賢い子の方法論は、どうすれば上手に取り込めるか
教えようとしたり、押し付けたりしてはいけません。
切り取って、置いておけばいい。
賢い子とは、どんな子でしょうか。
どんなに難しい問題でもスラスラ解ける子というのは存在しません。賢い子とは全力で頭が使える子です。冷静で大人びた子ではなく、算数の問題を目の前にして、赤ちゃんのように目を輝かせる子です。そんな子は自分のことを賢いとは思っていません。まじめでひたむきで謙虚。賢い子は考えることが大好きで、人から教えてもらうことは大嫌いです。
全力で頭を使い、考えることで子供は賢くなります。だから私の教室では一切教えません。子供に自分で考えさせ、自力で答えを出させる。教えることで子供の考える機会を奪いたくないからです。
私が与えるのは教えることでなく、考えることが楽しくなる問題とそれを楽しめる場の提供です(たとえば、競争原理を働かせる)。材料と環境さえそろえてやれば、あとは子供の意思にまかせればいい。
子供は気が乗ればやりますが、乗らなければ何もやりません。いつ乗るかは誰にもわからない。確かなのは、親から「勉強しなさい」と言われている間は、決して気が乗らないということです。
偏差値30台だったある教え子は、6年になってもやる気を見せず、お母さんが焦りました。「ウチの子はもうダメだ」とあきらめ、「勉強しなさい」と言うのをやめたのが12月24日。この日を待っていたかのように教え子は変身し、頭を使い始めました。猛スパートの末、第一志望の武蔵は落ちたものの、慶應湘南藤沢に合格しました。子供のやる気とは、そんなものなのです。
自室で勉強中の高島くん。中学受験期にまとめたノートは、小学6年生の弟が使っている。弟が見てもわかりやすいようにと、意識して作ったという。その下に5歳の三男もおり、家宝のノートが3度役立つことだろう。
さて、灘や桜蔭の子たちは普通の子とどこが違うのでしょうか。DNAか、育ちか、性格か。私が思うに、彼らの最大の特徴は勉強が好き、ということです。
彼らの多くは、勉強しなさいとうるさく言われていません。早い時期から自分で考え、工夫し、積極的に勉強に取り組んできた子たちです。好きでやっているから勉強が楽しい。その結果として、ほかの子よりはるかに賢くなれたのです。
彼らの勉強法やテスト対策の方法論には、ほとんど無駄がありません。自分で研究しているうえ、学校でも塾でも周りのレベルが高く、情報交換してさらに方法論が磨かれていく。教えられるのは好みませんが、いい部分を盗んで研究し、自分のものにするのは得意なのです。
では、彼らの方法論を普通の子たちがまねしてすぐに効果があるかといえば、答えはノー。まったく同じようにやっても、すぐに同じ成果は出ません。人から教えられたものを、教えられた通り、しょうがなしにまねしても、そこからは何も生まれません。方法論をまねてみて、自分なりに考え、工夫し、勉強スタイルを築いてはじめて意味があるのです。
自分のものにする過程で、何度も失敗することです。「こういうふうにしよう」「ここをこう変えてみよう」と試行錯誤することです。なかなかうまくいかず、必死になって頭を使うことで少しずつ進歩し、自信をつけ、賢くなっていきます。
親が手伝ってやれることは何でしょうか。それは、口出しせずに、子供の失敗を見守ってやることです。考えずに行動するとうまくいかないことを、身をもって体験させてやることです。
「こうすれば、もっと早い」と大人は経験で知っています。でもそれはさんざん面倒なことを乗り越えて身についたノウハウです。子供にも、さんざん面倒な経験を与えてやらねばなりません。
子育てにしても、子供の受験にしても、エッセンスだけを注入してうまくいくのだったら、親は何も苦労しません。聞きかじりの変なノウハウを持ち出して、「いいから、これをやりなさい」では済みません。それで済むと思っている親がいたとしたら愚かすぎます。
今回紹介する灘や桜蔭の子たちの方法論を子供に教えようとしたり、押し付けたりしてはいけません。材料をそこらに置いておけばいい。子供が興味を示さないのなら、それはしかたがない。まだその時期ではないのかもしれません。ひと工夫するとすれば、切り取って置いておくくらいでしょう。その上に私が作った教材「賢くなるパズル」でも載せておくと手に取るかもしれません。
心配するな、励ますな――。この30年間、私が常に親御さんに言い続けていることです。心配するというのは子供を信用していないこと。励ますというのは「それじゃダメだ、もっとやれ」と命じているのと変わりません。勉強の仕方をああでもない、こうでもないと子供が研究し始めたら、「がんばっているね」とだけ声をかけてやればそれでいい。あとは温かく見守ってやるだけです。
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