最終回

これでも「郵政民営化」に
反対しますか

 
 
経済財政政策・ 郵政民営化担当大臣
竹中平蔵 = 談
たけなか・へいぞう●
1951年、和歌山県生まれ。73年、一橋大学経済学部卒業。大阪大学助教授、ハーバード大学客員准教授、米国国際経済研究所客員フェローなどを経て、慶應義塾大学総合政策学部教授に。2001年4月26日より、経済財政政策担当大臣に就任。02年9月の内閣改造で金融担当大臣を兼務。04年7月、参議院議員に当選。9月の内閣改造で現職に。
岡倉禎志 = 撮影
 
 
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反対論に立ち向かうこれだけの論拠

 このたび、郵政民営化担当大臣を兼任することになった。郵政民営化についての議論は出尽くした感もあり、さまざまな意見が飛び交っている。中には、それが国民にとってそれほど重大事なのかという意見もある。

 ある新聞社のアンケート調査では、「あなたは次の問題の中でどれが一番重要な問題だと思いますか」と、政府が抱える5つぐらいの課題を挙げた。その答えは「年金」と「景気」に集中し、郵政民営化を挙げる人は2%にすぎなかった。

 だが、同じ調査で外交も憲法も一桁の数字しか得られていないのである。一番の関心事を1つだけと言われれば、切実な問題を挙げるのが当然だ。外交、憲法を重要な問題と思っていないのかと聞かれて「思っていない」と答える国民はいないだろう。

 郵政民営化についても同様である。「郵政民営化に関心がありますか」という問いを発すれば、国民の3分の2が「関心あり」と答えるだろう。そして、「賛成ですか」と尋ねれば、半分以上の人が賛成と答えたという報告もある。つまり、国民は、郵政民営化を時代の流れと捉え、重要な問題と認識していると私は思っている。

 こうした認識のもとで、改めて「何のために」という基本命題に戻ってみよう。私にとって、その答えはきわめて単純明快である。一言で言えば、「民間でできることは民間で」ということだ。

 民間でできることは民間に任せ、効率化を図らないと、厳しい競争社会を生きぬけないというのが、資本主義社会の原則であり、日本が拠って立つ基盤になっているのである。

 それでは、そうした基盤に立ったとき、なぜ郵政事業は民間でできるという認識が生まれたのだろうか。

 郵政というものをよく見てみると、4つの異質な事業を同時に成り立たせている、非常に特殊な組織であることがわかる。

 4つとは、郵便事業という「物流業」、郵便貯金という「金融業」、簡易保険という「保険業」、そして、最後は、これら3つのものを売る「窓口業」である。とりわけ、4つめは、主に3つのものしか売らない特殊なコンビニと考えられる。

 これらの4つの事業をそれぞれ分けて考えると、民間ですでに行われている事業と何ら変わりがなくなるではないかと私たちは考えた。だから、郵政民営化は、「民間でできることは民間で」という、政府および日本の体制に見事に合致しているのである。

 もちろん、民営化によって生まれてくるさまざまな負の可能性から、これを批判する意見もある。それを大きく分けると2つの意見に集約される。

 1つは、民営化することで、地方の郵便局がなくなってしまうのではないかという懸念である。もう1つは、郵政がますます肥大化して民業を圧迫してしまうという、正反対の批判意見だ。

 これら2つの意見に対する答えは1つである。弱くても、強くても困るというのであれば、弱すぎず強すぎない制度を設計構築すればいいではないか。つまり、こういう懸念があるから、民営化はやめようというような後ろ向きの姿勢からは、何も生み出すことができないのである。

 きちんとした制度設計をすれば、郵政民営化は、国民に次のようなメリットをもたらすはずだ。

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国民にもたらす4つのメリット

[1]350兆円が民間のものになる

 いま、郵政は、郵貯を240兆円持っている。これは、日本のメガバンクの合計よりも多い。そして簡保は、最大の日本生命の3倍規模だ。両方あわせると350兆円である。いま国のものになっているこの巨大な資産が民間のものになるということの意味は大きい。

[2]2万4000のコンビニチェーン

 主に三つの商品に限定されている郵便局という名前のコンビニがある。それが民営化され、民間と同じ競争レベルに立つと、多くの商品を扱うようになったり長時間営業が可能になったりする。それだけ国民の利便性は増すだろう。

[3]公務員が減る

 公務員として日本郵政公社で働いている人員は現在28万人だ。この28万人が公務員でなくなるわけだから、「公務員を減らして小さな政府に」という基本姿勢に一致する。

[4]国の財政に貢献する

 よく、郵政は国鉄とちがって、税投入をしていないから、民営化の必要がないという意見を聞く。しかし、たとえば、郵政は税金も預金保険料も払っていない。

 つまり、国民は見えない形で税負担をしていることになる。それが民営になれば、これらの支払い義務が生じる。結果として、日本の財政に貢献することになるだろう。

 郵政の基本方針は、9月10日に閣議決定した。この基本方針を踏まえて制度設計し、来年の通常国会で成立させたいと思っている。

 ここでもう1つ重要なことは、さきほど触れた郵政の持つ資産と、財政の関連性だ。郵政の資産が国のものである限り、それは特別な資産として安全性が重要視され、政府の財投債や国債を買うという形で運用されてきた。それが結果として、日本財政の競争力の弱さになっている。

 そうした側面を全廃することはできないにしても、民営化された郵政に債券を買ってもらうためには、それだけきちんとした財政運営をしなければならなくなる。そういう意味で、双方ともに建設的な緊張感を持った運営が要求されよう。

 民営化するとはどういうことかを、一言でまとめれば「自由にできる」ということである。それは、同時に、民間と同じ競争条件(イコール・フッティング)を持つということだ。自由度とイコール・フッティングは、コインの両面と言われるように切り離すことができないものである。

 だから、これからの展望としては、たとえば、物流産業として国際業務に参加することも視野にはいってくるかもしれない。そういう中で、ドイツ郵政の子会社であるDHLが、世界の4大物流の一翼を担っているという事実を見逃すことはできない。

 日本の郵政が民営化によって実力をつけ、こうした国際物流に参入していけば、それは歓迎すべき方向だと私は考えている。

 東西冷戦が終わり、世界が凄まじい競争圧力にさらされるようになって久しい。過去の経緯に囚われず、日本経済が安定的に発展する政策を進めていかなければならないいま、郵政民営化の必要性はさらに増しているのである。

 
 
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