管理、競争、創造、協働──この四分野のすべてで活動を行う必要がある

組織と個人の価値創造を
両立させるには

 
 
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マネジャーは往々にして自分の部署が
創造した価値を過大評価する傾向がある。
だが、終始一貫して価値を生み出せる
一流のバリュー・クリエーターは、
自分自身のバイアスを調整し、他部門の
価値創造活動への目配りを忘れない。
 
 
ローレン・ゲイリー = 文
text by Loren Garyディプロマット = 翻訳
 
 

 最も成功するマネジャーは、自社のニーズの変化を背景に終始一貫して価値を生み出せる人物である。競合他社や市場の動向に対応して自社が戦略を変えるとき、彼らは、会社の価値を生み出すと同時に、それに劣らず重要な職業上の能力や個人としての能力を開発していくため、自らの戦略を変えることができる。

 彼らは組織の価値創造と個人の価値創造はパラレルな関係にあることを認識している。また、自分がどのような価値創造活動を選ぶかは自分自身のバイアス(偏り)に大きく左右されるということを理解し、それに対処することができる。

 価値を創造するためには、まず自社の戦略を明確に理解しなければならないが、それだけでは不十分だと、ワシントン大学、オーリン・スクール・オブ・ビジネスの財務学教授、アンジャン・セイカーは言う。

 自分の部署以外の部署で行われている活動の価値を認識する必要があるのだが、これができているマネジャーはほとんどいない。セイカーらが開発した「多視点モデル(multiple-perspective model)」は、マネジャーが自分の部署や会社全体の成功に他の部署の活動がどれほど貢献しているかを認識できるよう、価値創造へのさまざまな経路間の避けがたい緊張を取り除くのに役立つ。また、組織レベルと個人レベルの両方で同時に価値を生み出せるのだと、より強く認識させることによって、マネジャーがより的確に仕事の優先順位を決められるよう手助けすることもできる。

価値創造への四つの経路

 セイカーがミシガン大学ビジネススクールのジェフ・デグラーフ、ロバート・クィン、キム・キャメロンの3教授と協力して開発した「競合価値モデル(competing values model)」は、組織の価値を生み出す活動を四つの分野に分類している。

(1)管理──この分野の価値増大活動には、リスク管理、プロセス効率の向上、コスト生産性の向上に取り組む社内のさまざまなプロセスがある。この分野の合言葉は「より良く、より安く、より確実に」だと、セイカーは『バリュー・クリエーター 人材と組織の価値創造を実現する』(ダイヤモンド社)で述べている。

(2)競争──この分野の合言葉は「株主価値を今、そして毎日、生み出そう」である。ここで重視されるのは、顧客満足プログラム、アウトソーシング、事業部門の整理、合併・買収など、外部を対象とする活動を通じて市場のシグナルに迅速に対応することだ。

(3)創造──この分野の価値増大活動は、新市場の育成や自社の製品・サービスの飛躍的なイノベーションの促進に関わる活動だ。これらの活動は多くがリスクを伴う。「管理」分野や「競争」分野の活動より成功の可能性が低いし、成果が出るまでの時間も予想がつきにくいのである。

(4)協働──この分野の重点は、組織のコンピランシー(能力)を築き、適切な文化を生み出すことにある。活動には、リーダーシップ開発プログラムや社員維持プログラムなどがある。他の分野の活動に比べ、この分野での活動は時間がかかる。また、それらが生み出す目に見える価値を測定するのも困難である。

 組織と同じく個人も、成功するためには四つの分野すべてで活動を行う必要がある。しかし、人間というものは自分が最も関心のある分野や活動を選びがちだ。そのうえ、価値創造活動を表す語彙やそれをモニターする基準は分野によって異なるため、人々は「自分の分野や部署の活動によって創造された価値はたいてい過大評価し、他の部署によって創造された価値はたいてい過小評価する」と、セイカーは言う。

得意分野以外にも
目配りを忘れるな

 たとえば、財務部の社員──その活動はもっぱら「競争」分野──は、人事部──その活動は主として「協働」分野──が打ち出すチームづくりプログラムや職務充実プログラムには価値創造効果を見出さないかもしれない。

 競合価値モデル(「ホロニクス・モデル」とも呼ばれる)は、一流のバリュー・クリエーターの持つバランスのとれた視点を身につける手助けをしてくれる。自分は職場で誰と、なぜ付き合っているかを分析するためのレンズとして、このモデルを使ってみよう。自分が得意とする分野の人たちのほうに引き寄せられるという人間の自然な性向に、あなたは屈しているだろうか。自分の強みが「競争」分野の活動にあるとしたら、「協働」分野の活動に携わっている同僚たちが自身の仕事をどうとらえているかをもっと知ることで、「競争」の対極にある分野(「協働」分野)のスキルを開発しよう。同様に、あなたの強みが「管理」分野の活動にあるとしたら、「創造」分野の活動がどのように価値を付加するのかをもっと知る努力をしよう。

 自分の得意分野以外の価値創造活動について学んでも、あなたの得意分野はおそらく変わらない。しかし、自分の活動をそれら他分野の活動と組み合わせることで、いかにして会社に価値をもたらせるのかを、さらに明確に理解できるようになるだろう。この理解は、あなたの会社の価値創造の定義や会社があなたに求めている具体的な貢献にできるだけ合致した、自分個人の価値創造の定義をつくり上げるのに役立つはずだ。ここで重要なのは以下の問いである。

・仕事の中で何に重点を置くのか

・個人としていかに成長していくのか

・自分の戦略の結果、これまでとは違うどのような決定を、日々の仕事の中で行っていくのか

 セイカーは二つのリストをつくるよう勧めている。自分は何をすることで給料をもらっているのかを記すリストと、昇進するためには他に何をする必要があるかを記すリストである。それぞれのリストに最も重要な二つの活動を書き記して、それを自分の机に貼っておこう。その四つが、あなたが最優先すべき活動になる。これらの活動における自分の役割を明確にするために、次の問いを検討してみよう。

・自分はどのような主要価値ドライバー(価値創造要素)を管理しているか

・これらのドライバーは、より高い組織レベルで意味のある価値にどのような影響を及ぼすか

・これらのドライバーの管理において、自分はどのようなイノベーションを実現できるか

 あなたが製造工場の責任者であれば、主要価値ドライバーには従業員の技能や訓練、製造プロセスの効率性、工場の設計などがある。しかし多くのマネジャーが、これらの価値ドライバーに関心を払うよりも、むしろこれらのドライバーが生み出す結果──たとえば、製造サイクルタイム、欠陥率で見た製品品質、単位あたりの製造コスト──に注目するという誤りを犯している。

 所属部署の価値ドライバーに取り組むにあたっては、自分が特に優れた遂行能力を持つ活動に精力を集中しよう。部下のほうがうまくやれる活動は、積極的に部下に任せることだ。

 最優先の四つの活動に加えて、あなたの職務記述書には含まれていないが、会社に実質的な価値を付加すると同時に自分自身の仕事もより楽しくする活動を、さらに二つ見つけよう。その二つの活動を加えてもなお、あなたが現在のポジションでは個人としての充足感を得られないとしたら、それは会社の外か別の部署で自分の基本的な性向により合致する仕事を探すべきだ、というサインかもしれない。

 この個人的な優先活動リストにさらに四つの項目──自分の力を高める活動一つと、直属の部下や上司など、身近な同僚の力を高める活動三つ──を加えよう、とセイカーは言う。これらの活動はあなたの得意分野に関連しているはずだが、対極の分野に関連している場合にも同じく最大の価値をもたらす傾向がある。たとえば、「競争」分野で強みを持つ財務部のマネジャーは、財務に関する自社の主な基準や原則を全マネジャーの日々の意思決定に染み込ませる「協働」プログラムを打ち出すことで、自分自身と同僚の力を高めることが可能なのだ。

 
 

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