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ニュース分析力

情報は相手を想定して「発信志向」で読む

 
 
ブラッドストーン・マネジメント・イニシアティブ・リミテッド代表取締役
ショーンK = 談
SeanK
しょーんけー●
ショーン・マクアードル川上。ニューヨーク出身。ブラッドストーン・マネジメント・イニシアティブ・リミテッド(本社:米デラウェア)代表取締役として、経営コンサルティング、投資ファンド運営を行う。一方でテレビ、ラジオでも活躍。J-WAVE「MAKE IT 21」のナビゲーターを務めている。著書に『成功前夜 21の起業ストーリー』。
久保田正伸 = 構成中村嘉昭 = 撮影
 
 
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日経新聞の記事を自問自答して読む

「政治にまったく関心のない相手に『郵政民営化』の話をして、『政治っておもしろいんだね』と言わせることができますか」

 経営投資コンサルティング会社、ブラッドストーン・マネジメント・イニシアティブ・リミテッド代表取締役のショーンKからの挑戦状だ。いまスキルアップすべきはコミュニケーション能力だという。

「これからのビジネスで重要なのはヒューマンスキル。自分の考えをうまく表現してきちんと相手に伝え、人を動かす能力です」

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 インターネット社会になり、人、情報、技術がどんどんつながっているにもかかわらず、相手の気持ちを慮って発言したり行動することができない人が増えているというのだ。

「勉強するとなると、MBAで学ぶような経営理論など、テクニカルスキル、知識の習得に走る人が非常に多い。しかし、頭でっかちのビジネスおたくになっているだけではないでしょうか。極論をすれば、ヒューマンスキルが高ければ、知識などなくてもカバーできるのです。一人で法律や医学などの専門知識をすべて身につけることは不可能ですが、弁護士や医者の知り合いを持ち、問題に直面したときに『ちょっと教えてよ』と聞くことができることが重要なのです。本を読む前に人と交わり、人間的魅力を鍛えるべきなのです」

 ショーンKが考えるコミュニケーションスキルのポイントは二つある。自分の考えを持つこと、そして、相手の感情を読むことだ。

「初めて会った人にも『こいつ、おもろい奴だな』と思われるようにすることです。そのためには、相手に印象づけられるように自分自身を磨いておくことが大切。『自分はこう思う』というイデオロギーを持っていなくてはなりません」

 相手に迎合するのではなく、自分の意見を述べる。自分と相手の意見がぶつかり合うことで、発展的な人間関係が生まれるというのだ。

「試金石のことを英語ではタッチストーンといいますが、文字通りぶつけることで、金や銀の純度を測るわけです。人間関係でも同じように、自分を相手とぶつけることで、自分や相手の価値がわかるのです。さらに、Aという自分がBという誰かとぶつかって新しいCができるかもしれません。そのためには強烈な自己表現をしなければなりません」

 自分の考えを持つには普段からの訓練が欠かせない。新聞や雑誌などで情報を得るときも、ただ書いてあることを鵜呑みにするのではなく、「アウトプット志向」で読む。

「日経新聞で記事を読んだら、『おまえはどう思うのだ』と自問自答してみます。他人の考えを吸収するだけでなく、評論家になったつもりで自分の頭で考えるのです。たとえば郵政民営化法案が衆議院で可決された。『へぇー』でおしまいにするのではなく、何が問題なのか考えるのです。そもそも郵政民営化とは何なのか。郵貯、簡保、郵便がホールディング・カンパニーになる。まるで、東京三菱とヤマト運輸を一緒にしたような“金融運送会社”が効率的なのか。全国一律のサービスが法律で守られる会社とは、民間企業といえるのか。自分が国会議員だったらどう提案するか。そこまで自分の頭で考えるのです。さらに、5分間スピーチのように、自分の考えを人前で話すトレーニングをしてみる。特定の誰かを想定して、その人に話すつもりで意見をまとめる。発信することを考えながら、情報を頭に入れます」

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電車に乗っている人の人物像を想像してみる

 一方で、相手の感情を読むためには、どうすればよいのだろうか。現在放送中のラジオ番組のパーソナリティを担当したときも、相手の感情を読むことの重要性を実感したという。

「『J-WAVE』という音楽中心のFMラジオ局でビジネスに関するインタビュー番組をやっています。5年前、番組開始時の企画会議で、私が『M&A』ということばを使ったら、ディレクターが『M&Aって何。ミュージック・アンド・アーティストのこと?』と本気で聞いてきたのです。その時、私は『M&Aも知らないのか』と思って、周りを見るとその場にいた人たちはみんな知らないような顔をしていました。ライブドアのおかげで子供までM&Aを語る今とは違い、当時は金融や経営の世界の人間しか使わない言葉でした。ラジオ局の人がそんなビジネス用語を知らないのは当然だったのです。そんな経験もあって、話している相手がどういう人なのか、常に意識するようになりました」

 本業のコンサルティングでクライアント企業の担当者と話す場合にも、相手の立場を考慮する。

「課長さんとお話ししているときに、課長さんと私で問題に対する優先順位が違うと気づくことがよくあります。コンサルタントである私は組織全体のために発言しているのですが、先方は些末なことにこだわっているように思える。その課長さんにとっては、上司である部長が納得するかどうかが一番優先順位が上だったのです。でも、そこで『あなたの考えは間違っている』と言ったら話はおしまいです。理屈で説得しても、相手の心は動きません。相手の立場にならなければ、話はそこから先に進まないのです」

 相手の感情を読む訓練のためにショーンKが日常、行っているのが「一人プロファイリング」である。

「たとえば電車に乗っているときでも、周りの人を観察して、人物像を想像してみるのです。どこに住んでいて、普段どういうところで遊んでいて、どんな友達がいて、友達とは何をやっていて、友達の前ではどういうふうにふるまって、会社にいるときの立ち位置はこうでといったストーリーをつくってみる。これを毎日やることで、常に『この人はどういう人だろう』と考えるクセがついているのです。そんなことやらなくても、人の気持ちを考えているよ、という人でも、それならいまの10倍敏感になったほうがいい」

 ショーンKが、人の感情に敏感なのは、子供時代の経験があるからかもしれない。アメリカで生まれ、日本語がわからないまま九州にやってきた。

「当時の私にとっては最大のチャレンジでした。日本語がよくわからない私は、学校でいじめの格好のターゲットでしたね。そのとき、私は相手のことを知ろうと努力しました。英語で、“He talks, never speaks.”という表現がありますが、『彼はよくしゃべる。でも伝わらない』という意味です。He speaksと言ったら、彼の言うことは伝わっているという意味になります。speakするには、相手をよく知らなければいけない。どう言えば相手は喜ぶかとか、仲間に入れてくれるのか。サバイバルのなかで必死に覚えていったんだと思います」

 以上の二つのスキルを身につけるためには、実際に人と接するなかで鍛えるしかない。そこで、冒頭の郵政民営化の話をうまく話しておもしろがらせるという練習を勧めるのだ。

「相手が政治経済に興味がなければなおいい。『この親父、うざくねぇ?』なんて言われたら失敗です。ただ理路整然と説明すればよいのではないから、これは難しいですよ。相手の感情を読みながら、きちんと伝えられるか。こんなところから始めてみたらいかがでしょうか」

(文中敬称略)

 
 
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