老舗メーカー・ポッカコーポレーションの挑む「コーヒー進化論第二弾」

「もっとおいしいコーヒー」を求めて
いま、缶コーヒーに革命を起こす

 
 
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事業改革を推進し続ける
内藤由治社長の
ブランディングにかける情熱

2004年秋、「焙りたて・挽きたて・淹れ
たて」の缶コーヒーを実現、「元気」を
印象づけたポッカコーポレーションが、
再び本領を発揮した。「コーヒー進化論
第二弾」は、誰もなしえなかった「香り」
の革命。世界に先駆けて本格缶コーヒー
を開拓、圧倒的な技術力で市場を開いて
きたパイオニア企業は、いま何を目指す
のか。「効率より進化」の経営決断は、
なぜ可能なのか。強力なリーダーシップ
と行動力で進化を牽引し続ける内藤由治
社長が明らかにする。
 
 
株式会社ポッカ コーポレーション 代表取締役社長
内藤由治 = 談
 
 

淹れたての香りを徹底追求
新テイスト・新容器が
コーヒー文化の未来を示す

 この春、缶コーヒーの概念を変えるといってもいい新商品がデビューする。淹れたての香りにとことんこだわったという、ポッカコーポレーションの「香りを飲むコーヒー ポッカコーヒーアロマックス」である。

 広口の蓋というその外観からして違いが際立っている。蓋を捻ると、小気味よい音がしてスッと香りが押し寄せてくる。口をつけると香りはいっそう芳醇に広がり、缶の内面の白色が透き通るコーヒーの味わいを深めてくれる。飲み終わって感じるのは、おいしさと満足感だ。開発をリードした内藤由治社長はこう言う。

「視覚・嗅覚・味覚など五感で楽しめるコーヒーが、アロマックスです。だから、『感コーヒー』(笑)。洒落のようですが、本質をついていると自負しています」

 だが、なぜ香りなのか。

 それは、「追い求め続けてきた答えだったから」と明快に言い切る。

「淹れたてのコーヒーのおいしさは、コーヒー好きなら誰でも知っています。あのおいしさをどうしたら缶コーヒーで実現できるんだろう。レギュラーコーヒーと缶コーヒーの差を縮められるのかとずっと考え続け、たどりついたのが香りでした。淹れたてのコーヒーから立ち上る、あの香りです。実は、香りは、製造工程で熱をかけると飛んでしまう。ハードルの高さは知っていましたが、ポッカの使命はおいしいコーヒーを進化させること。不可能を可能にしてみせると決めたんです」

 ポッカは1972年、世界初の本格缶コーヒーを発売、いまや9000億円規模に成長した巨大市場を切り開いたパイオニア企業である。その挑戦のDNAは、社員の胸にも生きていた。さらに缶コーヒーを進化させ続けてきた、膨大な技術の蓄積がある。既存の抽出技術が応用できるのではと、ヒントが見つかるまでには、そう時間はかからなかった。しかし、相手は、目に見えず、しかも足の速い香りである。手が届きそうで届かない、もどかしい日が続いていた。

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通常コーヒーの「香り成分」は、抽出時に失われてしまう。しかし、この「フレッシュナチュラルアロマ製法」では、事前に焙煎豆から香りだけを直接回収し、それを抽出液に還元することに成功した。この製法によって生み出された「ポッカコーヒーアロマックス」(右)では、その香りを生かすために独特の広口蓋が採用されている。

「そんなある日、研究所へ行ったら技術者が透明な容器に入った水を差し出すのです。ただの水だろうにヘンだなと思いながらキャップをねじったとたん、香りがファッと広がった。一瞬驚き、次に胸が熱くなりました」

 抽出時に発生する香りの成分を集め、水滴に閉じ込める「フレッシュナチュラルアロマ製法」の誕生である。ウイスキーの蒸溜方法に似た独創技術が、不可能を可能にしたのだった。

 だが、内藤社長はまだ満足しなかった。従来のプルトップ型の容器では、飲み口が狭いため香りが立つおいしさを十分味わうことができない。せっかくの技術を生かせない。香りを感じる鼻、見て味わう目、舌と喉で感じる味覚のすべてで楽しめるものにしよう。こうして新容器の投入が決断されたのだった。

「理想の缶に行き着くまで、かなりの年月がかかりました。昨年秋、缶コーヒー市場に小口径のリシール缶が出てきましたが、当社はあえて採用しなかった。香りもおいしいコーヒーのためには、あの口径では不十分。当社の求める基準に達していないと判断したからです」

 量産のための生産設備にも着手した。「コーヒー戦争」といわれるように、缶コーヒー市場はライバルがひしめく激戦区。新たな設備投資はリスクを伴う決断だが、内藤社長にまったく迷いはなかったという。

「おいしいコーヒーを追求した結果、コーヒー豆の選定から焙煎、粉砕、抽出といった全工程を自社工場での一貫生産にしたのが、ポッカです。おいしさの実現に妥協は不要。最後の一滴にまで責任をもちます」

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※ブラックは近日発売予定。

「アロマックス」は、缶コーヒー市場を変えるパワーを秘めていると、内藤社長は見ている。「蓋」による飲み方の変化と、ユーザーの広がりがそれだ。9000億円市場の缶コーヒーだが、実はこれまでユーザーの8割は男性で占められていた。ところが、リシール缶コーヒーの登場により、女性ユーザーの比率が上昇しはじめたのである。「アロマックス」なら、文字通りカップで飲む感覚。女性ファンはさらに増えるに違いない。そして、内藤社長は、さらにその先に思いを馳せる。

「缶コーヒー党はレギュラーコーヒーを飲まない、レギュラー派は缶コーヒーを敬遠する、というのがこれまでのコーヒー市場のあり方でした。レギュラーコーヒーに限りなく近い本格缶コーヒーなら境界線を突破できる。『アロマックス』は、その最初のステップになると期待しています」

 4月26日に発売されるアロマックス。みずみずしい新緑とともに、コーヒーの新たな進化がスタートする。

「アロマックス」を可能にした
原点回帰・構造改革・リーダーシップが
DNAに火をつけた

「アロマックス」の背面には、「進化論第二弾」と、小さな文字が記されている。まったく新しいコンセプトのコーヒーなのに「第二弾」なのは、理由あってのこと。本格缶コーヒーをさらにおいしく進化させる、という決意を明らかにした第二弾だからである。

 第一弾は、昨年秋誕生し、コーヒー党の注目を集めた新商品「ポッカコーヒーオネスティ」である。むろん、進化に終わりはない。「第三弾・第四弾も開発中。コーヒーファンを驚かせます」と、内藤社長は自信をのぞかせる。

 画期的な新製品を矢継ぎ早に市場に送り出す、圧倒的な開発力とスピードを引き出したのが、内藤社長の群を抜くリーダーシップと行動力である。例えば、内藤社長は3カ月に一度は各工場を、月に2回は研究所を訪れる。生産現場ではみんなで決めた「約束ごと」の進捗状況を見守るため、開発現場ではさまざまな開発テーマの現状を把握するためである。

 もともと社長室におさまっているのは大キライな行動派だが、一部上場企業のトップとしては異色の存在だろう。内藤社長はこの現場めぐりを、すでに3年間も続けている。

「社長になって3年目、構造改革の次の手を模索していたとき、社長ならもっと現場を見ろと、ある先輩に諭されたんです。実践してよく分かりました。企業改革の成否は、トップの責任。変えるんだという強い意思が、企業の底力を引き出すんです」

 1998年、トップの座についた内藤社長が、伝統ある老舗メーカーに大胆なメスを入れたのは、「まどろみがちな活火山にさらに火をつけたい」という思いからだった。

 72年、世界初の本格缶コーヒー発売に続いて、73年には世界初のホット/コールド自販機を開発、85年には均一な焙煎でコーヒー豆の味と香りを際立たせる「セラミック遠赤外線焙煎法」を開発と、同社はつねに先陣を切って市場をリードしてきた。だが、その勢いは、いつの間にか鈍化しつつあった。

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内藤由治(ないとう・よしはる)
1946年愛知県生まれ。70年名古屋大学法学部卒業後、ソニー入社。フランス駐在などを経て、86年にポッカコーポレーション入社。92年取締役就任。98年に社長就任。夢は、ミラノの「バール」で飲むカプチーノを缶コーヒーで提供すること。

「顔缶」の愛称で親しまれてきたロングセラーの缶コーヒーと業界トップのレモン飲料等で経営基盤は安泰だが、それに満足していたら肝心の「噴火力」が落ちてしまうと、先を見ての改革だった。

「ポッカには、"コーヒーではポッカだけ"という独自の製造技術がたくさんあります。コツコツと積み重ねてきた技術力と豊富なノウハウ、真面目一途な社風に瞬発力と冒険心が加われば、さらにおいしいものができる。まずは、本格コーヒーという創業の原点に回帰しようと決めました」

 目標は明確だった。焙りたて・挽きたて・淹れたてのレギュラーコーヒーのおいしさ、がそれ。揺るぎのない信念が、揺るぎのない製品へと結実していった。

「キッチンで淹れた、そのままをつくろうと、檄を飛ばしました。加工が不可欠の缶コーヒーと鮮度とが矛盾するのは承知の上です。でも、社員はみんな、よく頑張ってくれました。優れたDNAの力を再認識しましたね」

 こうして誕生したのが、缶コーヒーに鮮度という概念を初めて導入した「焙りたて・挽きたて・淹れたて」の缶コーヒー、「ポッカコーヒーオネスティ」だったのである。

「鮮度を追求するあまり、ここでも新製法を開発してしまいました(笑)。でもポッカは、おいしい一滴のためにすべてを注ぐ。おいしいコーヒーを進化させ続けてこそ、ポッカなんです」

アイスコーヒーもポッカが起源
「効率より進化」の強い意思と心に届く
セグメント戦略で「ナンバーワン」を狙う

 あまり知られていないことだが、暑い季節に欠かせない飲み物、アイスコーヒーも、実はポッカがルーツである。

 日本初の缶入りアイスコーヒーが発売されたのは1976年。以来、同社は市場を創造するとともに、さまざまな容器・温度帯での展開を実践、日本独自のアイスコーヒー文化を支えてきたのである。

 内藤社長率いるポッカが、もう一つの「進化論」として、アイスコーヒーの新開発に乗り出したのも、当然といえるだろう。

「缶コーヒーの進化を考えるなかで、アイスコーヒーも進化すべきだと考えるようになりました。コーヒーの質感への好みが、インスタントからレギュラーへ、レギュラーからエスプレッソ系へと変化している一方で、家族構成は変わり、コーヒーを飲む場面も変わっている。変化がくっきり見える現在が好機だと思いました」

 レギュラーコーヒーよりも量が飲まれるアイスコーヒーは、これまでペットボトルが売れ筋だった。しかし、例えば夫婦や恋人同士の大人の食卓に、ペットボトルは不似合いである。生活の楽しみを広げてくれる、スタイリッシュかつ本格テイストのアイスコーヒーをつくろうと、内藤社長は考えたのだった。

 ポッカのアイスコーヒー「カフェグラスコ」の容器に、アルミ缶というアイデアも実は内藤社長である。

「ホテル内のある店で、500ミリリットル入りのボトル缶を見たとき、これだとひらめきました。アルミ缶はコーヒー成分に合わないとされてきましたが、当社の技術陣がクリアするだろうと、独り決めした(笑)。実際、コーティング剤の新開発で解決しました。610ミリリットルという容量も、もちろん理由あってのことです」

 610ミリリットルとは、氷を入れたグラスにちょうど4杯分の容量。2人の食卓にピッタリのサイズである。極端に高い価格設定が不可能なソフト飲料市場で、アルミ缶容器・610ミリリットルでは原価比率が高くなってしまう。だが、内藤社長の選択は、「効率より進化」。「オネスティ」や「アロマックス」同様、おいしいコーヒーを進化させることこそ、ポッカの使命だと確信しているからだ。

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シアトル系カフェの濃さ、コクを実現したアイスコーヒー「カフェ グラスコ」。氷を入れたグラスに注いで飲んでも、薄さを感じることがない。すっきり・甘さ控えめの「微糖」(左)、さっぱり・酸味の少ない「無糖」(右)の2タイプがある。

「もっと言えば、進化させ続けることです。例えば、お年寄りが好む味と若者が好きな味は違うでしょう。あるゾーンにだけ愛されるコーヒーがあってもいい。ポッカは、これからもおいしさを次々に進化させ、それぞれの市場でナンバーワンを狙います」

 一杯のコーヒーに、その一滴に、本物のおいしさを追い求め続けるポッカの熱い思いが込められている。だから、「コーヒー進化論」に終わりはない。たとえ、どんなに市場を席巻したとしても、ポッカは永遠のチャレンジャーであり続けるに違いない。

 ポッカが策定した2004年度からの中期経営計画では、「飲料事業のみに依存せず、食品事業や外食事業など非飲料事業の比率を高めたい」という成長戦略が描かれている。しかし、コーヒー飲料事業はまぎれもなく同社の利益の源泉であり、中核事業として持続的成長が表明されている。

 コーヒー飲料はパワーマーケティングがひしめき合い、飲料市場のなかでもとりわけ競争が激しいカテゴリーである。そんななか、従来の缶コーヒーを超えた新しいセグメントを提案し、パワーマーケティングから脱却できる可能性を秘めたポッカの戦略が注目される。

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●お問い合わせ先/
株式会社 ポッカコーポレーション
お客様相談室 052-932-3778 http://www.pokka.co.jp
 
 
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