子供の食いつきが違うと先生も絶賛。
川崎フロンターレ特製ドリル

 
 

 地域密着型のチーム運営が売りのサッカーJリーグ。その人気チームの一つ、川崎フロンターレは、地域貢献活動の一環として、地元の小学校に特製の算数ドリルを配っている。
 川崎市内の小学校全113校と、特別支援学校3校に無償提供されるこのドリル、フロンターレの選手がポーズを取りながら、選手の身長や足の速さなど、サッカーにちなんだ問題を出す楽しさ満点の内容。3年目の今年は新学習指導要領に対応し、さらにレベルアップ。配布先の学校の7割で活用されているという。

 同チームのサッカー事業部プロモーション部の天野春果部長がドリル作りを思いついたのは、2008年の欧州視察のとき。英プレミアリーグのアーセナル・フットボールクラブ(ロンドン)が地元自治体からの委託を受け、選手が登場する教科書を制作・配布していることを知って触発されたという。「ヨーロッパのクラブに人気があるのは歴史があるからと考えていたんですが、地域の人々に愛されるため、地道な取り組みを積み重ねているんです」

 日本では教科書事業への参入は難しいが、ドリルなら学校ごとの採択になるため、チャンスはある。計画を後押ししたのが、天野氏の相談にのった川崎市立上丸子小学校の校長先生だ。同校が算数の研究推進校だったことから、ドリルの科目が算数に決定。校内に天野氏と教師数人からなる算数ドリル作成委員会が設置され、ドリル作りが始まった。
「選手をさし絵に使うだけの内容は避けたかったので、先生たちにはサッカーの試合を見てもらい、ライトの高さやセンターサークルの面積、フロンターレの選手の特徴である得点率の高さや足の速さなどを題材に、問題を作成していただきました」。最初は全学年分のドリルを作ろうと考えていたが、先生たちの負担が大きすぎ、まずは6年生用のドリルを作ることにした。

 初年度の09年は、Jリーグから150万円の補助を受け、上丸子小学校だけに配布。翌年はフロンターレが制作費用450万円を全額負担し、市内の全市立小学校に配った。今年は川崎市が制作費の半額を補助、残りをフロンターレとJリーグが折半する形で、全市立小学校に1万2500部を配布。川崎市が予算化したことは、市当局がドリルの教育的価値を評価した証しといえる。東日本大震災で壊滅的な被害を受けた、岩手県陸前高田市の公立小学校9校にも寄付され、大歓迎された。

 子供たちの評判はどうか。「ドリルを配ったときの子供たちの反応が、他の教材とまったく違います」と語るのは、上丸子小学校の岡山憂先生。
「知っている選手を見つけて大喜びする子もいますし、とくにサッカー好きではないような子でも、食いつきが非常にいい。算数嫌いの子も関心や興味がもてるつくりなので、子供たちが算数に取り組む動機付けになっていると思います」。問題がうまく解けない子も、最後まで粘って考えるようになった。もちろん、フロンターレや日本代表を応援する子も増えたという。

 算数教育研究会に参加する先生たちの間でも評判だとか。外部からは「他の学年や教科のドリルも」「市販してほしい」という声もあるが、今の形で地元で実績を積み重ねていくことを、天野氏は重視している。
 わが街のあのチームも、ぜひフロンターレに続いてほしい。

 
 
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