巻頭エッセイ

AKB48、スターになる素質

 
 

秋元 康 作詞家

 
 

スターという人たちを長年見てきて思うのは
やっぱり運を持っているということ。
どんなに才能があっても
どんなに努力家でも
運がなければスターやアイドルにはなれない。
世界一を決めるWBCの決勝戦で
ここ一番のチャンスで打席に立ったのは
大会絶不調のイチロー選手だった。
しかし鮮やかなサヨナラヒット。
さすがスターだと皆は言うけれど
そこで打順が巡ってくるからスターなのだ。

そして自分の順番が回ってきたときに
結果を出す才能と努力の積み重ね
すべてをイチローは兼ね備えている。
日頃から大変な努力をしていても
順番が回ってこない人もいる。
せっかく順番が回ってきたのに
努力不足で結果を出せない人もいる。
順番は回ってくるし努力もしているのに
才能がない人もいる。
「自分の娘をアイドルにしたい」
親がそう思ってどんなにお金をかけたり
オーディションを受けさせても
才能と努力と運のトライアングルがなければ
まず無理。
「なりたい」のほうがまだ可能性がある。

引っ込み思案だった女の子が
たまたま駅であるポスターを見かけた。
秋元康がプロデュースする
アイドル発掘プロジェクトのポスター。
「これ受けたい」と母親に相談すると
娘から初めてそんなことを言われた母親も
「じゃあ受けてみたら?」
そのごく普通の女の子が、今やAKB48のエースだ。
もしもポスターの位置が30メートルずれていて
目に留まらなかったら今の彼女はない。
「ダメよ、こんな怪しげなの」と
母親から反対されていたら今の彼女はない。
巡り合わせのすべてが運なのだ。
AKB48の女の子たちにはそんな強運と
一歩踏み出す行動力がある。

「秋葉原でアイドル」なんて友達に話して
「メード?」とか「意味わかんない」とか
「キモー」とか言われたコもいるだろう。
小劇場で歌ったり踊ったりの毎日に
やりたかったのはこんなアイドルじゃないと
もっとキラキラした光を求めて辞めたコもいる。
それでも“自分たちの劇場が好きだ”
“ここで頑張ろう”と
AKB48という船に残ってやり抜いたコが
今、報われてブレークしている。

 
 
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