大人に育った後も、親子の縁が切れません

「学費を子供に貸し付ける」を実践したら

 
 
教育費は、すべて親の負担。常識を壊した瞬間、新しい親子関係が生まれることになる。
 
 

教えてくれたのは

山本節子
(株)リスタート代表取締役ファイナンシャルプランナー(CFPR)、FP技能士1級、宅地建物取引主任者、健康生きがいづくりアドバイザー、日本証券アナリスト協会検定会員補。

山田清機=構成 遠藤素子=撮影

 
 

子供が「返さねば」と
思う「貸し金簿」

 子供を相手に貸し金簿をつけるようになったのは、長女が大学3年生になったときでした。
 わが家には3人の子供(男、女、男)がいますが、長男は大学を卒業して司法試験の勉強をしていたため当時は無職。次男は長女と年子で、当時大学2年生。全員アルバイトをしていましたが、自動車免許の取得やクラブの合宿、旅行などまとまったお金が必要になるとその都度、「ねぇ、お金貸して」と、私にすり寄ってきたものです。
 長男が大学生の頃は、それも必要経費の一部と思い、用途を確認してから渡してはいたのですが、3人に貸すとなると出ていく金額が大きくなるという切実な問題が出てきました。また、子供の金銭教育上、野放しはいけないと感じるようになり、借りにきた日付と金額と署名をノートに書いてもらうことにしたのが、貸し金簿の始まりです。お金を渡すとき、「貸すんだから返してね」とハッキリ伝えるようにし、多少脅しの意味も込めて、年に5%の利息をつけることも宣言しました。

 そうして記入を繰り返していったのが、上の写真です。当時つけていた家計簿の後ろのページに、3人分をまとめて、まったくのメモ感覚で続けていました。
 こうして子供に貸したお金の額を証拠としてきちんと残すことには、いろいろなメリットがあります。まず、子供が本気で返そうとします。親に借りたお金は貰ったのも同然だと思う子供は多いと思いますが、貸し金簿をつけると、そこがうやむやになりません。累積されていく金額を見れば、積もり積もった額の大きさに、「これは返さねば」という気持ちにもなるようです。

 また、借りたいときは使い道を正直に言ってくるので、子供の生活実態がよく見え、コミュニケーションが取りやすくなります。大学生にもなると、親からどんどん離れていくものですが、お金を借りるという子供にとっては弱い立場のときですから、ここぞとばかり、近況を聞き出せるとてもいい機会になりました。

親の側のメリット
「貸し金簿の年金化」

 貸し金簿のメリットはまだあります。

 皆さんご承知のように、今の子育て世代の老後の懐具合は、とても不透明です。かつてのように、サラリーマンの給与が年齢とともに右肩上がりに増えていった時代には、子供の教育が終わった時点から退職するまでの間に、老後資金を貯める余裕がありました。退職金もきちんと支払われるのが当たり前でしたから、現在の高齢者層には老後資金の心配をしなかった人も少なくないと思います。

 しかし現在では、ほとんどの企業で、ある程度の年齢になると昇給が頭打ちになります。子供の教育が終わった後、給与が右肩上がりに増えていく可能性はとても少ないのです。また、十分な退職金が支給される企業は、一部の一流企業に限られるようになってしまいました。
 つまり、現在の子育て世代は、老後資金を貯めることがとても難しい状況に置かれているのです。
 同時に、年金の受給も極めて厳しい状況にあります。現在、年金の支給が始まるのは60~65歳ですが、これを68歳にまで引き上げる案も出てきています。

 仮に、65歳まで再雇用制度などによって仕事を続けられたとしても、年金の支給開始が68歳まで引き上げられてしまえば、66歳、67歳の2年間は完全に無収入になってしまいます。いわゆる、「収入の空白期間」ができてしまうのです。
 ただでさえ老後資金を貯めることが難しいというのに、退職金もまともに出ない、年金もすぐにはもらえないとなったら、現在の子育て世代の人たちはいったいどうやって老後の生活資金を確保すればいいのでしょうか……。

 そうです、老後の生活費が厳しくなってきたら、貸し金簿を取り出して、子供に貸したお金を返済してもらえばいいのです。

つづきは本誌で!

 
 
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