来年から公立小中で実験導入
「デジタル教科書」って何だ?
文字や図版の拡大縮小は自由自在、音声も動画も扱える――教科書の内容をデジタル化し、電子黒板や生徒用の小型端末などで使用する「デジタル教科書」をめぐる動きがここにきて活発になってきた。
文部科学省は7月、「教育の情報化ビジョン」の骨子素案にデジタル教科書の実証実験を行う方針を明記。2011年度から、公立の小中高校で試験的に実施するという方針が発表された。
一方、文部科学省とは別に、総務省の原口一博大臣は昨年12月、ICT(情報通信技術)の活用による持続的な社会の実現を目指す「ICT維新ビジョン」を発表。その目玉の一つが、15年までにデジタル教科書をすべての小中学校の全生徒に配る、という計画だ。
またこの5月には、文科省や総務省との連携を目指し、民間主導の「デジタル教科書教材協議会」(DiTT)も立ち上がった。発起人は、三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏やマイクロソフト社長の樋口泰行氏、ソフトバンク社長の孫正義氏など7人。いずれ総務省と文科省の構想は統合されるとみられているが、現時点では行政二つと民間一つの動きが同時進行しているわけだ。
これらとは別に、すでにデジタル教科書を授業に活用している学校も存在する。08年度にメディア教育開発センターとマイクロソフトがスタートした実証研究「NEXTプロジェクト」のモデル校の一つ、東京の港区立青山小学校では、1年間の実験終了後、日々の授業にデジタル教科書を用いている。
同校の取り組みから見えてくるのは、デジタル教科書の興味深い側面だ。現在、導入されているデジタル教科書は国語一教科のみ(社会科は教科書に準拠したデジタル資料集を使用)だが、教える内容によって向き不向きがあるという。
校長の曽根節子氏は語る。
「タブレットPCとペンを使って授業をしていますが、字や図版が拡大できる点は生徒の興味を喚起するうえで有効です。文章の入れ替えや並び替えができたり、大事な語句をマーキングできるのも便利ですし、授業中の書き込みがそのまま保存できることも、前の授業を振り返るときに役に立ちます」
新出漢字の書き順も、動画で見られてわかりやすいのはデジタルならでは。ただし、しっかりと覚えるためにはノートに繰り返し書いたほうが効果的だとか。「授業内容を先生がまとめるときも、黒板にチョークで書いたほうが、子供の頭にはよく入るようです」
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| 教科書もデジタル化の時代。わが子の学校に導入されるのもまもなく?――東芝とインテルが共同開発した生徒用端末。 |
一番の課題は、今のところソフトが不足していること。「算数や理科の図形はデジタル教科書向き。開発を望みます」と曽根校長は言う。「ただ、実験を積み重ねて痛感しているのが、結局は教員の授業力次第だということ。デジタル教科書の良さを引き出しながら、わかりやすく楽しい授業をしていくには、教員の根本的な授業力の向上が欠かせません」
「教科書だけでなく、補助教材も含めてデジタル教材全般の充実が必要」と指摘するのは、マイクロソフトの文教ソリューション本部エデュケーションシニアインダストリーマネージャの滝田裕三氏だ。
「政府としての働きかけも重要ですが、塾など民間からの普及の取り組みも大切です。紙の教科書をデジタル化する際の著作権問題も解決する必要があるでしょう」
子供や親が望むのは、デジタルならではのメリットを生かした、よりわかりやすくて効果的な授業。それだけに、デジタル教科書をめぐる複数の動きがそれぞれ何を目指すのかは気になるところだ。願わくば縦割り的意識にとらわれず、ユーザー目線で妥当な着地点を探していただけるとありがたいのだが……。
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