お嬢さんは東大生。
みなさんご存じ、陰山英男先生

[パート5] 夢は大きく。
東京大学、京都大学を目指す子に

 
 

陰山先生が東大生の愛娘、望都さんに
与えたのはやっぱりかなりハイレベルな教材だったんですか?
初の親子対談で教えてもらいました。

 
 

陰山英男
Hideo Kageyama
立命館小学校副校長。1958年、兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。公立小学校教諭時代、「早ね早おき朝ごはん」「反復練習」を基本とする「陰山メソッド」を提唱し注目を浴びる。中央教育審議会委員、教育再生会議有識者委員。『子どもを賢く育てる暮らし方』等著書多数。

陰山望都
Moto Kageyama
陰山家の次女。東京大学3年生。

 
 

 陰山家の次女、望都(もと)さんが東大入試を決意したのは高校3年生進級を目前にした4月1日。結論を先に述べれば、一浪して桜は咲いた。先生曰く、「あと半年早く決心していれば、現役合格も夢じゃなかった。大学入試では、高2の夏からの1年半が本当の勝負。もちろんそれまでに、『早寝・早起き・朝ご飯』を基本とした生活習慣と学習習慣が徹底されていることが前提だけれどね。望都には十分その下地があった」。
 陰山先生が、その“下地”をつくるためにわが子に与えた教材とは何か。ここからは陰山先生と望都さんの対談形式で教えてもらおう。

陰山 小学生のうちは、得意を伸ばすことより、苦手をなくすことを重視した教材選びが大切なんです。学習の基本はプリント1枚を、毎日コツコツやること。基礎・基本を“一カ所たりとも”疎かにしないことです。難しい問題をやれば学力が向上すると考えがちですが、時間ばかりかかって、基礎・基本が漏れてしまう可能性が高い。僕の場合、仕事柄、教室の教え子のために手作りしていたプリントがあったので、それをうちの子にもさせていました。

望都 え~、あれ、お父さんの手作りだったの。

陰山 親の苦労子知らず(笑)。ポイントは、テスト形式にすること。テストモードになったときに、子供たちの集中力は一番高まりますから。とはいえ、教師ではない親がそこまでするのは難しい。市販のプリント式問題集「チャレンジ」や「習熟プリント」「家庭学習100日プリント」などを活用していれば十分ではないでしょうか。

望都 「毎日プリント」(現「100日プリント」)は覚えています。毎朝15分くらいが習慣になっていました。

陰山 東大・京大を目指すなら、基礎・基本に加えて応用問題への対応力が必要です。そのための教材は、一見難しそうだけど、よく考えれば解けるという程度がベスト。「解けた!」という喜びを積み重ねることで、対応力が身につくのです。そこで僕がよく使っていたのが、私立中学入試の定番問題集「力の5000題」です。この中から適切な問題をピックアップして、手作りプリントに混ぜていました。

望都 これも初めて知りました。確かに「力の5000題」をそのまま渡されたら、本の厚さと“5000”という数で、見た瞬間に嫌になっていたかも(笑)。

陰山 望都は中学受験をさせたんです。行かせるつもりはなかったし、本人も行く気はなかったけれど(笑)。でも、東大や京大を目指すなら、大学入試の際に中学受験をした子たちと勝負しなければならない。だから、中学受験した子がどんな問題をしてきたか、それを知っておくことは大事だと思います。また、どの程度の学力がついているのか、チェックすることもできますからね。

望都 中学受験のときは、お父さん、厳しかったよね。猛特訓されたことを覚えています。小3で英検五級を受けたときもそうだったけれど、向かい合わせに座らされて、2時間くらいみっちり勉強させられました。

陰山 そう。普段は1日1枚のプリントで十分なんだけど、人生に一度か二度、勉強に集中する時期があったほうがいいんです。脳を上手に使うトレーニングになるからね。車のエンジンでも、慣らし運転後に一度全開まで回すと調子がよくなる。それと同じで、3週間くらいとことん勉強漬けにすると、脳の働きが一段突き抜けるんです。これは、僕が教員試験を受けたときに実証済みなんだ。

望都 高3の9月に1カ月間、猛勉強したら模試の判定がEからCに上がったけど、あれってそういうことだったのね。

陰山 手作り教材に話を戻すと、学習カルタもよく作ったね。「漢字カルタ」や「歴史人物カルタ」。

望都 あれはお母さんが主に作ってたんじゃない?

陰山 確かに(笑)。市販の商品もあるけれど、手作りならではの利点も多い。苦手な漢字を集中的に作ったりね。その子の課題に合った内容にカスタマイズできるし、カルタ作りを通して、親の教育スキルも向上する。わが子に賢く育ってほしいという思いは、どんな親にもあるはず。その思いを素直に教材化してあげればいい。ただし、子供の教育に入れ込むあまり、「ねばならぬ」の世界に入ってしまうと、親も子も地獄です。それだけは避けてほしい。何事も楽しくないと意味がありませんから。


「何事も楽しくなければ」と陰山先生が語るように、陰山家の子育ては「楽しむこと」が第一だったという。

陰山 子育てにストーリーを持たせたら楽しいと思ったんです。望都の「東大進学」もその一つ。東大に行ったら面白いなあと。望都が5歳のとき、刷り込みを狙って「東大見学」させたのが手始め。

望都 覚えてません(笑)。

陰山 最初は妄想の域だったけど、望都が中高と進むにつれて、次第に現実味を帯びていく。ちょうど私の実践が「陰山メソッド」と呼ばれて注目され始めた時期で「ところで先生のところは?」とよく質問されていた。これは、わが子の一人ぐらい、東大に入ってくれないと、格好が付かないなあと(笑)。

望都 そんなこと考えてたの? ちょっとショック(笑)。中学生のころかな、父から「上を目指せ」と言われたことはあります。でも、ただ一番を求められているようで、反発する気持ちの方が強かった。正直、無理だと思っていたし。でも、高校生になってから、「これおもろいで」って『ドラゴン桜』を渡された。

陰山 二度目の刷り込み(笑)。

望都 マンガだから気軽に読めたし、東大入試の情報が詳しく書いてあって、東大に対する壁が低くなっていった。気付いたら、東大受験を意識するようになっていました。そして、高3直前の4月1日。父が改めて東大で勉強することの意味について話してくれたんです。感情的にではなく、とても論理的に。

陰山 中教審などで出会った東大卒の官僚は、やっぱりみな非常に優秀だった。頭のいい人の議論はすごいなと圧倒されて、素直に尊敬の気持ちが出てきたんです。また、東大・京大が、他大学より豊富な補助金を受けていることも知った。見えや面子ではなく、勉強するなら恵まれた環境の方がいいと、自然に思えるようになっていました。

望都 その理由に納得できて、行けるなら行ってみたいと。それで、その日に決心したんです。

陰山 東大進学者とその他を分かつ最大の壁は、「受けようという意思」を持つかどうか。その意味で、親の視野や価値観は重要ですね。僕の東大に対する価値観が変わってなかったら、あんなには薦めなかった。とはいえ、まさか本気にするとも思っていなかったので、正直、これは、えらいことになったと焦りました。なにしろ、受験まで1年を切っていたしね。案の定、1年目は失敗。一浪で合格はしたけど、仮に不合格になっても、落ち込まなかったでしょうね。東大への挑戦権を得ただけでも立派なものですから。「やっぱり東大って難しいんだね」と笑い飛ばしていたでしょう。

望都 ひどい……。私はそうは思えなかったと思うけど。

陰山 そのくらいの余裕がなければ、親も子も受験を楽しめないということです。子育てはあくまでも楽しく、ですから。

 
 
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