昭和シェル石油が挑む、「新たな創業」への成長戦略

信頼が生み出す
「豊かな社会」創造への連鎖

 
 
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地球と日本の未来を凝視し、
産業を導き、人に寄り添う

石油は、世界を動かす最大のエネ
ルギー源。基幹産業の動力源として、
生活資材の原料として、社会と人間
を支えつづけている。創業105年、
合併20年、つねに業界をリードして
きた昭和シェル石油はいま、新たな
創業を目指して力強く動き始めた。
その狙いはどこにあるのか、より
豊かな未来を紡ぎ出す成長戦略とは
何か。強いリーダーシップで同社を
牽引する昭和シェル石油・新美春之
会長に、国際政治学者として幅広い
活躍をつづける千葉商科大学・宮崎
緑助教授が聞いた。

 
 
昭和シェル石油株式会社 代表取締役会長
新美春之 = 談千葉商科大学 政策情報学部助教授
宮崎 緑 = 談
 
 
石油ビジネスは、いまが転換期 安定を基盤に、未来を創造
宮崎
今年合併20年を迎えられ、新たな創業に向かうと決意を表明していらっしゃいますね。私は当時、石油業界の再編の取材で駆け回っていましたので、この20年間の社会の変化と合わせて非常に感慨深いものがあります。
MIDORI MIYAZAKI
慶應義塾大学大学院修了。NHKのニュース番組「ニュースセンター9時」初の女性ニュースキャスターとして、草分け的な存在。テレビ・新聞・雑誌等でジャーナリストとして活躍する一方、国際政治学者としてアカデミズムの世界でも地歩を固め、東京工業大学講師を経て、2000年から現職。屋久杉の保護等、地球環境問題や教育問題にも造詣が深い。
新美
この20年の変化は急ですが、石油業界自体は1960年代からつねに大きな変化に直面してきました。私が入社した60年頃は、石炭から石油へのエネルギー転換のピーク。メジャーの全盛期で、シェルグループの年間予算は日本の国家予算より大きいと先輩からよく聞かされたものです。それが、オイルショックを経て求心力はOPECへ移り、現在は産油国の国営石油会社・メジャー・消費国の販売会社と機能分担が行われています。さらに大きいのはマーケットの変化で、80年代に入ってからは需要家の要求が強くなり、必ずしも売り手市場ではなくなった。石油の輸入・精製・販売という機能の維持と質が厳しく求められるようになり、経営の質的転換に成功した企業だけが勝ち残れるんです。
宮崎
石油自体の位置づけも変わってきましたね。資源の意味でも地球環境問題でも、どんどん汲み上げてどんどん消費する20世紀型のスタイルからの脱皮が求められている。どのように利用していくのか、新たな知恵が問われていると思うのです。特に日本は大消費国ですから、経済や産業への影響は大きい。その意味での経営責任も重いと思いますが、どのような価値観を主軸に考えていらっしゃるんですか。
新美
日本の石油会社は、石油の安定供給という機能を十全に果たすことで存続を許されています。ですから、マーケットが何を求めているのか、これを経営判断のスタートラインとしています。もちろん利益追求など企業としての目標もありますから、どう調和させるかが第一の課題ですね。二番目は、安定的な供給ソースの確保。これにはどういうパートナーと組むかが重要で、サウジアラビアの国営石油会社サウジ・アラムコ社とのパートナーシップも、新たな原油供給源の確保という意味があります。
「筋肉質」へ変身 新発想で発進する成長戦略
宮崎 業界再編でもそうでしたし、私も愛用しているクレジットカードの導入でも先鞭をつけてこられました。業界のリーダーシップをキチンと果たされてきたと思うのですが、いまなぜ新たな創業を決意されたのですか。
新美 一言で言えば、21世紀にふさわしい成長企業になろうということです。当社は96年に「ジャンプ21」というビジョンを導入し、大胆な改革を行いました。その成果を踏まえての取り組みということです。
「ジャンプ21」の導入当時は、まず構造改革から始めました。成長経済の時代には是であったことでも、安定成長の時代になると矛盾が生じてくるものです。これではいけない。21世紀に飛躍できる強靱な体質の会社になろうと、徹底的にコストダウンを図り、ビジネス・ポートフォリオを厳しく見直しました。多角化で分散していた経営資源をコア事業へと集中。役員は26名から非常勤を入れて九名に削減。財務面も徹底的に見直し、2004年末時点で、昭和シェル石油グループ全体の借入依存度は、30%台まで改善し、非常に健全な財務体質となっています。2000年までに、目標はすべてクリア。狙い通り筋肉質になったわけですから、次は筋肉を使う番。2003年頃から成長を目指した拡大戦略へと切り替えてきました。
宮崎 4年間でそれだけの改革に成功されたのはすごいですね。強いリーダーシップの賜物だと思いますが、ご自分ではどう評価されていますか。
新美 率直に言って、緊縮財政を押し通してきましたから、社内の考え方も縮み志向になった面は否めません。でも、変革は思い切って振り子を振ってやらないといけないんですよ。一度ついた筋肉は、時と所を得れば力を発揮する。昨年頃から成長のための案件が次々と出てき始めています。
宮崎 成長戦略に弾みがつき、いよいよ実行段階ということですね。具体的にはどんな取り組みをなさるんですか。
新美 基本はお客様の信頼を得ることですから、まずコアビジネスに集中し、お客様にご満足いただける高付加価値商品を開発、提供していきます。その好例が清浄性が高く環境にも配慮したハイオクガソリン「シェル ピューラ」です。日本にハイオク市場を拓いた技術力を駆使し、3年かけて開発した製品ですから技術者は自信満々でしたが、私は自分で納得しないと信用しない(笑)。実際、自分で使ってみましたが、確かに効きますね。「シェル ピューラ」の他に、エンジンオイル「シェル ヒリックス」も、F1で培った技術力が生きていると自負しています。
 宮崎さんにも愛用いただいた「Xカード」は、「シェル スターレックス カード」へと進化しています。これは、業界初のキャッシュバック機能を搭載しています。クレジットカードの利用金額に応じてハイオクで最大リッター10円が還元されます。発行枚数、カード稼働率とも業界のトップクラスです。
宮崎 コンビニ併設型などガソリンスタンドの新業態も広がってきましたが、どんな戦略を考えておられますか。私はセルフが苦手なので、その動向も気になるところです。日本のガソリンスタンドはサービスの質も魅力ですし、ユーザーが選ぶポイントでもある。ドライバーとしては期待値が高い(笑)。
新美 セルフに関して言えば、ゆっくり進んでいくでしょうし、フルサービスとの棲み分けになるとみています。私はイギリスで1カ月、ガソリンスタンドのマネージャーをやったことがありますが、日本のサービス水準の方がはるかに高い。日本のお客様のサービスレベルへの評価は多分、世界一厳しいと思います。そうした厳しいお客様に100%満足していただくこと、そしてグループ約4800店のガソリンスタンドとの信頼と連携をさらに深めていくことが当社の目標なんです。
 そのためにも、個々のスタンドの立地や地域特性に合った戦略を推進していきます。郊外の大型店でコンビニ併設が地域の需要に合うのなら、それを進めていく。そうでないところでは、地域のお客様の「こうあったらいいのに」という要望に応える仕組みをつくる。お客様を待つのではなく、こちらからお届けするサービスを実現していきます。
コアビジネスから周辺事業へ 成長戦略を加速
宮崎
お客様のところへ届けるサービスというのは新発想ですね。この7月にスタートされるガス事業への進出も「届ける」という視点で考えられているのでしょうか。私は今後、各家庭でエネルギーをつくるライフスタイルが出てくるのではないかとみています。その意味でも、エネルギー会社が個人の生活に視点を置き、どう関わっていくのか大いに関心があります。
HARUYUKI NIIMI
1936年生まれ。学習院大学経済学部3年終了後、ワシントン大学経済学部卒。60年1月、シェル石油入社。リテール部門販売促進部長、新規事業開発室長、営業企画部長等を経て84年常務取締役。85年、合併に伴い昭和シェル石油常務取締役に。副社長、会長兼社長等経て2003年3月から現職。経団連環境安全委員会共同委員長としても活躍中。
新美
経営からみれば成長戦略への布石、事業の拡大という意味ももちろんあります。石油販売会社への資本参加による販売網の強化、今回の若松ガスの買収と一連の戦略を進めてきたのも、コアビジネスとその周辺事業への投資により規模の拡大を図り、成長を加速するということです。と同時に、石油・LPガス・都市ガスと、多様なエネルギー源を用意して、個々のお客様のご要望に応えていきたい。家庭のニーズは、自動車や暖房だけに限りません。ガーデニングやセキュリティなど多数ありますから、そこにソリューションを提供していきたい。ご家庭にサービスを届けるには、信頼されるブランドでないと扉は開けてもらえませんが、幸い当社はご信頼いただいている。この信頼をさらに強めていきたいと思っています。具体的にはすでにホームソリューション部を創設済みで、5年間の実行計画を策定。そのためにいま何をするのかキチンと逆算し、確実に実行していきます。
宮崎
ひとりひとりのお客様を見つめ、生活の身近なところで寄り添いながら進化していく。コーポレートメッセージの「ずっと走ろう。シェルと走ろう。」は、そんな思いが込められているんですね。英語のキャッチフレーズが流行るなかであえて日本語になさったのも、そうした理由からですか。
新美
社内の若い人たちの発案ですが、私も日本語に適切な言葉がある限りなるべく横文字は使わない方がいいと思っています。例えば、海外から見たら日本の特約店システムは非科学的で非合理的に見えますが、実はそうではない。ウインドーショッピングの客にお辞儀をしてくれるような国は他にないし、安ければいい・質が良ければいいだけではいかない難しさがあります。昔、シェル的なものを闇雲に排除しようとした時期がありましたが、それは間違っていた。シェルをそのままもってきても、シェルなしでも、当社は成功しなかったと思う。日本の文化に合わせたハイブリッド経営が大事なんです。
宮崎
それがお客様の信頼の獲得につながる。地球規模で世界を見てこられたから言えることでしょうね。
新美
国際会議でもシェルの連中は、私をグループの一員としてみますから正直なことを言いますね。グローバルな企業であっても日本の看板を背負っていると、多少は配慮した発言をしますから本音は分からない。そういう意味では、非常に良かったと思いますね。ただし、シェルグループ内で発言力を増すためには当社がしっかりしていないといけない。赤字では相手にされない(笑)。
営業はサイエンス 勝利への決め手は、人材の育成力
宮崎
あらためてお話を伺ってきて、経営者として大変な決断力と実行力をおもちだと感じました。成功の秘訣を、ご自分ではどう分析されていますか。
新美
どのような経営者が望ましいかは、会社がおかれた状況によって決まってくるものです。私は会社が大変革するときに、たまたま選ばれた。過去には巨大な為替差損もありましたし、企業が生きるか死ぬかの時期には、私のようなラディカルな人間がいいということでしょうね。
宮崎
危険物処理班のような(笑)。
新美
私自身が危険物ですから(笑)。私は11人兄弟で、男七人の五番目なんです。責任のある立場でないから自由に行動し、兄弟間のサバイバルにも勝ってきた(笑)。実家は山奥の材木屋で、製材工場の人やトラックの運転手さんたちと家族同然に暮らしていた。組織のなかで生きるということが自然に身についているのかもしれませんね。
宮崎
モノカルチャーではなく、異文化のなかで相互理解をして自分のポジションを見つけていくというのが国際人の第一歩。それが子どもの頃から自然に身についていらっしゃるんですね。アメリカの大学で学ばれた経験も、経営力に役立っておられたのでは?
新美
私は高校時代から自炊生活でしたが、やはりどこかに人に頼る気持ちが強かったと思います。それがアメリカへ行ってからは、誰も頼る人がいない。自分で頑張るしかありません。でも、不思議なことに、頑張れば周りが自然にサポートしてくれるんです。
ずっと走ろう。シェルと走ろう。
シェル ヒリックス
「シェル ヒリックス」
F1レースなどで培った技術を結集したエンジンオイル。高温、高回転、高負荷に強く、さらに優れた高酸化安定性、耐摩耗性、油膜保持性などのあらゆる要求に対応。一般乗用車からスポーツカーまで、グレード別にラインアップされ、ハイオクガソリン「シェル ピューラ」とともに、車と環境にやさしいエンジンオイルだ。
シェル スターレックス カード
「シェル スターレックス カード」
業界初のガソリン代のキャッシュバックコース、またはポイントと商品を交換するコースがついたクレジットカード。日本全国の昭和シェル石油系列のシェル スターレックス カード加盟SSとVISA、NICOS加盟店で利用できる。
宮崎
80年代に日本バッシングがありましたが、バブル後はパッシングになり、いまはナッシング。将来を考えると、これでは非常に不安に思います。この状況を変えていくのは、新美会長のように、自立して頑張れる人が増えていかないといけない。そのための人材育成であり、教育だと思うんですね。
新美
日本は世界第2位の経済力をもっている国ですからね。それが不当に低く見られているということに鈍感で、何とも思っていない人が多いということが問題なんです。企業もそうです。企業は人なりとよく言いますが、言うだけではダメで、具体的なアクションが必要なんです。私は、課長職にあたるチームリーダーになるぐらいまでは、自分中心でいいと思っている。そして、チームリーダーになったときには、チームメンバーや会社全体のことを自然に考えるようになっている。そういう人が育つ環境、コーポレート・カルチャーをぜひつくりたいですね。
宮崎
まず「俺が・俺が」でいいから自分を確立していく。その上で進化していくということですね。会長ご自身もそういうふうに育たれた?(笑)
新美
シェルグループには、後輩を育てるというカルチャーがある。私も若い頃には、上司や先輩に育てられましたし、「教育者としては素晴らしいけど、ビジネスリーダーとしては参考になりません」と、24、5歳の若造が、役員に平気で言える風土がありましたね。司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』を読む会などもあり、そこで学んだことも大きかった。いまは世の中が忙しすぎて、そういう迂遠な人材育成ができにくいのは非常に残念です。『坂の上の雲』で学んだのは、専門家は専門家の枠にはまってなかなか新しい発想ができないこと、限られた戦力は一点集中しないと勝てないということです。ビジネスも同じで、資金・人材・努力を選び抜いたところに集中することは、いまに至るまでずっと実行しています。私は営業部門が長かったのですが、よく「営業は対人関係」とか「説明しがたいところに極意がある」というでしょう。でも、私はそうは思わない。営業は99%サイエンス。そして、勝負は残りの1%で決まるんです。
宮崎
教育現場を見て強く思うのは、子どもたちに正しい善悪の判断を教える人がいないということです。ケンカがあれば両成敗にし、明らかに是非があるときでも、責任をとらないことが諸悪の根源だと思います。
新美
長期的にみれば国も企業経営も、人材育成が一番大切。人を裁くのは難しいことですが、判断間違いは承知の上で、黒白をハッキリ言う。そういう人材育成を実行していきます。
宮崎
成果に期待しています。
お問い合わせ先 昭和シェル石油株式会社 http://www.showa-shell.co.jp
 
 
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