マイクロソフト元COOが直伝!「分散化を避け、配置転換を頻繁に」
組織にはびこる
「縄張り」解体の必勝法
組織内の「縄張り」を放置すれば、新しいアイデアは抑制され、
業務の重複や分断が起こり、組織を内側から腐らせる。
リーダーは、縄張り解体のために迅速かつ断固たる措置をとらねばならない。
縄張りは人間の根深い欲求――自分の仕事にとって不名誉になる情報を抑え込みたい、自分の運命を自分で決定したい、組織にとって重要な存在とみなされたいといった欲求――に基づくもので、あらゆるタイプの組織で生まれてくる。また、個人、チーム、部署、部門、子会社など、企業のあらゆるレベルで出現する。そして、深刻な害を与えるのである。
縄張りは、ひとつには創造性を抑えつける。縄張りを支配している人々は自分の立場を維持するために新しいアイデアを撥ねつけるからだ。それに加えて、縄張りは会社が定めたものとは相容れないプロセス(たとえば、別個の財務報告手順)を設けることによって混乱を引き起こす。
縄張りの支配者が、自分をよく見せようとして自分の担当分野で起きていることについて慎重に選び抜いた情報しか表に出さない場合には、混乱はさらにひどくなる。最後に、縄張りは組織の中の本当に資源を必要としているところから大切な資源を奪い取る。しかも、放っておいたら会社全体を崩壊させることさえある。
リーダーは縄張りを解体するために迅速かつ断固たる措置をとる必要がある。自分のテリトリーを潰そうとする動きにはほとんどの縄張りの支配者が抵抗するだろうが、幹部やマネジャーが決意と規律をもって臨めば、縄張りは首尾よく解体できる。
あなたの会社にはびこっている縄張りをもっとも効果的に打ち砕くにはどうすればよいのだろう。マイクロソフトの元COOで、『The Fiefdom Synd-rome(縄張り症候群)』(Currency/Doubleday, 2004)の著者、ボブ・ハーボルドによれば、あなたはきわどいバランスをとる必要がある。つまり、組織全体に規律を取り戻し、その一方で縄張り内の住人の間に、問題を解決し顧客を満足させるための独創的なアイデアを生み出す能力と意欲を呼び覚まさなければならないのだ。
縄張りを潰す方程式の規律については、ハーボルドはプロセス・行動・人材に関する特定の慣行を奨励している。これらの慣行は、あなたの会社で起きていることを会社全体に見えるようにし、諸手順の管理を一カ所に集中させ、職場の人間関係に刺激を与えることを目的としている。全体的な目標は、会社全体にまたがるプロセスや組織構造に規律を取り戻すことだ。
以下に、ハーボルドが最も重要とみなしている規律を挙げてみよう。
●プロセスに関する規律
全社的なプロセスをすっきりさせ、会社に関するデータに社内の誰もがアクセスできるようにする。会社の財務実績や社員のパフォーマンスなどに関するデータに社内の誰もが簡単にアクセスでき、すんなり理解できるよう、報告システムを簡素化しよう。
たとえば、パフォーマンス評価フォームでは規格化された測定尺度を用いる。また、報告書の数を、必要な情報を伝えるために欠かせない最小限の数に抑えよう。「マイクロソフトには12の図表しかなかったが、それで会社の財務実績に関するあらゆる疑問の98%に答えていた」とハーボルドは言う。
●行動に関する規律
これは一言でいえば、分散化を避ける、ということだ。情報技術、人的資源、調達、広報など、全社共通のサービスを提供する部署が組織内で重複しないようにしよう。ハーボルドが指摘するように、どの事業部門もできるだけ独立して活動できるよう、えてして自前の部署をつくろうとする。そのような分散化はコストを増大させ、いくつもの重複を生み出すことになる。
それをはっきり把握するために、たとえば調達が組織全体に分散していたらどうなるかを検討してみよう。ハーボルドは、業績が好調で財務的に安定しているある企業で起きたことを紹介している。大手のベンダーがその企業の本社に、おたくの会社は「倒産」しそうになっているにちがいないという手紙を送った。そのベンダーへの支払いが6カ月間も滞っていたからだ。なぜこのような混乱が起きたのか。その会社では、どのグループでも好きなときに好きなベンダーに連絡するだけで必要な資源を調達することができた。しかも、継続的に調達と支払いを処理する中央のシステムを設けてはいなかったのである。
●人材に関する規律
配置転換は、積極的に行おう。そもそも縄張りができないようにするために、また形をとり始めた縄張りを解体するために、チームや部署、または部門の人材を入れ替えよう。ハーボルドが述べているように、社員が組織内の一カ所に何年もとどまっていると、会社はその社員の異動を渋るようになる。他の部署に移ったほうがよりよい貢献ができると思われる場合でさえ、なかなか異動させようとしないのだ。
縄張りは長年そこにいるメンバーの専門知識や年功をベースにして生まれてくる。その結果はというと、チャンスは失われ、アプローチは時代遅れになる。縄張りの住人のスキルや覇気が低下するからだ。
こうした展開を避けるために、優秀な社員にはさまざまな職務を転々とさせて、多様な経験を積ませるべきだとハーボルドは述べている。
社員の創造性を
呼び覚ますためには
縄張りを解体するためには、組織全体に規律を取り戻すだけでなく、社員の創造的思考も呼び覚まさなければならない。「上司を満足させる方法を見つけることや社内での自分の立場を守ることにではなく、顧客を満足させるための優れたアイデアの考案に時間を使ってほしいと、あなたは社員に望んでいるはずだ」とハーボルドは言う。
特定のグループの担当分野を定期的に入れ替えて、馴染みのない製品分野やサービス分野を担当させることは、創造的思考を刺激する一つの方法だ。「一つのビジネス分野での深い経験がはなはだ過大評価されている」と、ハーボルドは主張する。「優秀な人間はたいてい3、4カ月もあれば自分の責務を把握して、斬新で優れたアイデアを生み出すようになる。『ここに来たばかりのころと同じことをずっとやっていたのではいけないのだ』というメッセージを伝えることが重要だ」。
創造的思考を伸ばすもう一つの方法は、優れたアイデアが実行までにくぐり抜けなくてはならない「何層もの英知」を取り除くことだ。「社員の上司、その上司の上司、そのまた上の上司等々が、どのアイデアも自分の承認を得なければならないと言い張る場合、彼らはそのアイデアをいじり回して、すっかり変えてしまう」と、ハーボルドは言う。これではそのアイデアを考え出した人物の創造性は叩き潰される。
優れたアイデアに「何層もの英知」をくぐり抜けさせるのではなく、「上司は手助けするためにそこにいるのだということを社員に理解させよう」と、ハーボルドは助言する。たとえば、次のように語りかけてみよう。「私はここにいるから、君のアイデアに私が何か付け加えることができると判断した場合には会いにきなさい。君のアイデアに関して決断を下すのは私ではなく、君なのだ。アイデアを実行した結果を私に持ってきてくれ。そうすれば、それがどの程度うまくいったかを一緒に検討することができる」.ハーボルドはさらにこう述べている。「自分のまわりをうろついている人間がいないということがわかっていたら、社員はよりすばらしく、完璧な仕事をするものだ」。
もちろん、自分のアイデアを実行した社員が必ずしもよい結果を生み出すとはかぎらない。しかし、社員が上司のところに結果を持っていったら、両者はどこに問題があったのかを論じ合うことができる。上司はたとえば、「この経験から君は何を学んだかね」と尋ねてもいいだろう。マネジャーがこのアプローチを用いる場合、社員の学習曲線はそうでない場合よりはるかに急上昇すると、ハーボルドは言う。
組織の営みでは、人はともすると縄張りをつくってそこを支配しようとする。だが、組織の規律と個々人の創造性のバランスをとりながら、生まれたての縄張りや確立された縄張りを組織的に解体することで、リーダーは縄張りが引き起こす惨事を未然に防ぐことができる。
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