情報スクランブル/判断意見

有力ストラテジストが、活況に沸く株式マーケットを読む

日本株は3〜4年の長期投資の構えで臨め

 
 
ドイツ証券 チーフストラテジスト
武者陵司 = 談
Ryoji Musha
むしゃ・りょうじ●
1949年生まれ。長野県出身。73年、横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社。82年、同証券調査部門独立により大和総研に出向。87年までの間に建設・住宅・窯業・自動車・電機業界を担当。88年より大和総研アメリカ チーフアナリスト。93年より大和総研 企業調査第2部長。97年1月、ドイツ証券会社入社。
奥村勝之 = 撮影
 
 

 日本経済は回復軌道に乗り、今や「デフレは終わった」「今度の景気回復は本物、持続性がある」との説もありますが、これは過大評価ではないでしょうか。今年後半から来年にかけて、その期待がいったん大きく裏切られる局面がくるでしょう。

 その転換点は、米国経済が大きく下に振れるときにやってくる。その際、世界同時株安という局面がくる可能性が強い。ただ、大底を打った日本の株式市場は調整が進んでおり、他市場が下がってもさほど下がらず、ほかが上がるときはより大きく上がる、という局面が今後何年か続きそうです。

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 現在の好調な世界経済の背景には、米国と中国という二つの大きな要因があります。米国は、今年の経済成長率5%強を期待する声もあるほどの好調ぶりですが、これは、財政・金融の手厚い保護によるところが大きいのです。

 米国経済の約8割は、家計(消費、住宅の売買)が支出する需要で決まるので、米国民が財布の紐を締めるか、緩めるかで決まってきます。米国民は今、派手な消費を続けていますが、これは自分で稼いだ所得によるものではありません。一つは減税。これは政府の補助といっていい。もう一つは家計の旺盛な借り入れです。この二つの条件は長く持続するものではありません。まず、今年6月の税還付で減税効果は出尽くしてしまう。さらに、金利の上昇で以前より借金がしにくい状況となっている。これが消費に影響します。

 また、中国は、改革・開放路線の総仕上げとしてインフラ整備を行い、持続的な成長の基盤を築くため大規模な投資を促進してきましたが、今の「中国ブーム」は明らかな過熱状態です。

 日本の景気はこのフレームワークの中で回復してきました。もちろん、昨年りそなで相当な手を打った(国有化)という国内要因もあります。消費が少しずつ上向き、製造業、非製造業にも景気拡大の裾野が広がりました。

 問題は、これが実力に基づいたものか否か、ということです。銀行改革、企業のリストラが進んだのは確かですが、最も大きな要因は、政府がゼロ金利や巨額のドル買い介入、約40兆円の財政支出といった大きな「セーフティ・ネット」を張り巡らせて、経済の破局をせき止めているという事実です。

 このツケはどこかで必ず支払われるものです。

 しかし、それとは別に考慮すべきことは、日本の株式そのものが絶対的に割安な水準にあるということです。

 国債のリターンが非常に低く、預金金利はほぼゼロという状態の中、株式は配当利回り1.2%、企業の社内留保を考慮すると4%のリターンが期待できる。これは過去数十年間で初めての極めて高い水準ですし、株のリターンが国債や預金と比較してこれだけ突出したことは他国でも例がない。もし、株を現在の長期金利をベースに評価するとしたら、今の水準から4〜5割上昇しても不思議ではありません。

2006〜07年はさらなる
高パフォーマンスを期待

 なぜこんなに割安なままなのか。自信がないからです。「今は好調な企業収益だが、1〜2年で半減するのでは」などと悲観的な気持ちも背景にあるかもしれない。しかし、企業収益を壊滅させるほどの不況の可能性は小さいでしょう。理由は(1)リストラなどミクロレベルの改革進行、(2)金融問題の一定の進展、(3)中国・アジアの新市場台頭、の三つです。

 ここまで日本株を押し上げてきた外国人投資家の買いは、おそらく下落する局面でも続いてゆくでしょう。世界経済への不安が高まり、日本以外の市場に対し弱気になるほど、相対的に日本株に注目せざるをえません。2005年は世界経済にとって困難な年となりますが、06〜07年の回復局面では、日本株はさらなる高いパフォーマンスが期待できます。3〜4年の長期投資なら、預金を下ろして株を買ったほうが得、ともいえるでしょう。

 
 
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