Aクラス人材にAクラスの仕事を、Cクラスの人材は……

結果を出す「業績評価制度」のつくり方

 
 
成果主義を導入したものの、ほとんどの社員が「平均より上」の評価だったり、
成果と報酬がリンクしていなかったりと、満足に運用できていない企業は多い。
企業のパフォーマンスを上げるための業績評価の仕組みと動かし方とは。
 
 
ローレン・ゲイリー = 文
text by Loren Garyディプロマット = 翻訳
 
 

企業文化やニーズに
合った評価制度を

 今日、ますます多くの企業が自社の業績評価(パフォーマンス・マネジメント)システムが目に見える結果を生むことを求めるようになっている。そして、これらの企業が気づき始めているのが、どの企業にも適用できる業績の概念にしがみついていたのでは、自分たちの望む結果は得られないということだ。

 社員の活動を管理する最も強力なシステムは、「その企業ならではの事業脈や人的資本の背景に合わせてつくられたものだ」と、マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティングのコリーン・オニールとローリ・ホルジンガーは、最近の報告書で述べている。しかし、これ以上ないほど精巧にカスタマイズされたシステムでさえ、自動操縦で動くことはできない。システムの成功は、幹部たちに、望みの結果を生み出すための説明責任を自分自身にも部下にも負わせる用意があるか否かにかかっているのである。

 優れた業績評価には、全体を見渡す目(パースペクティブ)、評価基準、実行する情熱が必要だと専門家は言う。最も優れたマネジャーは下記の3つの作業を行っている。

●3つのグループ――傑出した貢献をしている少数の社員、順調に仕事をこなしている大多数の社員、標準に達していない少数の社員――を区別する厳密なシステムを開発する。

●社員の貢献を促す評価基準をつくる。

●スーパーバイザーが、目標を達成していない部下と率直に話し合ったり、金銭的インセンティブを実績に連動させたりすることを恐れない説明責任の文化を育む。

最高の人材を最も
重要なポジションに

 パフォーマンスの高い組織は、最高のパフォーマンスをまずまずのパフォーマンスやお粗末なパフォーマンスとはっきり区別している。そうするための「正しい」方法――具体的な方法については後ほど説明する――を選ぶには、上級幹部はまず「業績の問題の何を最も重視するか」を決めなければならない、とオニールは言う。

 トップ・パフォーマーの間にいくつか等級を設けるとともに、標準以下のパフォーマーを除去するのである。

 自社の業績評価システムの包括的な目標を定めたら、ラトガース大学経営・労使関係大学院の人材戦略論教授、マーク・フセリドが「社員区別戦略」と呼ぶものを構築しよう。

 たとえば製薬会社では、非凡なパフォーマンスを生む主な要因は、研究開発サイクルタイムを厳しく管理する能力、高品質を実現する製造プロセス、優秀な営業部隊、食品医薬品局(FDA)と協力する方法を深く理解していることなどだ。

「これらの活動は製薬会社のAレベルの仕事であり、戦略的重要性が最も高いポジションだ」と、フセリドは説明する。Aレベルの仕事のそれぞれについて、会社は「この仕事に関連のある能力や社員のコンピタンシー(行動特性)は何か、リーダーシップ行動は何か、成功の主な指標は何かを明らかにする」必要がある。

「Aレベルの仕事にAレベルの人材をあてることで初めて、企業は競合他社を本当に引き離すことができる。このAレベルの仕事のそれぞれについて、非凡なパフォーマンスとはどのようなものかを明確にしよう。次に、それらの仕事を必ずトップ・パフォーマーに担当させるようにしよう」

標準以下の社員をどうすべきか

「最低レベルの社員を淘汰して、よい結果を出している企業がますます増えている」とフセリドは言う。基本的な期待を満たしていない社員への対し方についての彼の意見は、経営学の専門家の間で現在盛んな論争の一方の極を代表するものだ。

 意見の相違の一つは、パフォーマンスを評価するときの、絶対比較、相対比較という二つの方法をめぐる混乱のためだ、とダラスのパフォーマンス・マネジメント・コンサルタントのディック・グロートは言う。

 絶対比較は、あらかじめ定められた目標や期待に照らしたパフォーマンスという観点から個人を評価するものだ、とグロートは説明する。成果評価で広く用いられている方法だが、この絶対比較の問題点は明白だ。基準がかなり低く設定されていたら、ほとんどの社員が期待を上回ることができるのである。

 相対比較は、他の社員と比べてどうだったか、という観点から個人を評価するものだ。多くのマネジャーに気まずい思いをさせるのはこの方法である。

「強制的ランクづけ(forced ranking)と強制的配分(forced distribution)が、相対比較を用いた二つの例だ。強制的ランクづけは、通常、社員のパフォーマンスと潜在能力の両方を判定する基準を使って、業績評価プロセスと並行しながらも、いくぶん独立して行われる」と、グロートは説明する。強制的ランクづけの典型的なスキームでは、社員の20%がAレベルの人材と判定され、70%がBレベル、10%がCレベルと判定される。すべての社員が基本的な期待を満たしていたとしても、一部の社員は最低レベルと判定され、一部の会社ではその評価に基づいて解雇されることもある。これは多くの専門家を憤慨させるやり方だ。目標を達成している社員を解雇したら、その企業の文化に対する信頼が損なわれると、これらの専門家は主張する。しかし、強制的ランクづけを用いている企業のすべてが最低ランクの社員を機械的に解雇しているわけではなく、当人に自分のランクを知らせるだけという企業もある、とグロートは言う。

 一方、強制的配分システムは、年次評価プロセスだけに注目して、社員の潜在能力の評価には目を向けない。「フォーチュン500社企業のおそらく30%が、なんらかの弁別によってパフォーマンス評価の『評点インフレ』を防ぐために、この手法を用いている」と、グロートは言う。たとえば、「特に優れている」という評価は全社員の5%、「優れている」という評価は20%と決めることができる。さらに、全社員の10%が「改善が必要」と評価され、最低でも5%が「不十分」と評価されるようにも要求できるのである。

説明責任の文化を築く

 健全な業績評価システムは、幹部たちに自分の責任を引き受けさせるのに役立つ仕組みを与えてくれる。自分の部下が各自の目標を達成できるよう取り計らう責任、さらにはその部下たちがそれぞれの部下に同じく説明責任を負わせられるよう取り計らう責任である。そのようなシステムは、二つの方法で説明責任の文化を育む。

 第一に、健全な業績評価システムがあることによって、社員は設定された目標への前進を評価するために定められている基準を守るようになる。

 また、健全な業績評価システムは、マネジャーが評価にあたって労を惜しまず、明確に判別するよう仕向ける。

 パフォーマンス評価プロセス全体を定期的に評価することも、説明責任の文化を築く一助になる。

 スプリント(カンザス州)では、年次評価の最後に行うオンライン調査で、評価プロセスについての社員の意見を聞いている。同社は昨年の社員のフィードバックも踏まえて具体的なマネジャー技能目標を作成しており、今年の評価プロセスでは、社員は自分の上司の評価技能を評価することができる。

 マネジャーの関心を早急にパフォーマンス・マネジメントに向けさせるためには、評価能力を昇進の重要な判断基準にすることが、最も効果的だ。

 カリフォルニア州のルーカスフィルムでは、マネジャーのパフォーマンス評価の現在の基準には、直属の部下の能力開発にいかに熱心に取り組んだか、パフォーマンスの問題を突き止め、対処するためにいかに積極的に取り組んだかも含まれている。これらの面についての評価が、上級幹部になるためのマネジャーの潜在能力の評価という、より大きな評価の一部になるのである。

 
 
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