「図々しい」印象を与えることなく、成果をアピールするには

相手をうんざりさせない自己アピール術

 
 
photo
上司の入れ替わりが激しい昨今、
組織における自分の功績や価値は
黙っていても伝わらない。
だが、伝え方を間違えれば反感を
買うだけである。
効果的なセルフプロモーションと
単なる自慢話の境目はどこにあるのか。
 
 
トム・クラッテンメーカー = 文
text by Tom Krattenmakerディプロマット = 翻訳
 
 

 ここ数年、マネジャークラスの転職がかつてないほど多くなっている。3、4年前とは別の上司にレポートしているという読者が大半であろう。これはとりもなおさず、組織の記憶から抜け落ちていそうなこと、つまり自分が組織にどれほど価値をもたらす人間かという認識を、自分で補わなくてはいけないということだ。

「人々は一世代前ほど長居をしなくなっている」と、カリフォルニア州の経営コンサルタント会社、クラウス&アソシエイツの社長、ペギー・クラウスは言う。「だから自分がどんな仕事をしているのかを他の人たちに知らせる必要がある。あなたのすばらしい仕事ぶりを、今のマネジャーが次のマネジャーに伝えてくれるとは期待できないのだから」。

 自分を売り込むという微妙なさじ加減を要する技術をマスターすることは、キャリアの成功に欠かせない要件だが、容易なことではない。度が過ぎれば、スタンドプレーをする奴というレッテルを貼られるし、目立つのを避けていたら、受けてしかるべき称賛を逃してしまう。

 セルフプロモーションは必要なスキルとさじ加減で行わなければ、効果どころか害のほうが大きくなる、とクラウスは言う。これは彼女の著書、『Brag! The Art of Tooting Your Own Horn Without Blowing It』(2003年/邦訳なし)のサブタイトルでも強調されている点だ。クラウスはこう語る。「自慢屋はいつも私、私で、『私がこれをした』『私があれをした』となる。脈絡もなく話をつなぎ合わせて延々と語り続ける。彼らは他人の功績を認めない。ともすると誇張したり嘘をついたりする。私はこれを恥知らずなセルフプロモーションと呼んでいる」。

 それに対し、効果的なセルフプロモーションは、売り込みの会話に何かを付加し、会話に参加する人に何かを与えるものだ、とクラウスは言う。効果的なセルフプロモーションを行う人は、それまでの会話と何の関係もない誇大な自己宣伝をいきなり持ち出すようなことはせず、話の流れの中でさりげなく自分を売り込み、それとともに参考になる情報を提供する。また、セルフプロモーションを逸話に織り込んで、(クラウスいわく)たまたま自分が主役を演じた物語を熱っぽく語る。

『なぜこの話し方だと成功するのか──あなたを売り込む最高の技術』(02年)の著者、アーチ・ラストバーグは、効果的なセルフプロモーションと不愉快な自慢の違いを一言で表現する。好感度(ライカビリティー)の差であると。

「まずあなた自身を気に入ってもらわなければ、あなたのメッセージや考えを気に入ってもらえない」と彼は言う。

 セルフプロモーションのスキルを磨きたいビジネスパーソンのために、専門家が勧めるコツを紹介しよう。

[1]言葉と行動でネットワークをつくる

 自分が組織にもたらす価値を他の人々に確信させるためには、言葉だけでなく行動も大切だとアメリカン・ビジネス・ウィメンズ・アソシエーションの前会長でコンサルタントのアン・マーは言う。同僚や上司のために仕事を引き受けたり、彼らと一緒にプロジェクトをやり遂げたりすることによって、自分に感謝する同僚や上司のネットワークを築くことだ。「効果的なネットワークとは、人と人との互いの恩義(の複合体)のことだ」とマーは言う。

[2]しっかり準備する

 クラウスが「自慢伝達法(bragologue)」と呼ぶ短い雑談用のセリフを用意しよう。これは、エレベーターでたまたまCEOと二人きりになったときなどに使える。ブラゴローグには、自分は何者で、どんな仕事をしており、組織にどのように貢献しているかが盛り込まれなくてはいけない。だが、内容がよいだけでは不十分だ。「自分の物語を語るときには、自分の子どもの話やお気に入りの姪の話をしているときのように熱中して語らなくてはいけない。自分の大切な人の話をするときに劣らぬ情熱を持って、自分について語る必要がある」。

[3]適切なタイミングを選ぶ

 クラウスは著書の中で、最悪のタイミングで自分の成功を発表した典型的な例を挙げている。架空の人物アンとその同僚が、厳しい上司の下で、昇給を凍結され、苦しい仕事を強いられている。そうした逆境にもかかわらず、アンの勤勉さと手腕は昇進というかたちで報われ、彼女は鬼のような上司から逃れられることになった。彼女は虐げられている同僚たちがミーティングをしているところに飛び込んで、この朗報を発表する。憮然として黙り込む同僚たち。アンは、なぜ誰も一緒に喜んでくれないのか理解できない。

 その部屋の「心理的温度」を感じ取って、嫉妬ではなく希望を掻き立てるかたちでそのニュースを伝えればよかったのだが、とクラウスは言う。アンが思いやりと敬意を示す発表の仕方を選び、元同僚たちの名を汚さぬよう新しいポジションで懸命に働き、同僚たちが異動できるよう尽力すると真剣に約束していたら、もっとよかったのだ。

[4]言葉や表情に気をつける

 ありがちな失敗で、言葉によるコミュニケーションの効果を台無しにしかねないものが二つある、とラストバーグは言う。一つは、むやみに難解な言葉を使うことだ。「印象づけようという意図が見え見えの、もったいぶった長い言葉は反感を買う。相手はあなたのことを頭のいい人間だとは思っても、好きにはならない」。

 もう一つの失敗は、表情やしぐさを間違えることだ。最高に説得力のあるセルフプロモーションの逸話でも、むっとした表情やおどおどした表情で伝えたのでは好印象を与えることはできない、とラストバーグは言う。

[5]功績泥棒を防ぐ措置を取る

 他人の功績を盗んではいけないのはもちろんだが、自分の功績が他人に盗まれないようできるかぎりの手を打つことも必要だ。スポーツと同様、功績泥棒に対しても、たいていは優れた攻撃が最良の防御になる、とクラウスは言う。功績泥棒を排除する(たいていは徒労に終わるが)のではなく、会議やメールや雑談を通じて、チームの最近の成功に自分が果たした役割や将来の成功のための自分のアイデアを、上司に頻繁に知らせよう。

[6]「謙遜」をやめる

 顧客ミーティングの運営に見せたあなたの手腕をチームリーダーが褒めてくれたとき、「たいしたことではありませんよ」などと、そっけない応答をしてはならない、とクラウスは言う。その評価が自分にとってどれほど嬉しいものかをきちんと伝えよう。自分が懸命に取り組んだことを素直に認めよう。そして、自分の貢献の重要性を際立たせるコメントを一言つけ加えよう。「このようなミーティングは顧客にとって貴重な経験であることが重要な点だと思います」とか、「あの新技術のパネルは準備に力を入れましたから、顧客が熱心に議論に参加してくれて努力が報われました」とか。

[7]物理的な距離を克服する

 科学技術が進歩した今日では、遠く離れた場所から自分を売り込むことが昔よりはるかに容易になっている、とクラウスは指摘する。メールやボイスメッセージを使って、ときには電話も交えながら、相手のレーダーに常に写っているように心がけよう。自分が関心を惹きたい相手について、当人の個人サイトや会社のウェブサイトであらゆる情報を集めて、好印象を与えよう。

「連絡の回数が少なければ、人はあなたについて最悪のことを考えるようになりがちだ。それどころか、悪くするとあなたのことをまったく考えなくなってしまう」とクラウスは語る。

[8]上司以外の人にも業績を知らせる

 すぐ上の上司に認められればそれで十分、と思う人もいるだろう。しかし、セルフプロモーションの達人は、もっと上のレベルの人々にも、また自分と同格の他の部署の人々やそのマネジャーにも自分を売り込むことが大切であることを理解している。

 自分を直接監督している上司よりも、その上司のまた上司のほうが、自分を昇進させたり、自分にやりがいのある仕事を与えたりしやすい立場にいる場合もある。また、今日はあなたと同格のマネジャーが、明日はもっと大きな意思決定権があるポジションに就いているかもしれないのだ。

 
 

おすすめコンテンツ

 
 
  1. プレジデント
    望むものを手に入れる「提案型面接」のコツ
    「昇進したい」「異動したい」と言うだけでなく、解決策を提示しよう
  2. プレジデント
    できる管理職は 「評価テーマ」の掲げ方がうまい
  3. プレジデント
    苦手な相手を従わせる 「場の空気」のつくり方
    直接言ってもだめなら「それとなく」頼んでみよう
  4. プレジデント
    「無理難題」の正体を 見極める三つのポイント
    無茶を言うのは不安だからなのか、わざとなのか、それとも……
  5. プレジデント
    理解不能な相手の 「頭の中」を覗く法
    交渉相手の隠れた動機を知れば、自分の取り分を増やすことができる
  6. プレジデント
    「顧客重視」の掛け声を 実践に変える五段階
    「お客様に目を向ける」という基本動作が意外に難しいのはなぜか
 
 
PRESIDENT 2004年3.15号
PRESIDENT 2004年3.15号
税込価格 550 円
売り切れ
 
PRESIDENT公式twitterアカウント

メールマガジン <プレジデントニュース>

 
 

「プレジデント」編集部員による取材現場でのこぼれ話やビジネスマンに役立つオリジナルコンテンツ、新刊書籍案内などを、週1回のペースでお送りいたします。

メールマガジン申込・登録変更