授の研究によると、上司に対して説明責任を負っているときのように大きなプレッシャーがかかっている状況においてさえ、チームネゴシエーターは単独ネゴシエーターほどピリピリしたり重圧を感じたりしないという。人数が多いことで、安心感が生まれるのだ。

 しかし、チームの可能性は十分に活かされないことがある。メンバーの一人が高い分析能力を持ち、別の一人が膨大な専門知識を、もう一人が関係構築能力を持っているとしよう。これらの要素が合わさったら強力なチームになるはずだ。だが、重要な問題──いつ譲歩すべきかという問題など──についてメンバーの意見が食い違っていたら、そのチームはそうした能力を活かせないことになる。

 デボラ・グルーエンフェルド、マーガレット・ニール、キャサリン・フィリップス、それに私を加えた4人の共同研究によると、それまで一緒に活動したことのないメンバーで構成されたチームは、情報を蓄積することができず、問題を解決できないという結果が得られた。それに対し、互いに馴染みのあるメンバーで構成されたチームは、独自の情報を蓄積して、同じ問題を難なく効果的に解決することができる。互いをよく知っていることで、メンバーはさまざまな情報を共有し、解決策を見つけるために必要な、建設的な論争を行うことができるのだ。

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準備を通じてチームワークを高める

 チームが本当に機能する環境をつくるためには、相手側に会う前に十分な準備と調整、それに内部の交渉を行うことが必要だ。

 ロンドン大学経営大学院のランダール・ピーターソン、ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院のクリスティン・ベーファー、それに私の共同研究では、最も適応力のあるチームは、メンバーが徹底的に話し合うことで、チーム内の意見の相違に正面から向き合い、それを解決する効果的な方法を生み出すチームだという結果が出ている。準備を通じて生み出された深い知識は、交渉の席でのより高い柔軟性と創造性につながる場合が多いのである。

 オハイオ州立大学フィッシャー経営大学院のロイ・レビスキー教授によれば、きわめて重要な交渉の場合には、交渉に費やす時間の少なくとも二倍の時間を準備に費やすべきだという。

 新たに結成された交渉チームの準備段階は、(1)内容についての議論、(2)メンバーの能力の見きわめと役割分担、(3)交渉の進め方のプラン、の3要素を含んでいなければならない。

(1)交渉の内容について議論する

 交渉に入る前に、チームは基本的な交渉内容について意見を統一し、完璧な結束をめざさなくてはいけない。こちらの鎧にひび割れの兆候が見えるやいなや、相手はこちらを分断して打ち負かそうとするからだ。

 グループ交渉における準備会議は、その交渉ではどのような問題を話し合うべきかというブレーンストーミングから始めるべきだ。次に、それらの問題に優先順位をつけ、どのようなトレードオフが可能かを検討しよう。

 交渉で話し合うべき問題をパッケージ化するにはどうすればよいか。この段階で、チームのBANTA(交渉で合意に至らない場合の最善の案)、留保点、すなわちどこまでなら決裂より合意を選ぶかという最低ライン、および期待値、すなわち考えられる最高の結果について、チームの意見を一つにまとめる必要がある。チームはこれらの重要な限度を指針にして代替シナリオを見つけ、妥当でない情報はないかチェックして、自分たちの想定が正しいかどうか確かめることができる。

 続いて、交渉相手について考えなくてはいけない。相手が最も重視すると思われる問題を列挙して、相手の優先事項、BANTA、留保点、期待レベルを推測しよう。チームが大きな効果を発揮するのはこの点においてである。メンバーの知識や能力を総動員しよう。次に、まだ知らない情報で、ぜひ知っておきたいものをリストアップしよう。実際の交渉に入る前につかめないものについては交渉を進めるなかで探り出そう。

 最後に、相手に明かしてもよい情報と絶対に明かしてはならない情報についてチームの意見を統一しよう。

(2)能力を見きわめ、役割を分担する

 交渉の内容を決めたら、次はメンバーのさまざまな能力をどのように活かせばよいかを考えよう。交渉に必要な能力としては、交渉の内容に関する専門知識のほかに、相手の話を聞く能力をはじめとする関係構築能力、相手の行動を観察・分析する能力、忍耐力、外国語の能力、演技力(たとえば、いかにも強硬そうに見せるなど)、過去の交渉経験などが挙げられるだろう。

 次のステップはメンバーの能力に合わせて基本的な役割を決めることだ。まずチームリーダー、すなわち最終的な意思決定者を決める必要がある。

 リーダーは必ずではないにしても、たいていチームのチーフネゴシエーターを務めることになる。

(3)交渉プロセスのプランをたてる

 交渉の内容とさまざまな役割は、チームが交渉プロセスの主な要素について決定する第三のステップで合体する。最初のオファーはどのような内容にすべきか。最初の譲歩はいつ行うべきか。譲歩は何度まで行うべきか。チームで交渉するか単独で交渉するかにかかわらず、こうした問いについては事前に答えを出しておく必要がある。

 プロセスの要素にはチームに特有のものもある。休憩もしくは協議である。新しい問題を持ち出すためであれ、「リアリティチェック(現実性の確認)」のためであれ、チーム内の意見の相違を解決するためであれ、チームは相手側から離れるチャンスをうまく利用する必要がある。チーム内に意見の相違がある場合には、必ず休憩時間中に、相手側に聞こえないところで対処しよう。譲歩やトレードオフに関する意見の相違は、最終的にはチームリーダーが決断を下さねばならない。

 戦略的理由から──たとえば交渉を打ち切ることも辞さないという姿勢を伝えるために──協議タイムを要求することもできる。協議はまた、交渉をペースダウンさせることで、双方に別の選択肢を検討して新しいオファーを用意する時間を与えることもできる。協議タイムを要求するために使う合図を事前に決めておこう。メールで合図を送ってもいいだろうし、紙切れにメモを書いて回してもいいだろう。

 交渉内容の分析、賢明な役割分担、交渉の進め方のプランを含む徹底的な準備という戦略に従うことで、あなたのチームは最高の成果を挙げるために必要なコミュニケーション能力や調整能力を獲得できるはずだ。

 
 
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