「時間がない」「決まってから伝えればよい」は甘い

「コミュニケーションはコスト」の大勘違い

 
 
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毎日、メールや企画書や会議に
追いまくられて余裕のないマネジャーは、
ときとして情報の流れを止めて
それに対応しようとする。
だが、重要な情報を部下に伝え遅れたり、
まったく伝えなかったりすると
必ず痛い目に遭うだろう。
 
 
アンジェラ・シニカス = 文
text by Angela Sinickasディプロマット = 翻訳
 
 

 社員とコミュニケーションをとらないこと──もしくは社員が重要な情報にアクセスできる体制をつくらないこと──は、大きなツケをもたらすことがある。コミュニケーションの欠如は士気やパフォーマンスを低下させるだけでなく、最終的には利益にも影響を及ぼしかねないのである。

 たとえば、ミシガン大学が五年間かけて行った調査によると、情報の共有度が高い企業のほうが、低い企業より投資収益率も売上高利益率も高かった。

 情報のチャネルを開いて、コミュニケーションが適切な方向に流れるようにすることは、企業のパフォーマンスに決定的な影響を及ぼすことがある。また、情報を止めることは、社員はもちろん顧客にまで間違ったシグナルを送って大きな害を及ぼすことがある。

「最終決定」を待たずに初期段階から知らせる

 多くのマネジャーが、問題に対する最終的な解決案がはっきりするまで何も伝えることはないと考えている。しかし、何も知らせないでいると、「上の連中はやっていることを自覚していない」「何もしていない」「部下を軽視している」といったメッセージを送ることになる。このようなマネジャーが理解していないのは、社員は最終的な決定に至る過程についての情報や、どのような案が検討されているかとか、どのような基準で決定がなされるのかといった情報を知らされれば、概して満足するということだ。

 その実例を二つ挙げよう。エネルギー産業のある企業が、販売部門とマーケティング部門を活性化させるため、両部門とも部長は留任させてスタッフを入れ替えることにした。上級幹部は、すべての配置転換が確定するまで待ったりはせず、各レベルの人員配置が終わるたびに全社員にメールを送った。社員にとっての最も重要なメッセージは、誰がどのポジションに選ばれたかではなく、そうした選定が会社の新しい目標とどのような理由で、どのように合致するのか、ということだった。メールには、重要なポジションに選ばれた社員の以前のポジションの一覧だけでなく、彼らの優れた行動の実例も記載されていた。これによって、ラインのずっと下のほうの候補者に、どのような基準で決定がなされているかを理解させることができた。

 もう一つは、自社より業績の劣る競合他社を買収した製薬企業の例だ。買収された企業の配送センターの多くが自社の配送センターと同じ場所にあったため、重複している配送センターは閉鎖されるという噂が流れた。動揺して真剣に職探しをする社員も現れ、生産性が低下した。会社が徹底的な査定を行ってどの配送センターを閉鎖すべきか決める方針であることが社員に伝えられると、噂は消え、生産性が向上し始めた。配送センターのスタッフが生き残りをかけて競争するようになったからだ。

期待することを明確に定義する

 あらゆるレベルのマネジャーにコミュニケーションをとる責任があるという点では大半の考えが一致しているが、それが具体的に何を意味するかとなると曖昧な点が多い。一つの解決策は、それぞれのマネジャーに期待されるコミュニケーションの内容を、会社の方針のなかで、もしくは──こちらのほうがより望ましいが──成果評価プロセスの一環として文書のかたちで示すことだ。その文書には、あらゆる方向のコミュニケーションについてマネジャーに期待されることが明記されていなくてはいけない。

[1]上から下へのコミュニケーション

 企業はえてして、情報が一つのレベルから次のレベルへと順次伝達され、組織全体にうまく行き渡るものと思っている。ところが、細かい事実やその程度は、伝達されるたびに変わるものだ。伝わるタイミングもバラバラで、ある部署の低位の社員が、他の部署のもっと上位の社員よりずっと早く情報を知ることもある。

 より望ましいアプローチは、刊行物やイントラネットの掲示板を使って、全社にメッセージを送ることだ。そうすれば、上から下へのコミュニケーションにおけるマネジャーの役割がもっと対処しやすく、焦点の絞られたものになる。

 必要な情報を集める時間を社員に与えよう。

 それはすなわち、社員が就業時間中に会社の刊行物を読んだり、少なくとも週に一度はイントラネットのサイトを覗いたり、ミーティングに参加したり、ビデオプログラムを見たりすることを奨励するということだ。マネジャーのあなたがこうした活動を非生産的だとして抑え込んだら、こうした情報を自分自身が提供しなければならなくなり、結局は自分の負担が増えることになる。

 部下に情報を吸収する機会を与えたら、それから先のあなたの役割は、その情報がその部署にとってどういう意味を持つかというコンテクストを部下に提示することだ。大きな全体図をできるかぎり噛み砕いて、あなたの部下が全体図の目標や価値やプログラムに貢献するために実行できる、具体的な行動にして伝えるのである。

 発信する側にとって最も便利なコミュニケーションチャネルを使うのではなく、受け手の都合を考えて、メッセージがきちんと「受け取られる」可能性が最も高いチャネルを選ぶ必要がある。

[2]下から上へのコミュニケーション

 新任の上司は、部下に質問することを弱さの表れと思いがちだが、それは誤りだ。部下への質問が、部下からの情報を踏まえたなんらかの達成につながるかぎり、実際はほとんどの部下がそれをむしろ強みと考える。

 最終決定が出てから初めて伝えるのではなく、決定プロセスの初期段階からどんな選択肢がありうるかを部下に知らせよう。部下との話し合いを通じてあなたの当初の案を改善できることが多々あり、その結果、実行がはるかにスムーズかつ迅速になり、コストも安くなる。

 自分が耳にしたことを自分の上のマネジャーに伝えよう。悪いニュースの場合は、解決策の案を添えて伝えるのが望ましい。

[3]水平なコミュニケーション

 問題が生じるのは、往々にして製造プロセスや一連のサービス提供作業の一つの連鎖から次の連鎖への受け渡しのときだ。問題を生み出しているグループは、えてしてそれに気づかない。

 コミュニケーションの断絶が起きやすいもう一つの分野は、営業部門と顧客サービス部門の間である。サービス部門のスタッフは、営業の人間は実行できないことまで顧客に約束すると不平を言う。営業マンの側は、サービス部門の人間は顧客の面倒を十分見ておらず、そのためリピート・オーダーがとりにくくなっていると不満を言う。

 不満を言い続けるのではなく、相手グループともっと効果的に情報を共有できないかと考えてみよう。

[4]顧客へのコミュニケーション

 社員が顧客と絶えず接触しているコールセンターのようなところではこれがきわめて大切だ。ところが、こうしたコールセンターの生産性の目標は、顧客満足をほとんど無視して設定されることが多い。

 顧客サービスの社員は、シフトに入るやいなや顧客サービス画面にログオンし、休憩時間以外はシフト終了までずっと顧客サービス画面を見つめているよう期待されている。顧客から尋ねられる可能性のあることについて情報を得るために、メールやイントラネットをチェックする時間はないのである。

 しかし、必要な情報を持っていなければ、通常はそれぞれの社員が顧客の求める情報を調べるために何本もの電話をかけるはめになる。必要な情報を共有する時間を設けることによって、情報を探すためにかける電話の本数や平均通話時間を減らすことができる。

 また、コスト構造からコミュニケーションの時間を除外するのも一案だ。社員がたとえばミーティングやビデオ学習などのコミュニケーション活動に参加する場合、社員はそれを自分のタイムシートのコミュニケーションの項に記入する。その時間は、生産性算定のもとになる時間から除外される。こうすればマネジャーに、他の数値目標を達成するだけのためにコミュニケーションの時間を省略しようという気を起こさせる要因をなくすことが可能だ。

 
 
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