特集/なぜか結果が出る人の「24時間」

同じ努力で業績2倍男の「ON時間」大解剖
──デル・三浦一浩

時間予算管理で「退社は8時、残業ゼロ」

 
 
日本でPC販売を開始してからわずか10年で国内3位のシェアを獲得したデル。
「デルモデル」といえばPCの直販方式が知られているが、それだけではない。
営業マンの時間管理術にも「デルモデル」が隠されていたのである──。
 
 
斉藤栄一郎 = 文
text by Eiichiro Saito森崎純子 = 撮影
photo by Junko Morisaki
 
 

「根気と忍耐」から
「理解と仮説」の時代へ

 コンピュータの直販メーカーというユニークなスタイルで世界のパソコン市場シェア第1位を驀進中のデル。国内でも昨年度は、業界全体が対前年比3%に満たない中、29.9%増を達成してシェア第3位に躍進している。好調を続ける同社の営業最前線で、できる営業マンは、時間とどう格闘しているのか。

 エンタープライズ営業本部に所属するアカウントエグゼクティブ、三浦一浩(29歳)。大手法人顧客対象の外回り営業マンとして、パソコン、サーバ、ストレージ(記憶装置)などの営業を担当している。2年前に外勤職となった。20代ながら落ち着きがあり、物腰は柔らかく、それでいて自分の主張を持っている。

「大手アカウント(顧客)を数多く担当しているにもかかわらず、それぞれに対して戦略的アプローチを取っており、常に営業の達成目標をクリアしている成績優秀者の一人」というのが、彼周辺の声だ。

 また、デルでは今年に入ってトップ自ら「ワーク・ライフ・バランス」の追求を提唱している。ダラダラと仕事をするのではなく、仕事とプライベートをバランスよくこなすスタイルをよしとする考え方だ。そのワーク・ライフ・バランスに優れた存在として、三浦は高く評価されている。

 三浦は大学を出て金融機関に入社し、融資業務を担当していた。

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三浦一浩
1975年生まれ。金融業界を経て、2000年にデル入社。大手企業顧客向けに、パソコンのほかサーバ、ストレージなどITシステム構築のための製品の営業を担当。

「夜11時、12時まで会社にいるのは当たり前で、仕事がなくても帰りづらい雰囲気」に、「何かおかしい」と常々疑問を抱いていた。

 2000年2月、もともとコンピュータ好きだったことからデルに転職。とはいえ、「入社するまで世界で1、2位を争うメーカーとは知らなかった」と笑う。

 内勤営業職を経て2年前から外勤営業として今日に至っている。転職で、自分の納得のいくように時間が使える環境となり、まさに水を得た魚となった。

 現在、担当している顧客は全国に10社ほど。自ら計画を立てて、全国を飛び回っている。

 デルでは、営業が内勤営業と外勤営業に分かれていて、顧客ごとに特定の内勤・外勤コンビが担当する方式を取っている。顧客からの電話には内勤営業が対応するため、担当者が外出中でつかまらないということはない。お陰で外勤は心置きなく外回り営業に専念できる。

 三浦は内勤・外勤の関係を「一心同体」と説明する。

 外回りのため、典型的な1日というのは存在しないが、あえてある1日の動きを公開してもらった。

 朝10時には客先へ直行する。気持ちが仕事モードに切り替わるタイミングは「通勤のとき」。通勤中は、「顧客のニュースや営業時の話題探しに経済新聞を読む」ことが多い。

 商談を終えると昼食。むろん、忙しくて食事にありつけない日もある。逆に一件目の訪問が早めに終わった場合には、同じ客先の別の担当者を回ったり、付近の顧客のところに足を延ばしたりすることもある。

 急遽、近くの顧客に立ち寄ることになれば、コンビを組む内勤担当者や会社のデータベースから顧客の情報を引き出すこともある。とっさの動きをサポートする仕組みが会社にあるのは、三浦のような営業にとって心強いだろう。

 午後も何件か訪問をこなす。合間に内勤の担当者と情報交換する。急ぎの用件や重要な問題があれば、その場で内勤にも連絡を取る。

 川崎にある会社に戻るのは、18時ごろ。ここで内勤担当者とその日の成果や動きについて情報を共有する。三浦の言う「一心同体」の確認作業である。外勤に伝えたことは内勤も把握している。その逆もまたしかり。

 外勤と内勤の担当者が“二人羽織り”のごとく顧客に対応するには、こうした情報共有が欠かせない。

 手間のかかる作業かもしれないが、これをやっておくからこそ、昼間、三浦が社外にいても全体の動きを把握しながら動くことができる。そういう積み重ねが時間の有効活用につながっている。その意味で、デルという会社の仕組みは、三浦にとって欠かせないものなのだ。

 もっとも、その仕組みの中にいても、自動的に時間が上手に使えるわけではない。三浦の強みが発揮されていることは言うまでもない。

 三浦は、特別な「七つ道具」を持っているわけでもないし、手帳に分刻みのスケジュールをびっしり書き込んでいるわけでもない。移動中にノートパソコンを開いて作業をするタイプでもない。

「10分刻みの細かいスケジュールなんて立てません。それを考えている時間がもったいないですから」

 三浦は、たとえば一件目の訪問が終わるといった節目節目に時計を見る。時間が押しているのか、余っているのか。今の状況を見て、「余裕があるなら、ついでにあれもしておこうとか、時間が10分しかないなら予定を変更して10分でできることを先に処理してしまおうと考えます」。

 大事なのは、予定表ではなく、今何ができるか、何をすべきか、なのだ。誰だって予定どおりに事は運ばない。特に客という“生もの”を相手にする外回りの営業であれば、予定は目安にすぎない。

 つまり、やるべきことを考えるなら、ついでに何分くらいで処理できる仕事なのかもあらかじめ想定しておけば、いざというときに慌てずに順序を入れ替えたりできる。ちょっとした工夫だ。

 三浦は、予定どおりに物事を処理する達人ではなく、予定どおり運ばないときの判断力が傑出しているのだ。有り体に言えば、臨機応変なのだ。

 三浦の退社目標は20時。外勤なのでいつも守ることはできないが、とにかく20時退社をめざす。家には仕事を持ち込まない。仕事とプライベートはきっちり分けたい性分なのだ。「境界が曖昧なのが嫌なんです。学生時代も、ながら勉強は嫌いでした」。

 目標の20時に帰るにはどう仕事をすればいいか、という意識が常に頭の中にある。言ってみれば、1日のスケジュールを後ろから書けるタイプなのだろう。

 三浦の頭の中には、その日にやるべきことが常にリストアップされている。注目すべきは、その順序にこだわらず、時計と相談しながら、柔軟に順序を入れ替えている点だ。リストアップされている作業の中からリアルタイムに仕事を取捨選択して、20時退社という枠に上手にはめこんでいく。

 その原動力は、早く仕事から解放されたいというような思いとは違う。むしろ仕事は好きなタイプだろう。

 彼がこだわるのは、プライベートだろうと仕事だろうと、「人にやらされたり、何もしないのではなく、自分の意思で動く時間をつくりたい」のだ。三浦のこだわりは情熱的とさえいえる。

「ダラダラと夜遅くまで仕事して、家に帰って、風呂に入って寝るだけでは、時間のムダどころか、人生のムダだと思うんです。今29歳ですが、それで20代を終えていいのかと思うんですよね」

 ボーッとしている時間を嫌い、充実感という大きな尺度で1日を見ているからこそ、空いた時間に何ができるか、時間が足りないときにどうすべきかが、はっきりと見えてくるのだろう。(文中敬称略)

 
 
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