同僚を客観的に評価する「困難」をいかにして乗り越えさせるか

360度評価が「裏目に出る」のを防ぐには

 
 
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能力開発のツールとして広く
使われてきた360度フィード
バック法が、最近は実績評価にも
導入されている。
だが、能力開発の面では効果的だった
「同僚からのフィードバック」は、
実績評価においては
アキレス腱になりかねない。
 
 
ローレン・ケラー・ジョンソン = 文
text by Lauren Keller Johnsonディプロマット = 翻訳
 
 

 360度フィードバック法(多面的評価法)は、上司、同僚、直属の部下からのフィードバックを組み合わせて社員の長所や能力開発の必要性について幅広い見方を提供するツールであり、能力開発において実績を挙げてきた。

 だが、実績(パフォーマンス)評価に使われる場合、360度フィードバック・レポートに記入するマネジャーの大多数が、同僚の実績のいかなる面についても批判することは避けたがる。

 昇給や昇進がかかっている場合はなおさらだ。否定的なフィードバックをすることで、誰がどんな評価をしたかがわかったとき相手との人間関係が悪くなるのを心配する者もいる。さらに、しっぺ返しを恐れる気持ちもある。その半面、悪意のある人間が、このチャンスを利用して同僚の評判を落とそうとするかもしれない。結局この問題のために、多くのマネジャーが、評価される側としても、フィードバックを提供する側としても、360度評価に参加するのを敬遠しているのである。

 一部の専門家は、360度フィードバック法をパフォーマンス評価に取り入れるのは誤りだと主張する。しかし、そうではないという専門家もいる。彼らは、このツールを、年次パフォーマンス評価のための直接的で率直なフィードバックを促し、広範な組織の特定のニーズや優先課題を満たすように、手直しする新しいアイデアを紹介している。

 パフォーマンス評価を360度フィードバック法に使うことに企業が魅力を感じる理由は、容易に理解できる。この手法はマネジャーのパフォーマンスについて、従来の上司による評価よりはるかに包括的な図を描き出してくれるのだ。ジンカ・トーゲルとジェイ・A・コンガーが『360-Degree Assessment : Time for Reinvention(360度評価:手直しの時期)』(2003年/邦訳なし)で指摘しているように、能力開発と評価の両方にこの手法を利用している企業は、投資した資金より大きな見返りを得ている。著者たちは「組織のフラット化が評価と昇進の関連を弱め」、従来のパフォーマンス評価法の重要性を損なうとともに、「評価プロセスに対する不満の増大」を生んでいる、とも指摘している。

 同じく厄介なのが、評価対象者がフィードバックのプロセスを懲罰的とみなす恐れがあることだ。変化を促すためには、懲罰は報酬や励ましよりはるかに効果が低いことが各種調査で明らかになっている。トーゲルとコンガーも、こうした反対意見があることを認めている。「360度のデータをパフォーマンス評価に使うと、能力開発のプロセスが『懲罰的』なものになる。つまり、変化を『可能にする』プロセスではなく『強制する』プロセスになるのである」。

 トーゲルとコンガーは、2種類の360度フィードバック法をつくるよう勧めている。能力開発用とパフォーマンス評価用である。能力開発バージョンでは質的なフィードバックが重視され、評価バージョンでは数量的な回答が重視されるべきだ。評価バージョンの評価基準は、質、量、コストなど、測定可能なパフォーマンス結果に関係したものとなる。さらに、評価者は、高い離職率や資金損失などの制約が個人のパフォーマンスにどの程度、影響を及ぼしたかを示さなければならない。評価対象者とその上司は、それを踏まえて、それらの制約が今後どのように除去されるかを話し合うことになる。

 360度フィードバック法をパフォーマンス評価に使っている企業はひどい誤りを犯している、と主張する専門家もいる。「360度のようなツールは流行になる。すると企業は、自分たちがそのツールを使う目的やその効果をよく考えもせず、むやみに流行を追ってそうしたツールを採用する」と、職場心理学者のケン・クリスチャンは語る。「その場合、『われわれは何のために能力開発ツールをパフォーマンス評価に使うのか』と問いかける人間が一人もいなければ、事態は悪化する。360度評価の場合、フィードバックの匿名性は保てない。だから、見せかけの評価になる。そして、このツールの能力開発面の利点が失われる」。

 パフォーマンス評価で360度フィードバック法から最大の成果を得るには、次のような原則に留意すべきだ。

[1]評価の基準を明確にする

 パフォーマンス評価に広く用いられている点数評価は無意味な情報しかもたらさない。「コミュニケーション能力」「誠実さ」といった数量化しにくいマネジメント能力の評価に点数評価が用いられる場合は、とくにそうだ。しかし、フェデックス・エクスプレスの人的資源・業務サポート部門の責任者、ボブ・スパーロフは、数量化できる基準をつくることは可能だと言う。

 フェデックスでは現在、マネジャーのパフォーマンスに関するフィードバックを、本人の上司、直属の部下、同僚から、同社が開発した別々の方法で収集している。すべてのデータがまとめられて、報酬に反映される。

 驚くにはあたらないが、同僚のフィードバックの部分が最も厄介な問題になっている。同僚は互いについて必ずしも率直な評価は記さないからだ。スパーロフによると、フィードバックと実際のパフォーマンスの間に明らかに隔たりがある。

 この問題に対処するために、スパーロフのグループは、従来の360度評価の同僚からのフィードバックの部分を変更することにしている。具体的には、数量化しにくい基準で評価するのではなく、当事者間で取り決めた測定可能な社内の顧客・サプライヤー契約をどの程度満たしたかによって、同僚マネジャーを評価するのである。

 この簡素化されたアプローチによって、企業は現在の評価制度に内在する政治的操作の余地や否定的なフィードバックをすることへのためらいを回避できる。

[2]ツールをカスタマイズし、拡大する

 フェデックスの場合、会社は「ワンサイズでみんなにピッタリ」式のパフォーマンス基準をマネジャーに押しつけはしない。社内における顧客・サプライヤーのペアが(サービス提供契約というかたちで)基準を決め、それに照らしてパフォーマンスを測定する。社内で卓越するために自分の能力にとって最も重要であると自ら判断した目標に基づいて、同僚が互いにパフォーマンスを評価するわけだ。

[3]質的フィードバックを削りすぎない

 フォードのフランスのカスタマー・サービス部門を率いているローラン・シャルパンティエは、同社の360度調査で数量的フィードバックに対する質的フィードバックの比率が上がったことを、マネジャーたちは歓迎していると語る。マネジャーたちは、以前の360度調査で使われていた数量的要素だけの評価基準を「人間味がなさすぎる」と感じていた。質的な要素が加わったことで、フィードバックが「はるかに効果的に」なったと感じているという。

[4]360度評価の目的と構成を明確に

 360度フィードバック法の目的を評価対象者に伝え、明確な構成に従ってこのツールを使用することで、ツールの有効性を高めることができる。たとえばシャルパンティエの部門では、360度評価の対象になる誰もが、まずこの評価の目的について説明を受ける。向上が必要な分野を突き止めるためであって報酬の額を決めるためではない、と説明されるわけだ。

[5]信頼と率直さの文化を築く

 360度評価の成功は信頼と率直さという土台があるか否かにかかっていると、多くの企業幹部が指摘する。たとえば、フォード・ヨーロッパでは、360度評価の対象者は評価する人間を自分で指名することができる。評価対象者が自分に有利なように「不正工作」を企てるのを防ぐために、その人物の上司は、指名されたすべての人間について調査したうえで、承認しなければならない。それに加えて、フォードはそれぞれの評価対象者について、1〜2人の上司、3〜6人の同僚、3〜8人の部下という多数の回答者を要求する。評価者のほうは、自分の名前を評価対象者に伏せておくかどうかを自分で決めることができる。

 
 
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