複雑化した組織には、莫大な「目に見えない」コストが発生している

「組織シンプル化=利益倍増」の法則

 
 
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売り上げを伸ばそうという各部門の熱意が、
実際にはとんでもない額の無駄を
もたらしている場合がある。
得体の知れない「共有コスト」の実態を
解明し、事業をシンプル化することで
この無駄を排除しよう。
 
 
ジェイミー・ボノモ = 文アンディ・パステルナーク = 文ディプロマット = 翻訳
 
 

 今日のマネジャーは成長を生み出さねばならないという強い重圧を感じている。だが、実際に、売り上げを伸ばそうとする熱意が、高い代償をともなう手に負えない複雑さをもたらし、そのため事業を構成する個々の要素がぼやけて全体の収益性が下がることがある。

 たとえば、販売やマーケティングや設計のスタッフは、概して新製品を発売したり、新規顧客を獲得したり、新市場に参入したりすることをめざす。マネジャーは事業全体への累積的な効果を顧慮せず、製品やブランド、販売経路や顧客を一つずつ追加していく。高価な生産資産を活用する必要がある製造部門のスタッフは、新規の大量受注のチャンスに対応可能な計画を立てる。つまり、製造システムや販売システムに無理がかかるほど設備能力をフル稼働させるのだ。

 また、合併や買収は、企業の戦略的ポジションを強化するために行われるのに、往々にして一つにまとめたり簡素化したりしにくい、大きいばかりでバラバラの事業環境を生み出す。

 事業の複雑さが増すと、簡単には発生元を突き止められない会社全体にまたがるコストが生まれる。また、個々の構成要素の利益貢献度が明確に把握できなくなり、何をいくらで誰に売るべきかについて上級マネジャーが正しい決定を下すのが困難になる。

 個々の製品やブランド、販売経路や顧客の実際のコストを詳しく調べよう。そうすれば、全レベルのマネジャーがバリュー・チェーンの各リンクにこうした複雑さが与えている影響を理解し、それを踏まえて戦略を練り直せる。

(1)構成要素別の収益性を分析する

 まず、どこで実際に利益を生み、どこで損をしているのかをより明確に把握することから始めよう。この作業は簡単にはいかないことがある。多面的な組織には得てして、事業や地域にまたがる一貫性のある情報やシステムが欠けているからだ。そうした事業や地域の「共有コスト」──特定の構成要素に直接かかったものとはみなせないコスト──が、全体のコスト構造の大きな割合を占めている。収益性分析は一般に、事業ラインやブランドによって、あるいは製品や顧客によって利益に大きな開きがあることを暴き出す。

 その典型例といえるのは、ある消費財メーカーで、ここでは仮にコンソリデイティッド社(C社)と呼んでおこう。C社のマネジャーは、長年の大口顧客であるマクガフィン社(M社)をその地域の二大重要顧客の一つとみなしていた。

 しかし、C社にとって価格設定は不利だったし、M社への販売にともなう複雑さは、この顧客のために特別に設けられた30近いSKU(在庫管理単位=品目)のせいで目もくらむほどだった。C社はこれらの製品を4工場を使って生産しており、すべての工場の注文を集約するために、もっぱらM社のために「ミキシング・センター」を設けていた。そのコストはM社にかかる経費として計上されておらず、この地域のすべての顧客に割り振られていた。

 M社との取引にかかわる真実原価の影響をフロントエンドの販売からバックエンドの業務まで分析したマネジャーらは、M社が年間500万ドルの売り上げを生んでいるものの、利益を70万ドル引き下げていることを理解した。

 C社のマネジャーたちはM社に状況を説明し、コストを下げ、価値を付加する共通の基盤を見つけようとした。その結果、C社はM社の品目数を60%減らし、一部の製品の価格を引き上げるとともに他の販売条件を改定した。

 C社の状況は、価格設定や個々の構成要素の選定に関する決定は粗利益に基づいてなされるべきではないこと──つまり、インフラは固定費であり、既存の過剰設備は基本的にタダと想定すべきではないこと──を示している。

(2)ブランドや品目を合理化する

 こうした分析によって大多数の「複雑な」企業が、売り上げや粗利益にほとんど貢献しないブランドや品目を多く抱えていることに気づくだろう。

 アメリカのあるコンピュータ・メーカーが行った詳しい分析によると、同社のマネジャーたちに、自社の少量製品の多くは顧客数をわずかしか拡大せず、絶対売上額も粗利益も低く、なおかつ複雑さを大幅に高めていることを示した。実際、彼らは、自社が資産の20%を取るに足らないブランドや製品をサポートするために使っていることに気づいた。このコンピュータ・メーカーは、適切なブランドや品目に的を絞ることで、売上高や販売量をほとんど落とさずにかなりの生産能力を解放することができた。

 これは完全に業務主導の取り組みというわけではなかった。顧客の視点が最重視されたからだ。同社は、心理学や経済学の調査ツールや検査ツールを使った精緻な調査によって幅広い顧客の視点を取り入れ、自社のさまざまなブランドや品目の需要を予測し、顧客がどのようにして、なぜその製品を選ぶのかを突き止めた。このデータを基に、マネジャーたちは自社の選択肢を広い視野でとらえて、生産量の変化と価格やシステム全体の経費とのトレードオフを比較検討することができた。

(3)顧客やネットワークを整理する

「複雑な」企業は低コスト生産設備と高コスト生産設備の比率を改善することもできる。間接費の負担を減らすために一つの顧客との取引を打ち切ったり、縮小したりすることはその第一歩にすぎない。十分な数の顧客について分析・検討することによって、企業は施設を統合して、最もコストの高い生産ラインやサービス・センターを閉鎖することができる。

 そうすればマネジャーは、高コストの顧客と価格を交渉し直したり、パフォーマンスの悪い顧客との取引を打ち切ったりすることがはるかにやりやすくなる。このアプローチによって、企業は収益性を劇的に向上させ、大きな潜在的成長力を持つ収益性の高い顧客に資源を集中させることができる。

(4)このプロセスを長期戦略の一部に

 幹部が自社の戦略的優先課題を打ち出すためには総合的な見方が不可欠だ。C社の事例では、われわれは経営陣と協力して、インタラクティブ戦略モデルと呼ばれる同社のビジネス・モデルの図を作成した。このモデルはバリュー・チェーンの各段階での主要パフォーマンス・ドライバー(業績向上要因)を示し、それからさまざまな活動のシステム全体への影響を市場の観点から評価するものだ。これによってその企業の財務の全体図が与えられるので、経営陣はパフォーマンス・ドライバーについての自分たちの思い込みを正して、最も有利な戦略を選び、組織の目標を設定することができる。

売り上げ中心から
利益重視への第一歩

 収益性を解き放つことは組織のいくつもの部署を巻き込む取り組みだ。販売部門が価格を決定し、マーケティング部門が製品を設計し、業務部門が生産設備を管理するというように、関係するすべての部署がこの取り組みに参加しなければならない。CEOやゼネラル・マネジャーや事業部長は、総合的に見て最善のトレードオフを行う裁定人の役目を果たすことになる。

 この取り組みによって、日常の意思決定プロセスが大きく浮き彫りにされることがある普段の活動では、すべての決定に部署横断的なチームが関与させられるわけではない。実際、すべてそうしていたら、スピードと機敏さが求められるビジネス環境では何も実行できないだろう。

 収益性を解き放つプロセスは二段階でとらえる必要がある。第一に、総合的なパフォーマンスを高めることは、事業を「スッキリさせる」ことをめざす一度かぎりの取り組みだ。それは経営陣の支援のもと、通常とは異なる意思決定プロセスと部署横断的なチームの参加をともなう。第二段階は実行を継続的に改善していくことだ。「一度かぎりの取り組みを完了したことで、われわれは普段の意思決定の仕方について何を学んだか。この学習はわが社の事業に複雑さがしのび込むのを防ぐ──それが無理ならせめて遅らせる──のに役立つか」と、マネジャーは問い続けなければならない。

 売り上げ中心の文化を利益中心の文化に変えるのは簡単な作業ではない。自社のプロセスと測定基準を総合的な見方に基づくものにすることは、よりシンプルで利益を生む企業にするための第一歩にすぎないのである。

 
 
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