特集/「365日」の達人

「私の手帳の使いこなし方」すべて教えます

西村 晃式
時間のムダを省く「ポスト・イット」情報整理術

 
 
単なる付箋紙をビジネスツールにまで高めたことで知られるのが西村晃さんだ。
ひらめきをつかみとるツールとしても「ポスト・イット」は大活躍している。
 
 
西村 晃 = 談
Akira Nisimura
にしむら・あきら●
経済評論家。1956年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。NHK、テレビ東京を経て、96年独立。小売り流通、マーケティングを専門に、テレビ、ラジオ出演、執筆のほか、国内だけで年300回の講演を行っている。
中村尚樹 = 構成芳地博之 = 撮影
 
 

「仕事」をすべて書き出す

 私は、A5判のビジネス手帳、それに貼ったりはがしたりできる粘着タイプの付箋紙「ポスト・イット」を使い、スケジュールや情報のすべてを管理している。

photo

 一口にスケジュールといっても、スケジュールには時間と場所が決まっているものと、決まっていないものの2種類がある。前者は相手との約束があるなどして、どうしてもそのときに、その場所に行かなくてはならないものだ。このような、すでに決定している予定は、手帳の左ページにある今週のスケジュール欄に、移動時間や移動方法も含めて直接書き込んでいく。この部分に関していえば、通常の使い方と変わらない。

 ここで大切なのは後者の、時間と場所が決まっていない作業をいかに効率よくこなすかである。そこで登場するのが「ポスト・イット」だ。まず、やらなければならない仕事を細かなものまで、1項目につき1枚ずつ、「ポスト・イット」にメモしていく。「○○さんに電話」「レジュメ作成」など時間が特定されていない仕事から、「JRのチケット購入」「○○ホテルの予約」などいわゆる雑用と呼ばれるものも含めてすべて書き出す。

「ポスト・イット」に書くのは、やるべき仕事だけではない。誰しも、何らかの刺激で仕事のアイデアがひらめいたのに、次の瞬間には忘れてしまったという経験があるはずだ。アイデアというのは、いつどこでひらめくかわからない。しかも電車の中であるとか、歩いている最中にひらめくことも少なくない。

 そのようなときに、手帳やノートをいちいち取り出してそれをメモすることは面倒だ。このようにしてほとんどの人は、せっかくのひらめきを忘れてしまう。だが、人生の成功と失敗は、そうしたひらめき、つまりアイデアを活かすことができるかどうかにかかっている。

 私の場合、駅で見た広告や面白そうな美術展、さらには電車の中で耳に入ってきた女子高生の会話や街角で思いついたことなど、興味を感じたことやひらめいたことは何でも「ポスト・イット」にメモするようにしている。

「並べ替え」で優先順を確認

 書き集めた「ポスト・イット」は、手帳の右ページのメモ欄に貼り付けていく。まず、今週の用件は今週のページに、来週以降の用件はそれぞれ該当する週のページに貼っていく。その際、効率よく仕事をこなすために大切なのは、優先順位が一目でわかるようにすることである。

 具体的には、右ページの右の列に「今週中にやればよいもの」、左の列には「今日中にやらなければならないもの」を貼る。さらにそれぞれの列は、上から優先順位が高い順とする。このようにすれば、仕事の優先順位が一目瞭然である。

photo
時間と場所が決まっているものはスケジュール欄に書き、そうでないものは右ページのメモ欄に2列に分けて「ポスト・イット」を貼る。このとき右の列には「今週中」に処理しなくてはならない仕事を、左の列には「今日中」に処理しなくてはならない仕事を貼る。また、そのときどきで変わる優先順位の高い順に並べることもポイント。

 私がA5判というやや大型の手帳を使っているのは、それが「ポスト・イット」を右ページにちょうど2列貼ることができる大きさだからだ。左ページのスケジュール欄にも、暫定的に何枚かを貼る場合がある。それは「緊急に処理しなければならないもの」である。

 もちろん、すべてが予定通りにいくわけではない。ホテルで待ち合わせをしたが、たまたま15分早く着いて、相手がまだ来ていないときもある。このようなときには手帳をぱっと開き、たとえ優先順位が後ろのほうの用事であっても、いま、その場所でできること、たとえば「○○さんに電話」があれば、その用事を先に済ませてしまう。こうすることで、時間をムダなく使うこともできる。

 ひとつの作業が終わったら、その「ポスト・イット」は捨てていく。私は電車やタクシーでの移動時には必ず手帳を開いて作業の進捗状況を確認し、作業の優先順位を並び替える癖がついている。その日の終わりには、翌日に備えて、明日の予定を左側の欄に張り替える。

 1週間が終わったとき、残った「ポスト・イット」があれば、それがその週にやり残した仕事である。それらのなかには「やっぱりやらなくていい」「もう必要なくなった」というものもあれば、「そろそろ片づけておこう」というものもある。それぞれをチェックし、次の週に申し送るのが日曜日の夜の仕事である。

「『ついでに』をシステム化」する

 手帳の余白欄には「行きたいところリスト」というページを確保している。たとえば雑誌を読んで「新しいテーマパーク」「面白い企業」などの記事が目に留まったとする。しかし場所が遠ければ、忙しい時間を割いてまで行くことはできない。普通であれば、それであきらめたり、忘れたりするだろう。そうした場所をいったん、手帳のこのページに「ポスト・イット」でリスト化しておく。

 後日、出張の予定が入り、「行きたいところリスト」のなかに、ついでに立ち寄ることができそうな場所があれば、リストからその「ポスト・イット」を外して、出張する週のページに貼り直す。

「ついで」という言葉の裏には、ニュアンスとして偶然性がある。それをいかに必然に置き換えていくかが、時間という限られた資源を有効に活用するポイントである。私はそれを「『ついでに』のシステム化」と呼んでいる。これによって手帳は、時間をつくり出すツールともなる。

 時間をつくり出すためのもうひとつのポイントは公私混同の原則だ。お金の公私混同は困るが、時間の公私混同はどんどん行うべきである。そのため、「ポスト・イット」には、たとえばプライベートで観る「映画のチケットをとる」というものもあってよい。このように、9時から5時までの8時間を会社に売り渡したという発想ではなく、あくまで自分のための24時間のなかで、会社の仕事も処理するという発想が重要だ。

余白欄活用で「情報」を一元化

 私の使っている手帳には60ページの余白欄がある。そこに、自分にとって必要ないくつかのキーワードを見出しのように書き、そのページにも「ポスト・イット」を貼り付けている。私は流通関係を主に取材しているので、キーワードには「アメリカ流通」だとか「ショッピングセンター」というものがある。そのほかに「不良債権」「中国」「年金」「構造改革」など、そのときどきで気になるキーワードのページもつくってある。

photo
気づいたことは何でも「ポスト・イット」にメモする。

 それらのキーワードごとに、メモを書き込んだ「ポスト・イット」を貼り付けておき、取材や講演、本の執筆に活用している。私の場合、この手帳さえあれば、すべての用は足りてしまう。いくら立派なファイルをつくったとしても、見る暇がなければ何の役にも立たない。情報は一元化して、常に携帯するに限る。

 また、毎年手帳を替えるたびに書き写さなくてはならない住所などの情報も、私は書き直したことがない。同じ「ポスト・イット」を使い回しているからだ。毎年行うルーティンの事柄に関しても同様だ。たとえば来年の手帳の11月の欄には「年賀状1200枚」と、今年使った「ポスト・イット」がすでに貼ってある。そうすると来年、年賀状を買うときには、「去年は何枚送っただろうか」と考える必要がなくなる。毎年のことなのだから、申し送っておけばいいわけだ。

「『ポスト・イット』は色分けして使わないのですか」と聞かれることがある。重要なことはピンク、プライベートはブルーといった使い分けである。しかし私のように1日平均100以上も使っていると、用事ごとに色を分けるのは、それだけで手間である。いつも黄色の1種類だけだから、迷わず簡単にメモできるのだ。私が使っている黄色にはコピーしても色が写らないというメリットもある。シンプル・イズ・ベストである。

 
 
PRESIDENT 2005年1.17号
PRESIDENT 2005年1.17号
税込価格 550 円
売り切れ
 
PRESIDENT公式twitterアカウント

メールマガジン <プレジデントニュース>

 
 

「プレジデント」編集部員による取材現場でのこぼれ話やビジネスマンに役立つオリジナルコンテンツ、新刊書籍案内などを、週1回のペースでお送りいたします。

メールマガジン申込・登録変更