多くの「業務革新」が頓挫してしまうのには理由があった

業務革新成功の秘訣は
「完璧より70%」主義

 
 
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どんなに成功を収めた手法でも、
10年一日のごとく同じことを
繰り返しているようでは未来がない。
賢明な経営陣はそのことに気づいているのに、
「業務革新」が掛け声倒れに終わるケースが
後を絶たないのはなぜなのか。
 
 
マイケル・ハマー = 文
text by Michael Hammerディプロマット = 翻訳
 
 

アメリカ最大のトラック会社の挑戦

 業務革新は難しいことで知られている。基幹的な業務プロセスを遂行する新しい方法を開発し、実行することの効果は議論の余地がない。それは事実上あらゆる産業の一流企業で成功への跳躍台になってきた。だが、多くの企業が、業務革新の効果を挙げる取り組みに失敗してきた。成功の秘訣は何なのか。ウィスコンシン州の運送・物流会社、シュナイダー・ナショナルの経験は、業務革新を成功させる方法について実地の教訓を与えてくれる。

 1935年創業のこの非公開会社は長年にわたって成長を続け、90年代後半には総積載量でアメリカ最大のトラック運送会社となり、ウォルマート、ジョージア・パシフィックなどの顧客にサービスを提供していた。年間売上高は30億ドル弱、従業員数は2万人超に達し、同社のオレンジ色のトラクターやトレーラーはアメリカのハイウエーではお馴染みになっていた。

 しかし、2000年には、同社の成長は横ばいになり、生産性は下がり、資本利益率も落ち込んだ。従来どおりのことを拡大する戦略こそが、同社を窮地に追いやった要因だった。トラック運送業のような競争の激しい産業では、競争相手より優れたサービスを顧客に提供していくことが成功へのカギだと経営陣は判断した。顧客満足度に関する目標が高めに設定され、顧客の見積もり依頼に対して見積書を作成・提出する業務を改善するプロジェクトが開始された。見積書作成の新しい方法を開発するために、きわめて有能な社員を集めたチームが結成された。彼らは数々のすばらしいアイデアを生み出し、新規業務獲得のチャンスについてかなりの期待が持たれた。だが、この取り組みの最終的成果はゼロだった。何の改革もなされず、今までどおりのやり方が続いたのである。

 だが、シュナイダーのリーダーたちはそれで諦めたりせず、別の方法でこの取り組みを再開し、今度は驚異的な成功を収めた。顧客の見積もり依頼に応じるのにかかる時間は、かつては30〜45日だったが、それが1〜2日に短縮された。こうした成果はプロジェクトが開始されてから9カ月足らずで表れ、2年以内に完全に実現された。競争相手よりはるかに迅速に顧客の要請に応えることで、シュナイダーは競争優位を得た。結果、同社の落札率は約70%アップし、年間売上高は数億ドル増加した。皮肉なことに、一度目のプロジェクトで開発されていたアイデアの多くが、新しいシステムであらためて活かされることになった。

 最初の取り組みと二度目の取り組みの間には、失敗と成功を分かつ違いがあった。次に記す6つの重要な要因が成否を分けたのだ。

(1)プロセスに焦点をあてる

 二度目の取り組みは、「企業プロセス・モデル」──価値を創造する一連のプロセスという観点から企業の業務をまとめたもの──を作成することから始まった。シュナイダーのモデルは、輸送ソリューションの開発、新規業務の獲得、輸送注文の獲得、積荷の運送、積荷運送能力の提供という5つのプロセスで構成されていた。これら少数のプロセスに、シュナイダーの数千人の従業員が行っている事実上すべての仕事が含まれていた。シュナイダーは、新規業務獲得プロセスを定義し、その境界を明確にし、その測定基準を定め、それを改善対象とすることによって、解決すべき問題を正しく浮かび上がらせることに成功した。

 ほとんどの企業が業務革新の範囲を狭く絞りすぎ、そのため漸進的な改善しか達成できていない。

(2)プロセス・オーナー

 大きな成果を挙げるためには、組織のいくつもの部門で改革が必要になる。だが、各部門──およびそのマネジャー──には、それぞれの課題や目標、測定基準があるため、大きな改革をめざす活動は、概してさまざまな縄張り意識や惰性、抵抗といった障害にぶつかることになる。プロセス・オーナーとは、そのプロセスに必要な改革を企業全体に実行させる権限を持つ上級幹部のことだ。シュナイダーは自社のプロセスのそれぞれにプロセス・オーナーを任命し、新規業務獲得のプロセス・オーナーが中心となって、販売チャンスを獲得する新しい方法の開発と実行を進めていった。

(3)フルタイムの設計チーム

 一度目には、新しいプロセスの開発に関わっていた人たち自身がパートタイム・ベースでこの活動を行っており、概して週に8時間足らずしかこの活動に従事していなかった。二度目には、このプロジェクトが彼らの唯一の仕事になった。プロセス再設計のチームにパートタイム・ベースで任命されたのでは、いらいらが募る。時間のやりくりが大変だし、チームのメンバーの正規の仕事で緊急事態が発生することも避けられない。また、限られた資源しか投入されないとなると、組織は経営陣の真剣さを疑うことになりがちだ。シュナイダーはプロセスの再設計を真剣なプロジェクトとして扱い、チーム・メンバーの教育に投資して彼らにきちんとした方法論を持たせ、プログラム開発室で彼らをバックアップした。ほとんどのチーム・メンバーが15カ月から2年にわたり、このプロジェクトに留まった。

(4)経営陣の関与

 すばらしいアイデアも、それを実現に導くための組織的な枠組みがなければ実行されない。シュナイダーは設計チームの改革案を単なるレポートや調査で終わらせないために、いくつかのグループをつくった。

 第一に、トップ・リーダーがこの取り組みに積極的に関与し、毎月、会議を開いて進捗状況をチェックするとともに、きわめて重要な問題の解決にあたった。第二に、プロセス・オーナーたちと他の少数の業務マネジャーで構成されるプロセス評議会が結成された。このグループは、改善案を戦略に結びつけ、先頭に立って業務改革を進めることで業務パフォーマンスを向上させる責任を負った。第三に、新規業務獲得プロセスに関係するさまざまな部署の部長を集めたチームを結成し、このチームが新しいプロセス設計の実行を主導した。これはとくに重要で難しい役目であり、部長たちには、自分の部の関心事だけにとらわれるのではなくプロセス全体のより大きな目標に焦点をあてることが求められた。

(5)現場を参加させる

 業務革新の真価が問われるのは現場である。現場の社員は、自分たちの日々の仕事の内容や、やり方を変えるよう求められることになる。多くの社員にとって、これは難しく、ときには苦痛にさえ感じられる経験であり、社員は、それを逃れるためにあらゆる種類の言い訳を見つけるだろう。そうした変化を社員にいきなり要求したのでは、失敗は目に見えている。また、会社の財務目標が云々という説明をするだけでは、彼らが新しいやり方に適応する助けにはならない。シュナイダーは賢明にも、再設計の取り組みの最初から一貫して現場を参加させた。新しいプロセスの開発中に1000人の社員にそれを体験させて、自分たちは被害者ではなく参加者であるという感覚を持たせ、彼らが従来のやり方の欠点と新しいやり方の効果の双方を認識できるようにした。

(6)行動重視

 完璧な新しいやり方を設計しようとする企業は、たいてい何もできずに終わる。アイデアをいじくり回し、手直ししている間に改革のはずみが失われ、生み出されるソリューションは仰々しすぎてとうてい実行できないものになる。シュナイダーは賢明にもこの落とし穴を避けて、「70%で実行」という原則を採用した。このアプローチはコンセプトをテストすることを可能にし、改革のはずみや経営陣の姿勢に対する信頼を高め、早期に効果を挙げることで批判を黙らせ、疑いを吹き払ってくれる。

 改革後の新規業務獲得プロセスは、さまざまな点で従来のものとは異なっている。しかし、この新しいプロセスは、けっして業務革新の最終ゴールではない。同社では、さらに効率的に顧客をサポートできるよう、技術の進歩を活用した、さらに新しい設計を生み出すための新たなプロジェクトが開始されている。

 
 

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