肥大化、硬直化など組織を不健全にする要素はいかに取り除くか

「タイプ別」問題組織の
健康診断と処方箋

 
 
photo
事業の成長と、ビジネス環境の変化に伴い、
組織は多くの問題に直面する。
放っておけば組織はどんどん不健全な
状態に陥るが、それを防ぐことは可能だ。
まずは問題を分析し、問題に合った
解決手法の組み合わせを考えよう。
 
 
ローレン・ケラー・ジョンソン = 文
text by Lauren Keller Johnsonディプロマット = 翻訳
 
 

 あなたはしばらく前から気づいている。自分が率いている会社や部門が以前ほどうまくいっていないということに。

 表れている症状が何であれ、あなたは組織を健全な軌道に戻さなければならない。それも早急に。そのプロセスがどれほど大変そうに見えようと、リーダーはパフォーマンスの悪い会社や部門を立て直すことができると専門家は言う。どうすればできるのか。まず次のガイドラインから出発しよう。

企業が進化の過程でよく遭遇するいくつかの機能不全のタイプを理解しよう。

あなたの会社の機能不全のタイプを診断しよう。

あなたの会社の、より健全なあり方を思い描こう。

その理想的な状態を実現するために、組織構造やインセンティブなどの手段をうまく利用しよう。

機能不全を認識し
そのタイプを診断する

 企業──あるいは部門や部署──は、進化していくなかで、成長や変化に絡んだ問題に直面する。意思決定に介入するマネジメント層が増えたことで、形式に縛られ、反応が鈍くなり、政治的な動きが多くなりすぎる企業もある。規模が拡大したために分権化を余儀なくされ、調整メカニズムがないまま職能横断的な組織やプロセスを持ち込んで混乱を招く企業もある。弾力性、適応力、集中といった健全な属性に代わって、停滞や混乱や消極性がはびこるようになる。健全さと機能不全のこれらのパターンは明確に識別できるので、ブーズ・アレン・ハミルトンのコンサルタント、ゲーリー・ニールソン、ブルース・パステルナック、デシオ・メンデスの3人は、それらに名前をつけている──レジリエント(柔軟)型、ジャストインタイム型、軍隊型(上記3つが健全)、パッシブ・アグレッシブ(受動攻撃)型、フィット・アンド・スタート(行きあたりばったり)型、過剰成長型、管理過剰型(上記4つが不健全)。

 機能不全のタイプを表すのにどんな言葉が用いられようと、立て直しのためにはリーダーが自社の問題を正しく診断することが不可欠だ。「さまざまなタイプの機能不全の簡単な説明を読むだけで、幹部やマネジャーが『これこそわが社の問題だ』と断定できることがある」とニールソンは言う。診断ツールも助けになることがある。たとえばブーズ・アレン・ハミルトンは、企業の状態について「パッシブ・アグレッシブ」、「管理過剰」、「過剰成長」等々(健全、不健全にかかわらず)のいずれのタイプかを診断するオンライン調査システムを開発している。この調査を受けるには、www.orgdna.com にアクセスしてアンケートに記入するだけでよい。

 だが、自分の会社の機能不全をどう診断しようと、社内の他のグループは会社の健全さについてまったく異なる見解を持っている可能性があることを忘れてはならない。そうした認識の違いを放置しておくと、組織が問題を突き止め、それに取り組む妨げになることがある。

より健全な状態を思い描く

 組織の機能不全がいくつかの形態をとりうるように、健全さの表れ方も一つではない。ニールソン、パステルナック、メンデスによれば、「レジリエント」型──ビジネス戦略に沿っていながら、その一方で市場の変化を予測し、変化を先取りしながらそれに迅速に適応する──は、通常は企業にとって理想的な状態だ。しかし、企業が現在直面している課題のために、あるいはその業界の性質から、別の理想的な組織タイプが必要になることもある。ブーズ・アレンのコンサルタントたちはその例として、ニュージャージー州テターボロの医療検査会社、クエスト・ダイアグノスティックスのケースを挙げる。クエスト・ダイアグノスティックスが1990年代後半に赤字を出し始め、虚偽広告などの不正行為で罰金を科せられたとき、同社のCEOは抜本的な改革しか会社を救う道はないと判断した。新しい理想の状態を築くために、彼は一連の改革を行って同社を軍隊型の組織──意思決定の権限が少数の幹部チームに集中していることが特徴──につくり替えた。ニールソンが指摘しているように、「小売業など、外部で多くの決定をさせるのが無理な産業は、軍隊タイプの組織にすればうまくいくことが多い」。

理想の状態へ組織をどう導くか

 理想を決めたら、次はどうやってそれを実現するかだ。リーダーは次のような手法をうまく使うべきだと、ブーズ・アレンのコンサルタントたちは言う。

意思決定権…誰が何を決定するか。

情報の流れ…パフォーマンスを測定するために使われる基準。知識を伝えるため、活動を調整するため、また期待を知らせるために使われる手段。

モチベーションを掻き立てる手段…インセンティブ、報酬、機会。

組織構造…マネジメント層。顧客、製品、もしくは地域を軸に構成された部門。指揮命令系統。

 企業の規模やマネジャーのレベルがどうあれ、また、マネジャーがまずどの手法から始めるかにかかわらず、これらのどの線に沿った変革も、大きな全体的影響を及ぼすことができる。アメリカのある大手消費者サービス会社のリーダーたちが、芳しくない財務パフォーマンスを持続的な高パフォーマンスに変貌させるための5カ年計画で、複数のインセンティブと機会をうまく組み合わせた例を、ニールソンは紹介する。「この活動の焦点は社員の意識を変えることにあった。自分を特定の部門の一員とみなすところから、会社全体にとって何が最善かを第一に考えるレベルまでもっていくことにあった」とニールソンは言う。そのために、この会社のリーダーたちは、全社員が会社のパフォーマンスに応じてボーナスを受け取るプロフィット・シェアリング・プログラムを構築した。また、営業部門と業務部門のマネジャーを対象に、成長とコスト効率の両方を追求させる報奨金も導入した。

 ヴァーモント州サウス・バーリントンのピッツァガッリ・コンストラクションは、さまざまなモチベーション手段によって、多岐にわたる成長を遂げながら弾力性を維持してきた。共同会長のアンジェロ・ピッツァガッリによれば、99年に設けられた社員持ち株制度は、社員の離職率を引き下げ、勤続年数を伸ばしている。「最初、転職志向の強かった多くの社員は、自分たちが本当に会社のオーナーになれるとは信じていなかった。今では彼らはこの会社でずっと働きたいと望んでおり、多くの社員が友人にわが社に入るよう勧めている」。同社はまた、目標を高く設定し、能力を伸ばす機会を与えることで、自己満足を芽のうちに摘みとっている。

 セキュアワークスの場合は、組織構造と情報の流れを変えることがカギだった。CEOのコートはこう説明する。「年に10回は顧客に『接する』というコミットメントは、わが社の最重要目標『顧客維持率90%』を直接、支えるものだ。成長するにつれて、このコミットメントを果たすことは難しくなったが、より一層、重要にもなった。われわれは誰か一人の人間がこの目標を『自分の仕事にする』ことが必要だと気づいた」。そこで同社は、顧客関係担当副社長のポストを新設し、顧客関係管理システムを構築して全社員に利用を義務づけた。その結果、2002年から04年の間に、セキュアワークスの顧客基盤は8倍に拡大し、売り上げはほぼ20倍に増えた。

 リーダーは、会社のライフサイクルの時期によって用いる手段を変えることもできる。たとえば、クエスト・ダイアグノスティックスでは、変革を導き、一連の買収を指揮するために、幹部たちはまず決定権を中央に集中させた。変革が進むにつれて、現場スタッフに権限を委譲することで、徐々に決定権を分散させていった。それ以降は、弾力性を維持するために、情報の流れなど別の手法を用いてきた。今日、クエスト・ダイアグノスティックスはアメリカの医療検査市場のトップを走っており、03年には41億ドルの売り上げで3億2200万ドルの収益をあげている。

 
 

おすすめコンテンツ

 
 
  1. プレジデント
    「コミュニケーションはコスト」の大勘違い
    「時間がない」「決まってから伝えればよい」は甘い
  2. プレジデント
    顧客満足度を知る 「ただ一つの質問」とは
    意外!顧客満足度調査の結果は業績に関係がない
  3. プレジデント
    望むものを手に入れる「提案型面接」のコツ
    「昇進したい」「異動したい」と言うだけでなく、解決策を提示しよう
  4. プレジデント
    優秀な社員の「忠誠心」を 高める四つの仕掛け
    報酬を上げるだけでは、優秀な社員を引き止めることはできない
  5. プレジデント
    社内団結力を引き出す インナーブランディング
  6. プレジデント
    「やる気メルトダウン」を防ぐ 上司の行動習慣
    部下の士気を萎えさせないために上司ができることとは
 
 
PRESIDENT公式twitterアカウント

メールマガジン <プレジデントニュース>

 
 

「プレジデント」編集部員による取材現場でのこぼれ話やビジネスマンに役立つオリジナルコンテンツ、新刊書籍案内などを、週1回のペースでお送りいたします。

メールマガジン申込・登録変更