巻頭エッセイ

人生に正解なんてないから

 
 

秋元 康 作詞家

 
 

子供は花の種。
同じ花の種でも芽の出る早さはそれぞれ違う。
小学校の一時期にクラスで何番かなんて
長い人生には関係ない。
妻は娘の勉強に厳しいけれど
僕は「まあ、いいんじゃないの」と見守る。
誰も隣の人を見て息を吸うのが速いとか遅いとか考えない。
皆、自分の体に合わせて勝手に呼吸している。
呼吸するように自分のペースで生きればいい。
人生に正解なんてないんだから。

僕は正解がないような仕事をしているから
正解がないことはすごく大事だと思っている。
親や大人たちはどうしても正解を求めがちだ。
一番やってはいけないと思うのは
子供を親の人生の雪辱戦に使うこと。
自分が甲子園に行けなかったから
本当はサッカー好きな子に野球をやらせたり
親の反対で自分の夢が叶わなかったから
娘を宝塚に入れようとバレエを習わせたり。
それは違うと思う。
逆に失敗したり苦労するのを心配するあまり
子供の夢や希望に耳を傾けないで
親が先回りして無難な道を歩ませようとする。
それも違うと思う。

僕の両親はしつけにとても厳しかったけれど
僕の意思を尊重してくれた。
大学を辞めようが、どんな仕事をしようが
僕が自分で決めて行動したことを
黙って温かく見守ってくれた。
そんな仕事がいつまでも続くわけがないと
茨の道が見えていたのかもしれないけれど
「茨があるから行くな」とは言わなかった。
だから僕もそうしようと思う。

もし娘にやりたいことができて
僕の目には茨の道と映っても、黙って見守ろう。
否、頑張れぐらいは言おうか。
もしかしたら彼女は
たくましく茨を跨いでいくかもしれない。
賢く茨を避けてゆくかもしれない。
茨で傷ついたそのときは
黙って手当てしてあげればいい。

たった一度しかない人生
やりたいことをやらせてあげたい。
人生の決定権を持っているのは本人だ。
僕にできるのは少しでも選択肢を増やすこと。
漫画家の友人も小説家の友人も
その道に入ったきっかけは些細なことだった。
些細なことを子供の周りにたくさん集めれば
ピンボールのようにコンコンと当たって
どこかで必ずチーンと花開くと思うのだ。

 
 
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