東大が秋入学を真剣に検討へ。受験、就職はどう変わる?

 
 

三田村蕗子=文

 
 

 東京大学が入学時期を春から秋に全面移行する方向で、本格的検討を進めている--。先日、そんなニュースが新聞各紙をにぎわせた。東大では今年4月、「入学時期の在り方に関する懇談会」を設置。大学の一層の国際化をめざし、入学時期の見直しを検討してきた。7月22日には、主に外国人留学生らを対象にした秋入学コースを、早くも来年度から新設すると発表している。

 欧米や中国などでは一般的な秋入学に合わせることで、全世界から学生を集めやすくなるというのが大学にとっての大きなメリット。学生にとっても、在学中の留学スケジュールが立てやすくなる。一方で、入試時期は春のままに据え置かれる見込みで、合格発表から入学まで、さらに卒業も秋に変わる場合は春の入社までの間、それぞれ半年間の「ギャップイヤー」が生じることになる。

春受験、秋入学が日本の大学のスタンダードになるか。在学中の留学が容易になるなどのメリットも大きいが――。東大の合格発表風景。(AFP/時事=写真)

 この東大の決断について、早稲田塾SOHKENの主任研究員・倉部史記氏は次のようにみる。

「東大がようやく動いた、という印象です。日本と半年ずれて高校を卒業する優秀な帰国子女は、秋入学コースのある慶應大学SFCやICU、立命館アジア太平洋大学などに進学するケースが多く、東大としては忸怩たる思いもあったのでは。もちろん留学生を増やす狙いも大きいでしょう。東大をアジアを代表するブランドに育てていくための取り組みといえます」。もっとも、カリキュラムや就職指導などを考えると、他の大学が秋入学へと一気に動くことはないというのが倉部氏の見方だ。

 逆に、「今回の報道は秋入学・秋入社スタンダード化の布石」とみるのが、Z会の教材編集部理科課課長の寺西隆行氏だ。個人的な見解、と前置きしたうえで、寺西氏は報道機関と報道時期に注目したという。

「ファーストリリースは経済界とつながりの強い日経新聞。発表時期は電力制限が発動され、ニュースソースへの注目度が否応なしに高まる7月1日。これらから考えて、東大の秋入学は経済界の意向もかなり考慮していると感じました。企業が外需拡大に貢献できる優秀な人材を広く採用しようとすれば、日本の学生より積極的と捉えられている諸外国の学生は外せない。まずは入学を9月にし、その後、将来的に秋入社がスタンダードになれば、企業は外国人学生を採用しやすくなりますからね。東大が動けば、秋入学へと動きだす大学も少なくないと思います」

 入学試験の時期が変わらないなら、受験への影響はさほど大きくなさそう。問題はその後のギャップイヤーだが、「将来の社会を背負って立つエリートなら、世界を見て回る期間があってもいいでしょう」と倉部氏は言う。「とはいえ、いきなり半年を自由に使えといわれても戸惑う学生もいるでしょうから、途上国でのボランティア体験など、さまざまなプログラムを提供するサービスが生まれてくるかもしれません」

 一方、寺西氏は「ギャップイヤーの期間、学生はただ遊んだりアルバイトするだけで無意味では、という意見が、すでにネット上にも見られます」と指摘する。「東大としては、まずは9月入学とギャップイヤーの考え方を提示して、入試時期については関係者の反応を見ているのでは。もし否定的な意見が多く集まった場合、入試の時期を後ろ倒しすることをも視野に入れていると思います。震災を契機にさまざまな分野でパラダイムシフトが起きていますから、入試は春にあるもの、とか、世の中に用意された職に就くという考え方を前提とせず、仕事を自分でつかみとっていく意識がこれからの時代には必要でしょう」

 東大がどう決断するか、しばらくは目を離せない。

 
 
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