「選ばれるマネジャー」がいる会社は「選ばれる会社」になる

優秀な社員の「定着率」を
高める上司の器量

 
 
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優秀な人材は、採ってしまえば
あとは勝手に育ってくれると
考えていないだろうか。
やる気を起こさせ、スキルアップを
助けるマネジャーがいない企業は、
優秀な社員から早晩見切られる
可能性が高い。
その愚を避けるためには。
 
 
ローレン・ゲイリー = 文
text by Loren Garyディプロマット = 翻訳
 
 

 就職や転職を考えている人々から「エンプロイヤー・オブ・チョイス(選ばれる企業)」とみなされるようになれば、企業の収益力は上がるものだ。だからこそ企業は近年、競争に勝つために必要な最高の人材を見つけるリクルートの方法はもちろん、既存の社員の気持ちをつなぎとめておくためのリテンション・プログラムの開発にも力を入れている。

 しかし、過去7年にわたり「選ばれる企業」について研究してきたインディアナポリスの経営コンサルタント、ナンシー・アールリクスによれば、全社的なプログラムだけでは十分とはいえない。

 上司が、会社のビジョンや優先課題を誠実に実践しており、部下の吸収力や成長に強い関心を持っているとみなされている場合には、会社に対する社員の忠誠心は高くなる。逆に、社員が退職する理由のトップは上司とうまくいかないことだ。

 要するに、アールリクスが近著『Manager of Choice: Five Competencies for Cultivating Top Talent(選ばれるマネジャー:最高の人材を育てるための五つの能力/邦訳なし)』(2003年)で述べているように、人材管理のベスト・プラクティスを誠実に実践している「選ばれるマネジャー(MOC)」が組織全体にいないかぎり、企業は「選ばれる企業(EOC)」にはなれないのである。

 では「選ばれるマネジャー」、すなわち仕事や上司を選べる立場にいる社員に選んでもらえるマネジャーになるためには、何が必要なのだろう。アールリクスはこう述べている。「これにはマネジャーの教育スキルや専門的スキルも一定の役割を果たすが、決定的な違いを生むのは人材管理のスキル、すなわち社員にやる気を起こさせ、自主的な努力──それが顧客とじっくり話すことであれ、もっと頻繁に電話をかけることであれ──をさせるスキルである」。

 この能力を備えた「選ばれるマネジャー」は、(1)人材発掘 (2)関係構築 (3)信頼構築 (4)スキル構築 (5)組織としてのブランド構築、という五つの基本分野で一貫して優れた実績を挙げている、とアールリクスは語る。

 以下に紹介するのは、これらの各分野でよりよい実績を挙げるためのアドバイスと、これらの分野における優れた手腕で定評のあるマネジャーたちが伝授してくれるヒントである。

(1)人材発掘

「2008年の労働力は現在より15%減少すると予測している研究結果を見ると、心配せざるをえない」と、デロイト&トウシュのシンシナティ地区ディレクター、ビル・バグリーは言う。労働力の減少というこうした予測があるだけに、マネジャーが適所に適材を得ることはなおさら重要になる。あなたに最高の人材を獲得する能力があれば、あなたは欠員が出るたびに自分のグループの競争力を高められるだけでなく、グループの他のメンバーのやる気を持続させることもできる。新しい人材が入ってくることは、同じメンバーが長年一緒にいることで生じる「知識の硬直化」を防ぐ効果がある。

 適所に最高の適材を得るためには、「(そのグループに関連した)総合的な職歴が他の求職者のそれより際立ってすばらしい」人々が候補者として選ばれるよう取り計らわなくてはいけない、とアールリクスは述べている。もはや「選定・採用プロセスのすべての面を人事部に頼るという受け身の姿勢」をとっているわけにはいかない。

「求めている候補者かどうかは顔を見ればわかる」というような姿勢をとってはならないと、アールリクスは忠告する。そのような姿勢は捨てて、あなたの面接スキルが他の専門的スキルに劣らず鋭く研ぎ澄まされているようにしておかなければならない。最終決定を行うにあたっては、採用しようとしているポジションでの卓越したパフォーマンスに特に必要とされる能力を最も重視して考えるべきだ。人事部と協力して、採用しようとしている各ポジションでの成功に最も不可欠な5〜7つの行動を特定しよう。それらのポジションで卓越したパフォーマンスを示している現職社員がいる場合には、彼らと個別に話をして、彼らが強調する他の行動で、リストに加えるべきものがあればそうしよう。

(2)関係構築

「人材発掘については多くの企業がうまくやっているが、選んだ人材を育てることに十分な関心を払っている企業はこれまでのところ多くは見当たらない」と、ライト・マネジメント・コンサルタンツ、インディアナポリス事務所の上級副社長兼常務取締役、ジャック・ロバートソンは言う。「『君は優れた仕事ができると判断されたから雇われたんだ。なぜ君を育てる必要があろう』という傾向がまだ強い」

 社員がノウ・ハウ──専門的能力に必要なハード・スキル──を磨く手助けをするために自分が果たすべき役割はほとんどのマネジャーが認識しているが、社員が卓越した仕事をするために必要な「ノウ・フー」(人間関係スキル)を磨く手助けをする方法には、多くのマネジャーが無関心なのだ。

 この面での手助けを始めようと思うなら、まず社員が職場で持つ四種類の人間関係のそれぞれについて、部下一人一人を評価してみることだ、とアールリクスは述べている。あなた(上司)との関係、同僚との関係、他の部署との関係、コミュニティ(顧客、ベンダー、市民団体、職業団体)とのさまざまな関係である。部下の強みと弱みを把握して初めて、彼らのスキル向上を助ける戦略を考えることができる。

(3)信頼構築

 グレイト・プレイス・トゥ・ワーク・インスティチュートが行った調査によると、強い信頼で結ばれたチームをつくりたいと思うなら、マネジャーは、信用、敬意、公正さ、プライド、仲間意識に配慮する必要がある。

(4)スキル構築

「一口に20年の経験があるといっても、その間ずっと学習を重ねてきた人と、1年の経験を20回繰り返しただけの人がいる」とロバートソンは語る。「われわれのハード・スキルは絶えず磨いていなければ衰えるだけだ」。

 社員がスキルを維持し、新しいスキルを習得するのを手助けできるよう、グループの中にミニ・トレーニングの機能を設けるべきだ、とアールリクスは言う。グループのメンバーが各自の仕事の質を高め、グループの目標を達成するために、メンバーに最も必要なスキルや行動、知識を特定する責任を負う学習タスクフォースをつくろう。さまざまな方法や媒体──昼食学習会、ディスカッション・グループ、専門誌や専門ウェブサイトから情報を集めたチーム独自の学習資料、簡単なジョブ・シャドウイング(職場体験)、他チームとの交換トレーニング──を通じて、簡便で利用しやすい学習機会を提供しよう。

「日に20〜30分あれば、チーム全体の学習を継続的に前進させることができる」と、アールリクスは述べている。

 しかし、継続的に学習するだけでは不十分で、他者に教えるという作業にも社員を継続的に関わらせる必要がある、と彼女は言う。教えることによって、社員は学習したばかりの知識を自分のものにすることができる。しかし、それ以上に重要なのは、教えることによって、知識を移転するスキル──組織はこのスキルをますます必要としている──を高められることだろう。

(5)組織としてのブランド構築

 部下の頭の中にある会社のイメージを高めることは、リテンション活動のトップにくるべきだ。コンサルタント会社、タワーズ・ペリンによる2001年の調査では、アメリカおよびカナダの大・中規模企業の6000人近い回答者のうち、56%以上が転職先を積極的に探しているか、転職を考えている、と答えている。

 さらに、ライト・マネジメント・コンサルタンツの調査では、社員が入社2年目から6年目までは、この会社に留まろうという気持ちが最初の年より低いという結果が出ている。7年目に入ってようやく1年目のレベルより高くなるのである。それはつまり、現在いる社員に自社の魅力を継続的に感じさせることによってのみ、彼らを引き抜こうとする他社の動きを撃退できるということだ。

 
 

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